ヒナタカの雑食系映画論 第2回

北京五輪がいよいよ開幕! 映画ライターが選ぶ、今こそ観たい「冬のスポーツ映画5選」

2022年2月4日より、北京五輪が開催されています(一部競技は2日から)。スポーツに挑む人たちに声援を送りたくなる、はたまた選手の複雑な心情も描かれていたりもする、おすすめのウィンタースポーツを題材とした映画を5作品を紹介します。

2022年2月4日より、北京五輪が開催されています(一部競技は2日から)。東京五輪に続き、コロナ禍の中で行われているので、複雑な想いを抱えている人も多いでしょう。それでも、スポーツに人生を捧げ、全力を尽くす選手を心から応援をしたいという人も少なくはないはずです。

ここでは、スポーツに挑む人たちに声援を送りたくなる、はたまた選手の複雑な心情も描かれていたりもする、おすすめのウィンタースポーツを題材とした映画を、配信サービスで観やすくなっているものの中から5作品を紹介します。
 

1:『クール・ランニング』(1993)


題材はボブスレー。1988年のカルガリー五輪にて、冬季五輪に初めて出場したジャマイカの選手団の実話をベースとした物語です。主人公は、それまでボブスレーのことなんか何1つ知らないド素人。他のメンバーも現状や性格にちょっと(?)問題のある人ばかり。それでも彼らは、目的のために団結し、雪がない場所でもさまざまな工夫を重ねてトレーニングを行い、お互いを信頼し、やがてかけがえのない友情が生まれていきます。

それでもトラブルは多発し、出場すると奇異の目で見られても諦めない……! そんな挫折や成功体験などがモリモリの、まさに王道のスポ根映画に仕上がっていました。氷で覆われた会場とギャップのあるジャマイカというお国柄ならではの陽気なテンション、かなりコメディーに寄った作風であるため、「観れば元気になれる映画」として誰にでもおすすめできます。現在はDisney+(ディズニープラス)で見放題、そして2月11日に金曜ロードショーで放送予定(19時から五輪競技の放送のため、通常より1時間遅い22時スタート)です。
 

2:『飛べないアヒル』(1992)


※予告はドラマシリーズ『飛べないアヒル - ゲームチェンジャー』のもの

題材はアイスホッケー。こちらも王道のスポ根ものですが、実質的な主人公であるコーチはぜんぜん良くできた大人ではありません。何しろ、飲酒運転の罰則の社会奉仕活動のためにアイスホッケーのコーチを命じられ、勝つために最初にチームに教えることは「インチキ」なのですから。当然その作戦はうまくいかず、チームからの信頼など得られるはずもありません。そんなダメダメな大人が心から反省して子どもたちに謝り、自分の過去とも向かい合い、そして勝つことよりも大切な価値観を学んでいくのです。

試合で実際に活躍するのは子どもたちでありながら、ダメダメな大人のほうの成長も描かれるというのは、人生の酸いも甘いも噛み分けた人こそ思うことがあるでしょう。子どもたちは生意気なようでみんな良い子で、フェアプレーの精神も学べるので教育上も真っ当。親子で観る映画として文句なしにおすすめします。現在はDisney+で見放題で、その続編となるオリジナルドラマシリーズ『飛べないアヒル - ゲームチェンジャー』も配信中です。
 

3:『俺たちフィギュアスケーター』(2007)


題材はフィギュアスケート。物語は、表彰台で大乱闘を繰り広げたせいで、男子シングル部門から永久追放されてしまったクセの強い選手2人が、男子ペア部門での復活に望みをかけタッグを組むというもの。その最大の特徴は、下ネタや不謹慎ネタなどのブラックなギャグが満載ということ! つまりは完全に大人向けの作品ですが、いがみ合っていた正反対の性格の2人の間に友情が芽生えていく過程、良い意味で現実離れした大技を決めるための訓練、本格的で大迫力のパフォーマンスなど、スポ根もののツボはしっかり押さえられています。

ある秘密を持つヒロインとのロマンスや、意外にシビアな過去の出来事など、根底となるドラマも見どころ。大小さまざまなトラブルにも多彩なアイデアがあり、まさかの「追いかけっこアクション」までもがあったりするなど、サービス精神も満点で全く飽きさせません。エンドロールの途中にもおまけがあるのでお見逃しなく。現在はNetflixで見放題、他配信サービスでもレンタルでの鑑賞ができます。
 

4:『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017)


こちらも題材はアイススケート。しかし、これまでのような楽しいスポ根ものでも、輝かしい選手の活躍を追うような内容でもありません。何しろ、描いているのは1994年に実際に起きた「ナンシー・ケリガン襲撃事件」に関わったとされる、トーニャ・ハーディングの半生なのですから。彼女は幼い頃から厳しい指導というよりもほぼ虐待のような扱いを母親から受け、それでも天性の才能と努力をもってしてアメリカ人初のトリプルアクセルを成功させた……はずだったのに、その事件のせいでスケーター人生は転落の一途をたどっていくのです。

特徴的なのは「映画を観ている観客に向かって語りかけてくる」演出があること。例えば主人公のトーニャが夫をショットガンで撃ち殺そうとする(!)かと思いきや、トーニャがすぐにカメラに向かって「私はそんなことはしてない」と言ったりするのです。この事件ではトーニャや夫や関係者との「意見の食い違い」があり、それを劇中のキャラそれぞれが「私の言っていることが正しい」と観客に主張するというかたちで示しているというわけなのです。勝手に進んでしまった犯罪行為で状況が悪化していく様はおかしくも哀れで、鑑賞後は複雑な感情を呼び起こされるでしょう。現在はU-NEXTで見放題、他配信サービスでもレンタルで鑑賞できます。
 

5:『ヒノマルソウル 〜舞台裏の英雄たち〜』(2021)


題材はスキージャンプ。1998年長野五輪のスキージャンプに挑む、実在のテストジャンパーたちに焦点を当てた日本映画です。予告編ではまるで金メダルのために命の危険があるジャンプに挑んでいるような危うさを感じますが、実際の本編はその全くの逆。「命を最優先にする」価値観はもちろん描かれていますし、メインの物語が「仲間に金メダルの夢を打ち砕かれた男の屈辱と嫉妬の物語」であることが重要になっていました。

何しろ、本作の主人公である西方仁也は、冒頭から大舞台に挑んでいる日本代表選手の原田雅彦へ「落ちろ」と思ってしまいます。なぜ彼がそこまでドス黒い感情を持ってしまったのかを、物語は1994年のリレハンメル五輪にもさかのぼって解き明かしていくのです。その不遇な半生を丁寧に観ていったからこそ、彼が終盤に「手に入れたもの」には確かな感動がありました。実際の北京五輪でトップアスリートを応援するのももちろん良いですが、この映画で普段はスポットが当らない(テストジャンパーという)裏方の仕事に挑む者たちの心情を知ることには、大きな意義があるはずです。現在は種々の配信サービスでレンタルで鑑賞できます。


※各配信サイトの情報は執筆時点でのものです


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