競泳の五輪種目に「クロール」がない“なるほど”な理由【水泳の豆知識】

8月14日は水泳の日! 2012年に日本水泳連盟によって制定されました。五輪種目にクロールがない理由など、水泳の豆知識をご紹介します。

8月14日は水泳の日!


水難事故の増えるこの時期、命を守ることができるスポーツとしての水泳を普及させるため、かつての「国民皆泳の日」を復活させる形で2012年に日本水泳連盟によって制定されました。


今回は五輪種目にクロールがない理由など、水泳の豆知識をご紹介します。
 

画像出典:いらすとや

 

泳げない人を「カナヅチ」と呼ぶ理由

泳げない人のことを「カナヅチ」と呼ぶのは、金鎚が水没しやすい工具であり、金属である頭部が重く逆さまに沈むため、その姿が溺れているように見えるからとされています。


なお、英語のハンマー(Hammer)に泳げない人という意味はなく、漫画『ONE PIECE(ワンピース)』の英訳版では、悪魔の実を食べてカナヅチになることを船の錨(アンカー)に例える意訳がされています。


ちなみに、水泳のリレーで最終泳者のことをアンカーと呼ぶのは、綱引きからきています。


綱引きの最後尾にいちばん体の重い人を配置して、船の錨のようにつなぎ止める役割を任せることからそう呼ばれるようになり、それが転じて、同様に重要な役割であるリレー競技の最終選手もアンカーと呼ばれるようになりました。


泳げない人をカナヅチと呼ぶのに、逆にすごく泳げるリレーの最後泳者もアンカーと呼ぶ。日本語は奥が深いですね……!

 

「シンクロ」から名前が変わった理由

水泳の花形競技といえば「シンクロナイズドスイミング」でしたが、2018年に名称変更されたのはご存じでしょうか。


新しい名称は「アーティスティックスイミング」。変更の理由は、シンクロナイズド(同調した)という言葉が芸術性を求める演技にふさわしくないと国際水泳連盟が判断したためです。


とはいえ「シンクロナイズドスイミング」は、1934年のシカゴ万国博覧会から80年以上使われてきた名称。今さら変えなくていい、そもそも同調性あっての芸術性ではないのかと、当時は選手やファンの反発、1万を超える反対署名も集まったそうですが、変更は覆りませんでした。

 

五輪種目に「クロール」がない理由

競泳の五輪個人種目は、バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、そして自由形の4種目とこれらを順に泳ぐメドレーだけで、クロールという種目はありません。


その理由は「伝統ある平泳ぎを守りたい」と願う、水泳界の紆余曲折の歴史にあります。


そもそも第1回のアテネ五輪では、自由な泳ぎ方で最速を決める「自由形」しかありませんでした。当時は息継ぎの概念がなかったため、顔を上げっぱなしの平泳ぎで泳いでいたとされています。


その後、それよりも速く泳げる背泳ぎが登場。しかし、当時の背泳ぎはダブルバックと呼ばれる平泳ぎをひっくり返したようなスタイルで、水しぶきが大きく上がる泳法でした。


そのため、美しくない、紳士的ではないという理由で自由形としては認められず、第2回のパリ五輪では別種目として「背泳ぎ」が設けられました。


さらにその後、息継ぎをすることで速く泳げるクロールが登場。本来ならここで、クロールが別種目になるはずでしたが、そうすると新しい泳法ができる度に種目を増やすことになってしまいます。


そこで、第3回のセントルイス五輪では、伝統ある平泳ぎを確実に守るために、クロールではなく「平泳ぎ」の方を別種目として独立させました。


その平泳ぎから後に発展したのが、バタフライです。またしても平泳ぎを守るために、第16回のメルボルン五輪から「バタフライ」を独立させることになりました。
 

こうして「自由形」「背泳ぎ」「平泳ぎ」「バタフライ」の4種目となり、現在に至っています。


もし今後、クロールよりも速い泳法が登場して自由形がそればかりになったら、今度は「伝統あるクロールを守るため」と称して、クロールが独立した種目になるかもしれませんね。


意外と奥が深い水泳の世界。ぜひこの機会に、海やプールであなたの好きな「自由形」を泳いでみてはいかがでしょうか。


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