外国人観光客の増加に伴い、通勤型電車205系を大改造!
JR日光線に観光客向け車両「いろは」が4月から登場する。それに先立ち、3月10日に、さいたま市の鉄道博物館で車両が公開されたので、レポートしたい。
「いろは」は、現在、日光線で走っている通勤型電車205系を大改造したものだ。205系は、おもに首都圏の山手線、京葉線などで活躍していた4扉オールロングシートの車両で、後継の新型車両の導入にともない、JR日光線に移って主力として働いている。
JR日光線は、かつては首都圏から直通する優等列車が走っていたが、東武特急を利用する観光客が増えたため、運行をとりやめた。さらに、JR新宿駅や池袋駅からの特急列車も栗橋駅から東武鉄道に乗り入れて東武日光駅へ向かうことになり、JR日光線は地元の通勤通学や地域輸送に特化する形となった。
その意味では、205系電車が適していたのだが、近年、海外からの旅行客が増加するにつれ、JR日光線を利用する外国人がとみに目立つようになった。彼らは、「ジャパンレールパス」を使っているので、追加料金のかかる東武鉄道利用を避け、東北新幹線で宇都宮へ向かい、JR日光線に乗り換えるのが主流となっている。そうなると、通勤型電車では、大きな荷物の置き場所に困る上に、日光杉並木や日光連山の車窓を思うように楽しめないので、205系はあまり使い勝手のよいものではなかった。そうした声に応えるべく、かつ地元の乗客の利便性を損なわないようにとの配慮から誕生したのが「いろは」である。
着席スペースが増加!荷物置き場も設置
「いろは」は、従来の205系電車を大改造して、4扉は2扉となり、着席スペースを増加、車内の中央部は4人あるいは2人向かい合わせのゆったりしたボックス席とし、旅を楽しめるインテリアとなった。同時に、各車両に大きな荷物置き場を設置し、スーツケースなどで座席や通路をふさぐことのないように配慮している。
デザインは、レトロを意識した和の色使い、ジャポネスク風かつモダンな落ちついたもので、木目調の車内は日本の車両であることをアピールしたものとなった。各座席にテーブルはないけれど、窓枠の部分をやや広げることによりペットボトルなどを置けるようにしている。ロングシート部分のクロスシートの境に幅の広い肘掛けを設け、ここを小さなテーブルとなるような工夫も見られる。宇都宮と日光間の乗車時間は、各駅停車で45分前後なので、テーブルがなくても、それほど苦にはならないであろう。
外国人が多数乗車することを考慮して、車内の至るところに、日光を紹介する英文のポスターや中吊り広告を掲出している。日本画や書道の掲示物もあり、日本を旅する雰囲気を盛り上げている。窓の上の電光掲示による停車駅案内は、日本語、英語、中国語、韓国語の4か国語対応で分かりやすい。ほかには、車内でFree Wi-Fiを受信できる環境とし、観光情報を容易に入手できるようにした。
「いろは坂」と「物事のいろは」が愛称の由来
車両の愛称「いろは」は、日光の名所のひとつである「いろは坂」と「物事のいろは」を掛け合わせたもの。日光への旅のはじまりである車内で、日光の観光情報の「いろは」を知り、旅の雰囲気を盛り上げる役割を果たすことになるだろう。外観では、日光の観光名所やゆかりの動植物をアイコン化して側面に配置し、観光用車両をアピールしている。
「いろは」は、4両編成で、車椅子スペースは2号車と4号車の2ヶ所、車椅子にも対応する大型トイレは4号車にある。
4月1日はデビュー記念の臨時快速列車も登場
運行開始の4月1日には、デビュー記念の臨時快速列車「誕生いろは日光号」(全車指定)として宇都宮と日光の間を往復する。4月2日からは、日光線の普通列車として毎日宇都宮~日光間を3往復、宇都宮~鹿沼間を4往復する。このほか、大型連休中の土休日には、全車指定の臨時快速「GOGOいろは日光」、5月18日には臨時快速「日光東照宮春季例大祭号」として、それぞれ大宮~日光間を各日1往復することになっている。ほかにも、4月1日から6月30日までの栃木デスティネーションキャンペーン中には臨時列車の運行も計画されている。
3月8日には、宇都宮駅のゆるキャラ「みやゴロくん」が誕生。さっそく鉄道博物館での「いろは」一般公開に駆けつけ、愛嬌をふりまいていた。新しい車両やゆるキャラが加わり、4月からは、JR日光線を中心に栃木県内の旅が楽しみである。
取材協力=JR東日本大宮支社