2019年には、年間動員数295万人を記録した音楽フェス市場も、新型コロナウイルス感染症拡大の煽りをうけ、2020年には動員数が9.3万人規模にまで激減(※1)。収まることのない新型コロナウイルスの脅威によって苦境に立たされていた音楽フェスだが、今年になって徐々に復活したり、規模を拡大したりする動きが散見されるようになった。
しかしながら、実情は、「歓声の禁止」や「参加者同士の接触を禁止」するなど感染症対策ガイドラインを設け、なんとか開催にこぎ着けている……というのが現状である。
そんな中、2022年の夏に従来に近い規模での開催となったSUMMER SONIC 2022で、出演したONE OK ROCKのボーカル・TakaのMCでの発言が物議を醸している。
「前のアーティストでもあんだけ声出してたんだから、いくら出したって関係ねぇだろ」
ONE OK ROCKといえば、オーディエンスを激しく沸かせるロックナンバーの多いバンド。SUMMER SONIC 2022でも「The Beginning」をはじめとしたアグレッシブな楽曲を披露し、積極的にオーディエンスを煽り、コールアンドレスポンスを投げかける姿が印象的であった。
そして、SNS上で話題となったのが、MCでの発言。「前のアーティストのメーガン(Megan Thee Stallion)でもあんだけ声出してたんだから、いくら出したって関係ねぇだろこれもう」「俺は今回のこの夏フェスの前にどのフェスも出禁覚悟でやってるからお前ら覚悟しとけよという宣言をして参りました。謝るから俺が。最後にもし怒られたら。お前らひと夏の思い出、最高の思い出にして帰ってくれよ」といったMCでの発言をおさめた映像がSNS上にアップされると、SUMMER SONIC 2022が感染症対策ガイドラインに掲げる「歓声の禁止」に抵触するのではないのか、といった非難の声が上がった(なお、後日、Takaは自身のInstagramにて「嫌な気持ちにさせてしまった人達へ。ごめんね」と声出し問題について謝罪している)。
一方で海外の音楽フェスに目を向けると、すでにマスクの着用率も低く、観客による声援や合唱を規制することも少ない。SUMMER SONICは、海外からのアーティストを多く招聘する音楽フェスだけあって、ONE OK ROCK以外の、とりわけ海外アーティストのパフォーマンスでも歓声や合唱の声も上がっており、実際にTakaが言及したアメリカのラッパー、Megan Thee Stallionのパフォーマンスでは、多くの観客が歓声を上げてライブを楽しんでいた。
例えば、Jリーグでは、声出し応援の検証試合が実施され(※2)、段階的な声出し応援の解禁に向けての動きが始まっている。
そして、音楽フェスでも、大阪でこの夏開催された「RUSH BALL 2022」では、マスク着用を要請しながらも、本番中に限りマスク着用であればコールアンドレスポンスを認める、といった公式ガイドラインを示している(※3)。
このように、一部のイベントでは、感染症対策の部分的な緩和も始まる一方で、新型コロナウイルスの感染者数が高止まりしている状況であることも事実。不特定多数の観客が集まる音楽フェスという場所は、さまざまな価値観を持った人々が集う場でもある。平和なイベントであるべき「いつもの音楽フェス」を取り戻すためにも、フェスやライブにおける感染症対策について、より議論を深め、蓄積されつつある感染症対策のナレッジをもとに、さらに運営方法の工夫を重ねていく必要がありそうだ。
Z11プロフィール
1990年生まれの音楽ライター。総合カルチャーサイト「Real Sound」でK-POPやJ-POP、洋楽など幅広いジャンルで連載中。自身のTwitterでは、音楽だけではなく、本や映画についても発信。
Twitter:@Z1169560137
【参考】
※1:ぴあ総研、音楽フェスの市場動向に関する調査結果
※2:Jリーグ公式試合における声出し応援の段階的導入運営検証試合の追加決定のお知らせ
※3:RUSH BALL 2022 新型コロナウイルス感染拡大防止ガイドライン
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