「超える」「越える」の使い分け方は? 正しい意味や違い、現役アナウンサーが解説

日常生活で「こえる」という言葉を使う機会は数多くあります。しかし「超える」と「越える」のどちらを使うのが正しいのでしょうか。今回は、「超える」と「越える」の違いについて解説していきます。

「超える」と「越える」の違いは? 正しい使い方や意味を現役アナウンサーが解説
「超える」「越える」の違いはなに? 

「記録をこえる」「丘をこえる」「二十歳をこえる」など、日常生活で「こえる」という言葉を使う機会は数多くあります。
 

「こえる」には「超える」「越える」と2つの漢字の表記がありますが、皆さんは正確に使い分けられていますか?
 

今回は、「超える」と「越える」の違いについてフリーアナウンサーの笠井美穂が解説していきます。

<目次>
「超える」の意味
「越える」の意味
「超える」と「越える」の違い
「超える」「超す」の使い方・例文
「越える」「越す」の使い方・例文
「超える」と「越える」の違いは意味を考える
 

「超える」の意味

『大辞林 4.0』(三省堂)によると、「超える」の意味は、ある基準・数値を上まわること、自分の考え方や立場からさらに先へ進むこと、他よりすぐれることとされています。

 

「越える」の意味

一方で、「越える」の意味は、『大辞林 4.0』によると、障害物や境界線の上を通り過ぎて、向こう側へ行くこと、越すこと(比喩的にも用いる)、ある日時が過ぎること。

「超える」と「越える」は、似ているようで、若干の違いがあることが分かります。以下で具体的な違いや使い分けを確認していきます。
 

「超える」と「越える」の違い

「超える」と「越える」は1つの「こえる」という言葉として辞書に採録されており、基本的には同じような意味を表すと考えてよいでしょう。
 

ただ、どんなものを「こえる」のかによって、「超」「越」どちらの漢字で表記するかが変わってくるということになります。
 

「超える」「超す」の使い方・例文

「こえる」のうち「超」の漢字を用いる場合について、国語辞典や漢字辞典では次のような解説があります。

『大辞林 4.0』(三省堂)
「超える」は“範囲や基準を上回る。立場の違いを克服する”の意。

 『新潮日本語漢字辞典』(新潮社)
「超える」は他から抜きんでること、常人の及ばない状態になること、ある基準以上になること。

 
基準を上回ることや、立場の違いを克服すること、他の人をしのぐことなどは「超える」と表記します。
 

「超える」という場合は、何かよりも上を行く、高次に移行するという縦のイメージが合うかもしれません。
 

具体的な例文を示します。
 
・「超える」の例文
 ・コースの全長が100kmを超える鉄人レースが開催された。
 ・利害を超えて新しい関係を構築する。
 ・いつかは子どもが親を超えるときが来る。
 

「越える」「越す」の使い方・例文

一方、「越える」と表記する場合については次のような解説があります。

『大辞林 4.0』(三省堂)
「越える」は“時間や空間の境界をまたぐ”の意

『新潮日本語漢字辞典』(新潮社)
「こえる」で「越える・踰える※」は障害物の上を通り過ぎること、時を通り過ぎること、基準をはみ出ること、順序通りにしないこと、相手より先に行くこと。

 ※「踰える」の表記は常用外の漢字ですので今回は解説を省略します。
 

物理的または概念的な障害物や境界を通過する場合に「越える」を使います。
 

「越える」は、障害や境界などを通り過ぎて、進んだり広げたりする横のイメージが合うかもしれません。
 

具体的な例文を示します。
 

・「越える」の例文
 ・あの坂を越えた先にあるのが我が家です。
 ・その指示は、あなたの権限を越えています。
 ・遠い夏を越えて 秋を過ぎて あなたの事を想うよ(Mr.Children『手紙』より)

関連記事:「思う」と「想う」の違いは?
 

「超える」と「越える」の違いは意味を考える

「こえる」の漢字の使い分けは、基準や範囲を上回る場合や他の人より抜きんでている場合などは「超える」、時間や空間を過ぎる場合などは「越える」とするのがよいでしょう。
 

判断に迷った場合は、熟語などに変換してみるのもよいかもしれません。例えば人数などは「〇〇人超」というような表現があることから「超」を使うと判断できます。また、「越境」や「越権」などの言葉からは、境界や権限をこえる場合は「越」であると判断できます。
 

「こえる」は日常生活でもよく使う言葉です。ぜひ、この機会に正しい漢字の使い方を確認してみてください。

■執筆者プロフィール

笠井 美穂(かさい みほ)
福岡県出身。九州大学文学部を卒業後、KYT鹿児島讀賣テレビに入社。退社後は、報道番組を中心にフリーアナウンサーとして活動。これまでの出演は、NHK北九州放送局『ニュースブリッジ北九州』、NHK BS1『BSニュース』、NHK Eテレ『手話ニュース』、NHK ラジオ第1『NHKきょうのニュース』『ラジオニュース』など。

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