「ラニーニャ現象」と「エルニーニョ現象」はどう違う?
2021年の冬は、世界の気象に大きな影響をもたらす「ラニーニャ現象」が発生していることが話題になっています。ラニーニャ現象によって、日本付近には寒気が流れ込みやすくなる傾向があるため、西・東日本を中心に寒さが厳しくなると予想されています。ラニーニャ現象は南米・ペルー付近の海面水温が平年より低い状態が続くことですが、一方で、この海域の海面水温が平年より高い状態になることを「エルニーニョ現象」といいます。エルニーニョ現象もまた、日本をはじめ世界の気象に大きな変化を及ぼします。通常、太平洋の赤道付近では「貿易風」とよばれる東風が吹くため、暖かい海水は太平洋の西部に吹き寄せられています。その一方で東部では海の深い部分から冷たい水が湧き上がります。つまり、海面水温は西部で高く、東部で低くなっているのです。
【平常時】
しかし、貿易風が何らかの影響で弱くなると、西部に溜まっていた暖かい海水が東へ広がり、東部での冷たい海水の湧き上がりも抑えられます。こうして、太平洋東部のペルー沖の海面水温が平年より高くなる状態がエルニーニョ現象です。
【エルニーニョ現象時】
「エルニーニョ現象」発生時、日本の夏は冷夏になりやすい⁉
エルニーニョ現象が発生すると、日本では冷夏になりやすいといわれています。過去のエルニーニョ現象発生時の夏の気温は、統計的に北日本や西日本で低くなっています。これは、日本に夏の暑さや晴天をもたらす太平洋高気圧の張り出しが弱まるためです。通常の年は、インドネシアやフィリピン付近の暖かい海上で上昇気流が発生しやすく、積乱雲の発達も活発になります。その上昇流は、やがて日本など中緯度地域で下降気流となり、太平洋高気圧の勢力を強めるのです。しかし、エルニーニョ現象が発生するとき、太平洋西部にあたるフィリピン付近の海面水温は平年より低くなり、この海域での対流活動は抑えられます。上昇気流の発生が弱まるため、太平洋高気圧も発達しづらくなり、日本は冷夏になりやすいのです。
過去には「ゴジラエルニーニョ」で大暖冬に
また、エルニーニョ現象は長期間続く現象であるため、夏以外の季節にも天候に変化を及ぼすことがあります。冬にエルニーニョ現象が発生しているときには、日本では暖冬になりやすいといえます。先述の通り、エルニーニョ現象発生時は、フィリピン付近の海面水温が低くなるため、上昇気流が起こりにくく、この付近は高気圧に覆われやすくなります。すると、偏西風が中国大陸南部でいったん南に下がり、日本付近では平年より北へずれて吹くようになります。偏西風に沿って、日本には南から暖かい空気が流れ込みやすくなり、冬の気温が高くなるのです。
「エルニーニョ現象」は世界中に異常気象を及ぼすおそれも
エルニーニョ現象やラニーニャ現象は世界規模で海や大気に影響を及ぼし、異常気象を多発させるおそれがあります。たとえば、エルニーニョ現象が発生すると、東アジア一帯が少雨、高温となるほか、オーストラリアでは干ばつが起こることが知られています。近年は地球温暖化の影響も加わり、これまで以上に気候変動が深刻な問題になっています。私たちには激甚化する気象災害と向き合い、少しでも気候変動を食い止めるための対策が求められています。
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