新生活を始めるために引っ越しをしたという方も多いのでは? 日本の引っ越しシーズンは新年度を前にした3月ですが、韓国は主に2~3月の春先と、9月頃に集中する傾向があります。これは韓国の新学期が3月に始まり、後期が9月始まりであることにも関係しています。

さて、韓国の引っ越しはどんな風に行われているのでしょうか。ここでは、荷造り、運搬、荷ほどきまで、全て業者が請け負ってくれるポジャンイサという引っ越しスタイルと、引っ越しにまつわる風習などをご紹介します。
 

何でもごっそり包んで運ぶ

日本で引っ越しをする場合、当日までに荷物を箱詰めしておくことは基本。一方、韓国で人気がある引っ越しスタイルは、見積もり以外は全て当日でOKというもの。なぜなら、荷作りも引っ越し業者の仕事だから。

荷物をまとめ、新居に運び、さらにそこで整理整頓し、すぐに暮らせる状況にまでするのが業者の仕事であり、この引っ越しスタイルをポジャンイサといいます。

ポジャンは「包装」、イサは「引っ越し」を意味しており、つまり全部まとめてごっそり運んでくれるから「包装引っ越し」というわけです。

ちなみに引っ越し業者が宣伝のためよく利用する数字はイサと同じ発音になる2(イ)、4(サ)。社名や電話番号などに24という数字がよく使われています。
 

はしご車が活躍!

当日は4~6人程の作業員がやってきて、半日~1日かけて引っ越し作業を行います。業者はそれぞれ担当する部屋に分かれ、大きなプラスチック製の箱にどんどん荷物を収納。

たとえば玄関、キッチン、寝室という具合に、同じ空間にあるものばかりでまとめて箱詰めをするので、引っ越し先でもそれぞれの箱をそれぞれの場所で開梱するだけという合理的なシステム。

冷蔵庫やエアコン、ベッド、ピアノなどの大型家具は毛布にくるんで運び出します。高層アパートの場合は、エレベーター以外にもはしご車を利用するのが韓国流。大きな荷物も出し入れができるように窓は全部取り払い、はしご車の荷台に荷物を載せて搬出・搬入を行います。大きな荷物がはしご車で上下する様子は、韓国定番の引っ越し風景なのです。
 

センスと良心ある引っ越し業者を利用すべし!

このポジャンイサのシステムを日本の読者に紹介すると、「韓国の引っ越しって楽でいいね」と言われます。それは半分正解で半分不正解。

業者が荷物の出し入れを全部やってくれるのは間違いないのですが、収納条件や間取りが違う新居で、いかに上手く荷物を片付けられるかは業者のセンスにかかっています。モノが使いやすく配置されていなかったり、丁寧に収められていなかったりすると、結局引っ越しの依頼主が収納し直すことに。

私の個人的な経験ですが、本がきちんと言語別に本棚に並べられていたようなありがたいケースもあれば、子どものおもちゃが整頓されないまま、無理矢理クローゼットに押し込まれていて残念だったことも……。

細かなことが気にならないなら全部お任せできて便利ですが、なるべく自分が暮らしやすいモノの配置を実現したいなら、引っ越し作業中も各部屋の状況確認をすることは必須。そしてそれは、依頼主の役割ということになります。
 

引っ越しにはやっぱりお金がかかる!?

スピーディー、かつ合理的に進められるポジャンイサ。それだけに、作業は室内であっても土足で行われます。これも韓国では当たり前の光景。

引っ越し作業後には、新しい入居者が清掃業者を雇って掃除をします。なるべく入居者不在の期間を避けようとする韓国の不動産契約システム上、荷物を運び出すと同時に清掃業者やリフォーム業者がやってきて、すぐに新たな作業が始まることも珍しくありません。

ちなみに清掃にかかる費用は、部屋の坪数にもよりますが、40万ウォン~150万ウォン程度。肝心の引っ越し費用は、引っ越し先までの距離や荷物量などで決まり、多くの場合70万ウォン~200万ウォン程度。吉日を始め、週末や月末は料金が高くなる傾向にあります。

また、働いてくれる人に対する心遣いということで、業者の昼食は依頼主が負担することが多く、ジャージャー麺やお弁当を振舞ったり、食事代を渡したりすることも。作業中にインスタントコーヒーやジュースの差し入れをする人も多くいます。

スタイルは違えど、やはり引っ越しは大変で、しかもお金がかかるという点は日本も韓国も同じようです。
 

引っ越しの縁起担ぎ

引っ越しの日取りは、悪鬼が歩き回らず、人間に害を及ぼさないといわれる「손 없는 날(ソンオプヌンナル)」と呼ばれる吉日が選ばれます。この吉日はインターネットで検索すればすぐに調べることができ、引っ越しが決まった人の多くが一度は確認するものです。中には占い師に占ってもらい、日どりを決める人もいます。

同様に悪鬼を払う意味で、部屋の四隅に塩と小豆をまいたり、部屋の中央に食べ物を並べて簡単な祭祀を行ったりすることもあります。吉日に引っ越しをしない場合は、米をたっぷり入れた炊飯器を予め吉日に新居に移動。そうすることで、食べることに困らないといわれています。

また、済州島では新舊間(しんくかん)と呼ばれる引っ越しシーズンがあります。大寒後5日目から立春3日前までの1週間ほどで、この期間は普段家の中にいる神々が天上にいて不在のため、引っ越しにちょうどいいといわれています。この時期、済州島のアパートや住宅街へ行くと、高確率で引っ越しに遭遇することでしょう!
 

チプトゥリでお披露目を

新居に引っ越し後、近所に餅を配る風習があります。特に赤小豆入りの蒸し餅は雑鬼を追い払うという厄除けの意味があり、引っ越しの挨拶で持参する定番のお餅です。

しかし最近では、そういった迷信めいたことは気にせず、ただ見た目がきれいでかわいらしい包装の餅が選ばれることも多くなりました。といっても、近所付き合いが希薄化する昨今の韓国では、そもそも引っ越しの挨拶はしない人が増えています。特にアパートで暮らす人が多い現代では、挨拶まわりをする人でも、隣家、上下階に行く程度。これも、最近の韓国の変化の1つです。

引っ越し後のイベントとして、新居をお披露目する目的で友人や親族を招待する집들이(チプトゥリ)というホームパーティーがあります。

招待された人は、引っ越しのお祝いとしてトイレットペーパーや石鹼をプレゼントするのが定番。トイレットペーパーは、どこまでもするすると紙が伸びていくことから、何事も順調にいくようにという意味が。石鹸は泡がいつまでもぶくぶくと泡立つことから、いいことがどんどん起こるようにといった意味が込められています。

これらのプレゼントはあまりにも定番すぎるため、最近ではセンスを発揮し、おしゃれなアロマキャンドルやワイン、ケーキなどを持参する人もいます。