小田急箱根グループが100億円の大型投資!

新型海賊船、右舷イメージ(提供=小田急箱根ホールディングス)

小田急箱根グループは、日本有数の観光地である箱根において、乗り物の運行などを中心とした事業を展開している。このほど、2018年から2020年にかけて総額100億円規模の大型投資をスタートすることになり、その概要をメディアに公表した。
 

会見
大型投資について説明する小田急箱根HDの取締役社長五十嵐秀氏(筆者撮影)

この大型投資によって乗り物や施設のパワーアップを図り、首都圏をはじめとした日本全国からの誘客を目的とするのみならず、訪日観光客(インバウンド)の急増によって激化する観光地同士の競争で後れを取らないように、さらなる魅力を創出する模様だ。
 

芦ノ湖名物、新型「箱根観光船」は水戸岡デザイン

まずは、芦ノ湖名物の箱根観光船。1964年就航の「パイオニア号」から数えて7代目となる新型海賊船を建造することとなった。
 

水戸岡氏デザインの新型海賊船(提供=小田急箱根ホールディングス)

何とデザイン設計を担当するのが水戸岡鋭治氏。JR九州の豪華列車「ななつ星in九州」をはじめ各種観光列車を手掛けている話題のデザイナーだ。小田急グループでは、新型ロマンスカーGSE、VSEをはじめ箱根登山電車の新型車両「アレグラ」を岡部憲明氏に委嘱してきたので、意外性のある起用である。

新型海賊船の展望席イメージ(提供=小田急箱根ホールディングス)

担当者の話によると、数人の候補者の中から選考したのではなく、「ななつ星」のインテリアに感銘を受け、敢えて水戸岡氏に依頼したという。「心ときめくクルーズ」をコンセプトとして、すでに製作は進んでいる模様だ。温かみのある木材を贅沢に使い、細部までこだわった調度品によりクラシック感を演出する。2019年4月に就航予定で、それに先駆けた2月の進水式で船の命名が行われる。


水戸岡氏のデザインと言えば、九州のみならず、富士急行の「富士登山電車」「富士山ビュー特急」、伊豆急行「THE ROYAL EXPRESS」と、最近は伊豆箱根エリアの観光列車にも進出している。どんな旋風を巻き起こすか、今から楽しみである。
 

箱根ロープウェイも新型ゴンドラが登場へ

箱根ロープウェイの新型ゴンドラ(提供=小田急箱根ホールディングス)

箱根湯本から芦ノ湖に至る「箱根ゴールデンコース」のラストを担う箱根ロープウェイには、世界シェア7割を占め、世界各国への納入実績と安全性、信頼性で世界一と評判のスイスCWA社製の新型ゴンドラTARIS(タリス)が導入される。これは日本初とのことだ。
 

新型ゴンドラ車内イメージ_
新型ゴンドラ車内イメージ(提供=小田急箱根ホールディングス)

新型ゴンドラはドアが広くて2人同時に乗り降りができるほか、車体の美しい曲線フォルムとガラス面の拡大によって車内からの一層のパノラマビューがウリである。現行のゴンドラよりも室内が広くなるにもかかわらず、定員は18名のままなので、ゆったりと車内で過ごせることになろう。営業開始は、2021年4月の予定だ。
 

箱根登山電車も新型車両が追加導入。一方で100形は引退へ…

新型車両アレグラ
新型車両アレグラ(筆者撮影)

箱根登山電車では、2014年秋のデビュー以来、好評の新型車両「アレグラ」を追加導入する。2019年春に2両、2020年中には2両固定編成を1編成投入し、アレグラはすでに運行中の車両と合わせると6両となり、繁忙期には3両編成での運転が可能である。

旧型車両100形
旧型車両100形(筆者撮影)

「アレグラ」の増備により、半世紀以上にわたって活躍してきた旧型車両100形は引退する。鉄道ファンには人気の車両だけに、引退日などがアナウンスされれば、かなりのファンが沿線に繰り出しそうだ。残念な話ではあるけれど、時の流れには逆らえない。「アレグラ」は窓も大きく、車内からの眺望も優れているし、クロスシートの座席も座り心地がよいので、その増備は、観光客から好評を持って迎えられるであろう。

2000形「サンモリッツ号」
2000形「サンモリッツ号」(筆者撮影)

また、「サンモリッツ号」の愛称で親しまれている2000形電車は、改造作業が行われる。制御装置の更新のほか、空調装置の搭載場所を室内から屋根上に変更することで、車内空間が広がる。内装が変わるのかどうかは、更新が終わってからのお披露目までのお楽しみだ。2021年から2022年頃の営業開始が予定されている。
 

ケーブルカーや駅もリニューアル予定

箱根登山ケーブルカー
箱根登山ケーブルカー(提供=小田急箱根ホールディングス)

登山電車の終点である強羅駅から乗り継ぐケーブルカーも大規模リニューアルを行う。足回りは変わらないので、車体のみのリニューアルとなる。2021年に開業100周年を迎えるので、それに合わせるように2020年の営業開始が予定されている。
 

早雲山駅の新駅舎イメージ
早雲山駅の新駅舎イメージ(提供=小田急箱根ホールディングス)

ケーブルカーからロープウェーへの乗換駅となる早雲山駅について、単なる乗換駅としての機能だけではなく、大文字焼きが行われる明星ヶ岳や相模湾が一望できるテラス席を設置したり、足湯を設けたりするなど、ちょっと一息つけるような施設とする。救護室や授乳室などのサービス施設も設置予定だ。

早雲山駅2階テラス席
早雲山駅2階テラス席(提供=小田急箱根ホールディングス)

駅に関しては、老朽化した駅舎や多目的トイレの新設によりイメージを一新、安全性・利便性の向上を図る。小田原駅と箱根湯本駅の間にある箱根板橋駅、入生田駅、箱根湯本駅と強羅駅の間にある小涌谷駅、スイッチバックで有名な大平台駅がリニューアルの対象となる。

箱根板橋駅イメージ
箱根板橋駅イメージ(提供=小田急箱根ホールディングス)

 

箱根の「大混雑問題」は解消される?

このような大規模な投資により、インバウンド客の増加を見据えた箱根エリアの活性化を図る予定だが、混雑対策は考えられているのだろうか? 現在でも、箱根登山鉄道は、時期により通勤ラッシュ並の大混雑となっている。登山鉄道という立地の制約などで、おいそれと電車の編成長大化や本数の増加は望めない。
 

バスのラゲージスペース
バスのラゲージスペース(提供=小田急箱根ホールディングス)

対策としては、バスの増発により、観光客が電車に集中することなく分散を図るという。インバウンド客向けに、特有の大きな手荷物を収納できるスペースを新たに設置した大型バスを50台用意し、箱根湯本駅から芦ノ湖へ直行するバスを増やすことで、往復のコースを変えるモデルコースをつくるなどが考えられるとのことだ。
 

箱根フリーパスの発売枚数は年間100万枚に達成しそう

2017年には、箱根フリーパスの発売枚数が過去最高の年間95万枚に達したという。そのうち3割程度が外国人の利用のようで、さらに増加すれば、早期に年間100万枚に達成しそうだ。各種乗り物や施設のリニューアルで箱根エリアは一層魅力的な観光地となるであろう。
 

取材協力、写真&イメージ画像提供=小田急箱根ホールディングス