酷暑で千葉に脚光、なぜ? 関東の「暑い」&「涼しい」スポットTOP10と関連が…

6月に記録的な早さで梅雨明けしてから猛暑が話題になっている関東。同じ地域でも特に気温が高くなりやすい場所とそうではない場所があるのはなぜでしょうか。関東の暑いスポット、涼しいスポットについて気象予報士の片山美紀が解説します。

関東の「暑い」場所トップ10は常連?

傘の出番が続く「戻り梅雨」のような天気も終わりを迎え、東京でもセミの鳴き声が聞こえるようになりました。夏本番の暑さはまだこれからです。関東地方には国内史上最も高い気温を記録した埼玉県・熊谷がありますが、これまでの観測データを調べてみると、気温が高い地点は内陸に集中していることが分かりました。
【関東 暑いスポット10】関東各地の最も高い最高気温を高い方から並べた上位10地点

気象庁が気温を観測している各地点(島しょ部を除く)において、気温が高い順に並べたところ、40℃台を記録した地点は埼玉県と群馬県が突出して多く、特に埼玉県は県内のすべての地点で40℃前後の気温を観測したことがあります(7月23日時点)。
 

内陸の猛烈な暑さの原因…天気予報でよく聞く「フェーン現象」 

内陸で猛烈な暑さになりやすい原因は、「フェーン現象」です。天気予報でも暑くなるときによく使われる「フェーン現象」とは、山越えの風によって風下側である山のふもとの気温が上昇する現象です。上空の風が、関東地方を囲む北側と西側の高い山を越えるとき、空気は圧縮されながら吹き下り、このとき温度が上がっていきます。いわば山から熱風が吹き下りるようなイメージです。2018年7月23日に埼玉県・熊谷で国内史上最高の41.1度を観測した日もフェーン現象が発生しました。
フェーン現象とは? 出典:熊谷地方気象台ホームページ

東京都心部ではめったに40℃クラスの高温にならないのは、東京湾から海風が吹くためです。ただ、埼玉県にはヒートアイランド現象の影響で、その海風が都心部を通ってくる間に暖められて入ってきます。このため、海からの風が吹いても気温の上昇は抑えられず、記録的な暑さになりやすいのです。
 

関東の「涼しい」スポット、トップ10は?

一方、関東の各観測地点(島しょ部を除く)の最も高い最高気温を低い方から順に並べて、関東の涼しい地域を調べてみると、奥日光や草津など標高の高い地点がほとんどでしたが、海沿いの地域も上位10地点に入りました(7月23日時点)。「涼しいスポットトップ10」に入った神奈川県・江ノ島や千葉県・勝浦は、これまでに最高気温が35℃以上の「猛暑日」となったことがありません。
 

海沿いの地域が暑くなりにくい理由は、海から吹く冷涼な風です。晴れた日の昼間は、陸地は日差しの影響で海に比べて暖まりやすく、陸地の空気は上昇します。その分を補うように、海から空気が運ばれます。これが海から陸に向かって吹く海風です。

【関東 涼しいスポット10】関東各地の最も高い最高気温を低い方から並べた上位10地点
 

海風のおかげ! 意外な「避暑地」として話題の千葉

いま「関東の避暑地」として話題になっているのが千葉県・勝浦です。実は、勝浦は今年に入ってからまだ最高気温が30℃以上の「真夏日」になったのはたった1日だけです(7月28日時点)。6月に早すぎる梅雨明けをした直後、関東各地で猛暑になった期間でさえも、日中の気温は25℃前後でした。当時の千葉県の東の海上の海面水温は約21℃と平年よりやや低く、ここから吹く涼しい海風のお陰で、勝浦の気温の上昇は抑えられたのではないかと考えられます。
 
6月27日の海面水温 出典:気象庁ホームページ
  6月27日の日本近海の海面水温と平年比  出典:気象庁ホームページ

さらに、勝浦は夏に涼しく過ごしやすいだけでなく、冬は暖かいとも言われています。最低気温が0℃未満となる「冬日」は平年で10日ほどと、同じ千葉県内の内陸の地域に比べてかなり少ないです。冬にあまり冷えないこともまた海のお陰です。勝浦など太平洋に面した沿岸の地域は、暖かい黒潮が流れている影響で冬も比較的温暖な気候になり、関東の中でいち早く春が訪れるスポットとして知られています。
 

気象庁が7月19日に発表した最新の3カ月予報によると、関東では10月にかけて気温は平年並みか高く、残暑が長引くと予想されています。今シーズン、避暑地・勝浦はどれくらい真夏日になるのか注目です。


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