てるみくらぶ破産に思う「格安ツアー会社のビジネスモデルの終焉」

格安ツアーを専門としていた旅行会社「てるみくらぶ」が破産しました。このことは、同社だけではなく、格安ツアー会社のビジネスモデルの終焉を意味するような気がしました。どのような点に「終わり」を感じたのか、旅館マエストロが解説しました。

格安ツアーを専門としていた旅行会社「てるみくらぶ」が破産しました。このことは、同社だけではなく、格安ツアー会社のビジネスモデルの終焉を意味するような気がしました。
 

格安ツアー会社のビジネスモデルとは

格安ツアー会社のビジネスモデルを簡単に述べると、航空会社が搭乗率を100%に近づけるために旅行会社に卸す格安料金の座席や、ホテルの客室を大量に仕入れてツアーを設定して販売。利用客からなるべく早く代金を収受して、航空会社には後から支払うことにより得られるキャッシュを運転資金としつつ、大量に販売することで得られる航空会社からのインセンティブ(報奨金)を利益としていくモデルです。
 

このモデルは、インターネットが普及する以前、航空会社やホテルが直接販売できない時代に生まれたもので、その頃は販売してくれる旅行会社の立場のほうが強かったのです。しかし、インターネットの普及でこのパワーバランスが変わってしまいました。これも従来のビジネスモデルが崩れていく背景にあります。
 

訪日外国人旅行者の急増も原因のひとつ

そのほかにも、近年の「訪日外国人の急増」も大きな理由のひとつです。格安航空券は座席が余ることで供給量が増えますが、当然、搭乗率が上がれば航空会社は格安で座席を卸す必要がなくなります。各航空会社の機材が小型化しているという事情もありますが、2012年から日本に来る外国人旅行者が急増したことで、てるみくらぶも座席の仕入には苦労していたと思います。また大量販売できなくなることで、航空会社からのインセンティブ(報奨費)も減っていたと思います。

図
図.訪日外国人数と出国日本人数の推移(単位:人) データ出所:日本政府観光局

  

買い取りによるリスクが高い「ホテル付きツアー」

航空券だけであれば、代金の支払いは旅行実施後となり、チャーターの場合を除き旅行会社にリスクは発生しません。しかし、人気リゾート地のホテル等は、ある程度ギャランティ(買い取り保証)をして仕入れる場合が多く、旅行会社はホテルに先に代金を支払います。そのため、航空座席を仕入れられなかったりして、計画していた数が売れないとホテルに支払ってしまった分だけ旅行会社が損をして赤字になってしまうことも往々にしてあるのです。
 

取消は旅行会社にもリスク…「逆ザヤ」の場合も

また、利用者の取消も旅行会社にとっては痛いケースとなる場合も少なくありません。格安ツアーの取消料は、海外の旅行会社の場合、予約した時点で100%かかるのが主流です。しかし、日本の標準旅行業約款の場合、出発直前に取り消しても50%。3日前の取消なら20%で済んでしまいます。これはかなり低い額です。旅行会社からも様々なキャンセル料の支払いがあるので、決して取消料を収受したからといって旅行会社の儲けにはならないのです。むしろ、ケースによっては、売り値が買い値より安いという「逆ザヤ」になるおそれも少なくありません。

キャンセル料
てるみくらぶの取消料(現在このページは閲覧できません)

  

「直接予約」の登場で、旅行会社は要らない時代に

そうこうしているうちに、航空券もホテルもインターネットで直接予約のほうが便利になってきています。格安で買おうとすると、こちらはすでに予約時決済が当たり前。利用者も自己責任でそれを受け容れていますから、もう旅行会社は要らない時代になってきたのかもしれません。
 

あくまで格安ツアーというのは、人口も増え、大量販売のできる「成長国のビジネスモデル」。そのため、資本力のある大手旅行会社は、アジアの成長国の旅行会社を買収して、グローバルビジネスにシフトしています。
 

中小旅行業が今後生き残るためには

中小旅行業が今後生き残るためには、格安に仕入れる代わり、応分のリスク負担を利用者に求めるようなビジネスに修正するか、大手にはない独自の旅行コンテンツを開発し、特徴のある専門会社となっていくほかはないと思います。
 

中小旅行業が組織化された全国旅行業協会では、国内旅行において「地旅」という現地の旅行会社ならではのニッチな旅行素材を商品化し、相互に売りあおうと取り組んでいますが、そうしたことなしでは生き残りは難しいのではと思います。
 

【関連リンク】

てるみくらぶの破産が「素人経営者の悲劇」だと断言できる3つの理由

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