vol.12 若者たちのチャット文化に中高年が戸惑うワケ
筆者のLINEに、なんの前触れもなくいきなり届いた、友人である某新人女性モデルからの懇願文?
考察
コレを「放置」と呼ばずしてなんと呼べば良いのか。数日前、筆者のLINEにいきなり届いた「こんなの撮りたい」の一言。送信相手は20代前半の女性で、職業はモデル……いや、正確にはその卵? 仮にE香ちゃんとしておこう。
とある飲み会で「熱烈な阪神タイガースファン」同士ってことで妙に意気投合してしまい、たまに食事やバッティングセンターに行ったり、LINEのやりとりをする関係をここ半年くらい楽しんでいるのだが、その後一切なんの音沙汰もなし。
受け取った側としては気になって気になって、原稿に集中もできない。当たり前の話、この8文字だけじゃあ、何がなんだかさっぱりわからないからだ。「撮」という漢字が入っている以上、なんらかを撮影したい、あるいは(モデルゆえ?)なんらかのシチュエーションで自分を撮影してもらいたいのだろう。けれど、「こんなの」という指示代名詞が何も指していないので、(この時点で)筆者ができることは“妄想”のみである。とりあえず、「どんなの撮りたい?」と韻を踏んだ(笑)返信はしておいた。
約2時間後、E香ちゃんから10枚の写真“だけ”が送られてきた。普段の彼女のファッションスタイルとはかなり異なった、原色系の露出度高めなノースリーブワンピースを身にまとい、メイクも心なしケバかった。
写真に対する説明は、また一切なし。どうやら「自分を撮ってもらいたい」ってことだけは……たぶんだが、判明した。だがしかし、“いつも”よりセクシーな写真が撮りたいのか、それとも“派手”へとベクトルを向けたイメチェン写真を撮りたいのか……さらには、筆者に撮ってもらいたいのか、この手のテイストが得意なカメラマンを紹介してもらいたいのか、単なる気まぐれな願望なのか……まだまだ情報は足りなすぎる。
「こんなの撮りたいんだ」と返信するも、既読にすらならない。次の日、辛うじて既読にはなったものの、そんな(再)放置が数日も続き、妄想は日に日に膨らむばかりであった。
昨今は、日常のコミュニケーションをメッセージアプリ中心に行う若者たちの間で、こうしたチャット文化が浸透しきっていると、よく言われる。また、我々日本人の、特に年輩層は「起承転結」という概念に象徴される「最初に理由や根拠を示し、最後に結論を示す」いわゆる「尾括型」の文章に慣れ親しんでいるため、近ごろの若人らが好む、反日本語的な「頭括型」(=最初に結論を示し、後から理由や根拠を示す)の文章には、つい戸惑ってしまいがち……なのだそう。
「つい戸惑ってしまいがち」な中高年層からすると、そういうときは本音を申せば
「ん? 撮影がしたいの? 自分のことを撮りたいの? どういう雰囲気で? カメラマンはボクでいいの? 日程はいつくらいがいい? その後の予定は? 終わってから晩ご飯とか一緒に食べる?」
……と、一気にまくし立てたいところだが、そこは我慢のしどころで、おそらく筆者がやったように「どんなの撮りたい?」……からスタートして、1行以内の短文で“会話”を転がしながら、相手の意図を辛抱強く炙り出していくのが、(若者に迎合したいのだったら)まあ正解ってことなんだろう。
E香:こんなの撮りたい
ゴメス:どんなの撮りたい?(※「?」マークを赤色にするのは厳禁!)
E香:(写真10枚が送られてくる)
ゴメス:こんなの撮りたいんだ
E香:そうそう
ゴメス:ちょいセクシーめでww
E香:笑笑そんなかんじ
ゴメス:誰に撮ってもらう?
E香:ゴメちゃんでいい
ゴメス:光栄です!(※「!」マークを赤色にするのは厳禁!)
(いったん間を置いて)
ゴメス:いつくらい?(※「?」マークを赤色にするのは厳禁! 以下略)
E香:来週とか?
ゴメス:◯日の14時くらいからは?
(いったん間を置いて)
ゴメス:自然光あったほうがいいし
E香:オケ
ゴメス:終わってからごはんとか行く?
E香:※「OK」の意志を表すスタンプ
……みたいな具合に、だ。
ただ、今回のケースにいたっては「こんなの撮りたいんだ」以降が存在していないのだから、さすがの筆者も完全にお手上げ状態。どんなに優れたLINE術マニュアルを作成しても……リアクションがなければ、しょせん絵に描いた餅でしかないのである。
意を決し、思い切ってLINE電話でE香ちゃんとの通話を試みる。すると……!?
「え、なんだっけそれ?(数秒後)ああ、返信するの忘れてた〜(笑)。ゴメンね〜気にしなくていいから」
……と、にべもない弁明が朗らかに返ってきた。なるほど「単なる気まぐれな願望」だったわけか……。で、結論!「LINEで相手からの返信がない場合は?」の正解は……案外「LINE電話をしてみる」なのかもしれない?
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