「できるだけ子どもの希望は叶えたい」けれど……
子どもの教育は、いつの時代も親の最大の関心事です。「できるだけ子どもの希望は叶えたい」と思うものの、実際に子どもから予想外の進路希望を伝えられると、学費やその後の生活が心配になってしまうご家庭もあるのではないでしょうか。
今回は、子どもから「私立中学に通いたい」と希望されたご家庭を例に、教育プラン変更に伴う家計の変化と対処策について説明します。
私立中学への進学を希望する子どもがいる家庭をシミュレーション!
ここでは下記のようなご家庭のシミュレーションを行います。
▼家族構成
夫(45歳):会社員(年収600万円)
妻(44歳):専業主婦
第1子(15歳):中学3年生
第2子(10歳):小学4年生
▼現状と希望
- 現在の貯蓄:600万円
- 夫の定年退職は60歳。退職金 1,000万円(見込み)。その後は65歳まで再雇用制度を使って勤務予定。年収は300万円程度
- 妻は現在専業主婦だが、第2子が中学に入ったら扶養内でのパートを希望
- 住まいや教育費も含めた月々の生活費:35万円
- 定年退職後の65歳から70歳までの間に、年1回夫婦で旅行がしたい(予算10万円)
▼住まいについて
- 自宅は築14年の一戸建て(購入価格:3,400万円)
- 頭金400万円、住宅ローン:3,000万円、35年全期間固定2.8%で借入
- 昨年全期間固定1.2%に借り換えを行った(借換後の月額返済額:約10万円)
- 固定資産税:10万円
- 来年くらいに水回りのリフォームを予定(予算100万円)。その後も20年間隔くらいでリフォームを予定(1回あたりの予算150万円)
▼保険について
- 夫:生命保険(45歳払い終身保障、保障額500万円)……年額25万2,000円
- 夫:医療保険(終身払い終身保障、入院日額5,000円)……年額6万円
- 妻:医療保険(保障85歳まで、入院日額5,000円)……年額3万6,000円
- こども:学資保険(15歳払い18歳満期、満期金200万円)……月額1万5,000円×2人分
▼教育プランについて
- 第1子、第2子ともに、高校までは公立、自宅から私立文系の大学に通うプランを想定していた
- 小学4年生の2学期になって、第2子から大学付属の私立中学へ進学したいといわれた。合格したらそのまま付属大学の理系学部へ進学したいとのこと。
現在の家計でのシミュレーション
それでは、現在の家計状況のまま第2子が希望する教育プランを実施した場合、収支はどうなるでしょうか?
シミュレーションを行った結果、夫48歳の時から貯蓄が減り始め51歳から60歳の定年退職までマイナスが続きます。
▼生命保険の解約返戻金を追加しても……
仮に夫50歳の時に生命保険を解約して解約返戻金(約400万円)が家計に追加されたとしても、貯蓄が250万~500万円の間を推移し、やや心もとない状況となります。また生命保険を解約したことで、万が一の保障が無くなってしまいます。
どんな対策がとれるのか
それでは、こどもの希望を叶えながら定年退職までの生活を安心して過ごすには、どのような対策がとれるのでしょうか?
▼対策1:終身保険の解約と定期保険への加入
最初に行う対策として、終身保険の解約が挙げられます。先ほどの2つ目のシミュレーションにもあるように、夫50歳時点で生命保険を解約し解約返戻金を受け取ったとしても、貯蓄が心もとない状況にはあります。
しかし、収支のマイナス回避を第一に考え、保険料支払い期間が終わった後の夫46歳時に保険は解約、解約返戻金390万円程度を受け取ることにします。
終身保険解約により無くなってしまう万が一の時の保障については、定期保険(保険期間10年、保障金額2,000万円、月額保険料6,000円)に新たに加入することで、これまでよりも安い保険料で大きな保障を受け取ることができるようになります。
▼対策2:妻が働きに出て世帯収入を増やす
続いての対策としては、当初の予定通り第2子中学入学後に妻がパート勤務を開始し、年100万円程度の収入を得ることです。
これにより、世帯年収が700万円となり、48歳から60歳までの大きな支出が重なる時期であっても貯蓄が500万円を切ることがなくなります。
対策3:iDeCoを掛金2万円/月で始める
最後の対策は、収入や支出に直接関係するものではありません。
しかし、iDeCoに年間24万円拠出するだけで年間4万8,000円、46歳から59歳までの14年間で67万2,000円も所得税と住民税が優遇されるのは、所得控除の機会が限られている会社員にとって、とても大きな利点ではないでしょうか。
iDeCoで投資信託を利用した資産運用を行う場合、元本保証ではない点は注意が必要です。しかし、掛金拠出時だけでなく運用中の利益や60歳以降に受け取る運用資産(元本+利益)に対しても、税金優遇や控除が受けられる点もメリットとなります。
まとめ
子どもの教育費が家計に占める割合は、比較的大きいものです。子どもの誕生とともに将来どういった進路を進んでもらいたいかを考え、学資保険や貯蓄で備えていたとしても、今回の事例のように子どもからまったく違う希望を聞かされることもあります。
当初の予定とは違って不安になったとしても、老後までを見通した将来の家計状況を把握することで、とるべき対策も見えてきます。「家計が厳しいから無理」と断じてしまう前に、まずは何ができるかを考えていきましょう。
この記事を執筆したのは……
阿部倉 弘子
MILIZE提携 FPサテライト株式会社所属。大学卒業後、数年フリーターを経験。その後IT企業へ就職し、システム運用業務に従事。自身の保険相談や資産運用の相談を通じて、FPの持つ可能性と奥深さに興味を持ち2級FP技能士を取得する。2019年5月AFP認定。現在はIT企業に勤務する傍ら、どんな状況でもお金に振り回されない人生を歩むためのガイド役となるべく活動している。
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