『六本木クラス』長屋の会長室を二級建築士が徹底解剖。格式と遊び心の絶妙すぎるバランスに注目

テレビドラマに出てくる家やインテリアを二級建築士がプロ目線で考察するシリーズ。今回はドラマ『六本木クラス』(テレビ朝日系)、主人公と対立する実業家のオフィスを取り上げます。伝統的な和の要素をたっぷり取り入れたオフィスは、相手にプレッシャーをかけるには十分な迫力がありました。(画像:テレビ朝日公式YouTubeより)


テレビドラマに出てくるすてきな家やインテリアの考察シリーズ第3弾。今回取り上げるのは、韓国で話題となったドラマのリメイク版として注目を集めている『六本木クラス』(テレビ朝日系)です。登場人物の家よりも、オフィスや飲食店舗が舞台となって話が展開していくシーンが多いですね。

いくつか注目したいインテリアがあるのですが、特に目を引くのが和の要素たっぷりなオフィス。その魅力について、二級建築士・インテリアコーディネーター資格を持つ筆者がプロ目線で考察していきます。

>第2弾はこちら:『初恋の悪魔』馬淵(仲野太賀)の部屋を二級建築士が解剖。ワンルームでの家具レイアウトのコツ満載
 

『六本木クラス』最新話・第7話の簡単なあらすじ

「二代目みやべ」の再建に取り組む宮部新(竹内涼真)。飲食業界最大手・長屋ホールディングス会長・長屋茂(香川照之)に妨害されるも、マネージャーの麻宮葵(平手友梨奈)や長屋ホールディングス専務でありながら新をサポートする相川京子(稲森いずみ)らの協力を得て、ついに開店へとこぎつけます。

しかし謎の女性(倍賞美津子)が「ここに店を出すと1年以内につぶれる」とつぶやいて立ち去ったり、新に対して嫌悪感をあらわにした茂が妨害の次の手として松下博嗣(緒形直人)を巻き込もうとしたりと不穏な空気は続き-。
 

『六本木クラス』長屋の会長室解剖(1)直線と曲線の絶妙なバランス

直線が持つ凛とした雰囲気の広々とした和空間(画像:テレビ朝日公式YouTubeより)

飲食業界トップに君臨する長屋ホールディングス会長・茂のオフィスは、広々とした和の空間に仕上げられています。窓には障子、天井には和紙風の採光パネルと、光がしっかり内部に入ってくる造りになっているので暗さを感じず、天井に埋め込まれたダウンライトはあくまでも補助的な役割。壁部分を薄いベージュ色で仕上げてあるので落ち着いた印象になっています。

和の造作は、縦横直角に木を組んだ直線デザインが基本形です。直線はすがすがしい感じを出しやすいのですが、厳格で格式が高くくつろぎにくい雰囲気になりやすいという特徴が。

この会長室に入る人たちがみな緊張した面持ちなのは、茂の存在感に加えて部屋の雰囲気から感じる張りつめた空気に影響されている面もありそうです。
 
照明は壁に当てて間接照明に(画像:テレビ朝日公式YouTubeより)

ただ、茂にとっては一瞬でもくつろぐ時間を過ごすこともあろうと感じさせるのが、左に見えている洞床(ほらどこ)のような曲線デザインの造作。

洞床というのは、床の間の前に別の壁をつくって洞穴のように奥行きをもたせた床の間の様式です。壁を丸く削り取ったデザインなので、直線が多い和の空間の緊張感を緩める効果があります。

天井からダウンライトの光を壁に当てて、山が連なっているかのような演出がされているあたりも心憎い。緊張と緩和のバランスが絶妙ですね。
 

『六本木クラス』長屋の会長室解剖(2)革のソファで重厚感をプラス

クラシカルながら明るめの色のソファですっきりと(画像:テレビ朝日公式YouTubeより)

茂の会長室には、センターテーブルを中心に4台のソファが置いてあります。革製(本革か合皮かは不明)でびょう打ち仕上げというクラシカルなデザイン。和の要素と組み合わせることで、格式の高さが一段とアップしていると言えます。

色もよく考えられていて、柱の色に近いアンティークブラウンを選んであるのでしっくりとなじんでいますね。ブラックやダークブラウンだとますます重厚感が出るのですが、あえて選ばなかったのは何か理由があるのでしょうか。
 

『六本木クラス』長屋の会長室解剖(3)遊び心のある絵で視線を奥まで伸ばす

人気絵師の絵はインパクト大!(画像:テレビ朝日公式YouTubeより)

最初に茂の会長室を見て「お!」と目を奪われたのが、1番奥に飾られている伊藤若冲をほうふつとさせる絵でした。若冲は江戸時代に活躍した絵師で、細やかな筆致と鮮やかな色使いの作品を数多く残しています。正統な日本画なのにどこかユーモアを感じさせる作風で、お好きな方も多いのではないでしょうか。

そんな人気の高い若冲の作品と思しき絵をこの位置に飾る意味の1つは、おそらく奥行の強調でしょう。本来なら洞床風の曲線デザインのカ所がフォーカルポイント(室内に人の視線が集まる場所)となるはずですが、そこよりも遠い位置にインパクトのある若冲の絵を飾ることで、部屋に入ってきた人の視線がさらに奥へと伸びます。元々広い部屋をさらに広く見せて、自分の力の強さを見せつけることができるわけです。

茂の高い自己顕示欲をうまく表現したインテリアデザインだと感じました。

実際の生活で伝統的な和の空間に触れる機会はそうないだけに、和の空間の魅力をたっぷり感じられるこの会長室のシーンでぜひ楽しんでみてくださいね。


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