「女子? いいんじゃないの。女の子が頭いいのってさ、バシーっと叱ってくれそうだしさ、憧れるよね。俺は好きだよ」
「頭のいい女子はこれから必要だよね、女の人も”社会進出”が進む時代なんだから」
「私は採用担当もしますが、同じ学歴なら男子よりも女子の方がずっと優秀だと感じています。東大男子は甘えていますが、東大女子は抜群に仕事ができます」
これらは本質的に「擁護」などではないということにお気づきだろうか。「男とは、女とは」に対するものすごく固定した偏見の変化球に過ぎないのだ。
「頭のいい女の子」が「バシーっと叱ってくれそう」だから「憧れる」などというのは、「頭のいい女の子はバシーっと叱る」という先入観と(穏やかなタイプだって多いのに)、「叱られたい」という個人的なファンタジーの開陳に過ぎない。
「頭のいい女子はこれから必要」というのは、じゃあ今までは頭のいい女子は不必要だったということか。古今東西、頭のいい女子なんて当然ずっと存在していたのに、「女のくせに」と無視されたり「女なんだから」と抑圧されてきただけである。「女の人も社会進出」というのと同根だ。女の人は、いまさら進出なんてしなくてもずっと社会にいたけど誰かには見えていなかった、見ようとしなかっただけだ。
そしてもうひとつ厄介なのが、不思議な「高学歴男子サゲ、高学歴女子アゲ」である。女子が優秀なのを褒めたいからって、わざわざ男子と並べて男子を悪く言う必要はないのだが、あくまでも「男子よりも」と固執するところに、その人の逆バイアスやルサンチマンがあることに、本人は気づいているだろうか。
かように、「東大女子」という言葉を前にした人はおかしな反応を見せる。それは「東大」と「女子」の二語が、それぞれに先入観を持たれがちな言葉だからだ。「日本の学歴ピラミッドの頂点・東大」と、「若いオンナノコ」の組み合わせに、なぜか誰もが自分なりの好き嫌いのジャッジを下したがるのである。そしてそれは「ワセジョ」とか「慶應女子」に対するよりも激しめの反応になる。
東大「なんか」に行く女性は「結婚に不利」という信仰
その背景には、根強い「女性に対する(女はこうあるべきとの)好み」がある。今回All Aboutが行ったアンケートでも、女性の現役東大生から、今この2020年代においても親から東大進学に反対された経験があるとの声が上がった。自分が女子なので、地元から通える国立大学にして一人暮らしはしないでほしいと言われた。また両親が学歴にこだわるので、文系なら京大か東大レベルで、かつ浪人はありえないと言われ、レベルが下の京大を強く勧められた(文学部4年・女性・兵庫県出身)
就職と結婚というハードルを前にして東大女子は「不利である」という、利害への嗅覚を働かせる世代が、地方にはいまだにいるということなのだ。地方医学部を出て開業するのが親の望みで、それに比較すると東大進学は就職と結婚の心配があるため、反対された(法学部3年・女性・長崎県出身)
これは、結婚相手との間に「釣り合い」を重要視した世代感覚の名残であり、さらに言えば、「進学→就職→結婚」という過去近代の人生コース以外を想定できていない感性でもある。
東大当事者は、世間が貼ってくるラベリングに当惑している
付き合ったり結婚したりする相手の学歴を気にするかとの問いに、現代の東大生たちは「気にする」と答えるケースも多いが、フリーコメントを見ると……、「学歴ではなく地頭の良さは気にする」
「特に気にはしていませんが、気が合う相手が結果として同じぐらいの学歴に落ち着きそう」
「学歴というか、ちゃんと常識あるかとかは気にします」
と、釣り合いという発想ではなく「一緒にいて落ち着く知性」を求めているのだとわかる。
東大生本人たちは、外野が勝手に羨んだり憧れたり嫉妬したりしてレッテルを貼る「レベル」や「ブランド」や「カテゴリー」にはさほど関心がなくて、ただ「いい先生や学生たちと勉強したい」「切磋琢磨したい」と知的環境を求めて東大進学を決めた人が多い。もっとフラットなのである。
「東大女子」という、明らかにメディア的に引きのあるジャンルを弄ぶ世間。もてはやすように見えて、そこには、いまだ「頭のいい特別な女は嫌われる」という根っこの偏見と、自分たちがかつて戦い刷り込まれた学歴社会へのルサンチマン、それゆえの特殊な関心が存在しているのは否定できないのだ。
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