代金支払い済みの一般客は8~9万人
株式会社てるみくらぶという旅行会社が破綻し、破産手続が開始されました。負債総額151億円でそのうちツアー申込等の一般客に対するものが約99億円、代金支払い済みの一般客は8~9万人(以上は、3月28日の日本経済新聞の朝刊による)といいますから、大規模な破産事件であるのはもちろん、多数の一般市民にも影響を及ぼす事態となっています。
ところで、代金を支払ってしまった一般客で旅行にまだ出発していない人(要するに、まだサービスを受けていない人)は、代金を返してもらえるのでしょうか。
破産は残った財産を債権者に分配するための制度だが…
そもそも、破産というのは、債務超過となってしまった人や法人について、法律上のルールに則り、残っている財産を債権者に対して公平に分配するための制度です。
破産管財人(弁護士が裁判所より選任されます)が、破産者に変わり、財産を確保したり、配当の段取りをします。てるみくらぶの場合も同様です。当然、債務超過ゆえに破産するのですから、債権者が全額の配当を受けることはまずありません。
しかも、配当には優先順位があります。詳しい話は省略しますが、今回のてるみくらぶの事件で8~9万人いるとされる一般客は優先順位が低く、一般的破産債権といわれる種類の債権者に該当します。
てるみくらぶの利用客にはいくら還付されるのか
てるみくらぶは、旅行会社です。旅行会社は、営業保証金や弁済業務保証金分担金という名称で金銭を一定の団体や法務局に納めています。これにより、一般客は、旅行会社が破綻した際に還付を受けることができます。
てるみくらぶの場合は、一般社団法人日本旅行業協会に対して、2,400万円の分担金を納めているそうです。そして、今回の件では、この協会から、一般客に対して1億2,000万円の限度で還付される予定だそうです(てるみくらぶのホームページの記載より)。
ちなみに、還付される予定の1億2,000万円ではとても全額を賄うことはできないと思われます。その場合は、債権額(支払い済み代金額)に応じて按分(比例配分)して還付されることになります。したがって、一般客は、破産の手続とは別に、協会に対して申し出をすれば、代金の返還を受けることができます(債権額に応じて比例配分された額での返還)。詳しくは、てるみくらぶや一般社団法人日本旅行業協会のホームページをご覧下さい。
なお、このような営業保証金等を納入する制度は、他に不動産業にもみられます。このような制度がない場合、一般の消費者といえども破産手続により配当を受けるほかありません。金融機関等でしたら、ある程度貸し倒れのリスクも計算して貸し付けしていますし、担保も取っていますが、一般の消費者や中小零細企業では、そのようなことまで考えているはずもなく、いざ破産となると大変な痛手を被ることになります。
「債務超過で経営が厳しい企業」を見極める方法は?
では、このような事態を避けるために何か気をつけることはあるのでしょうか。
会社が債務超過で厳しいといった情報が一般消費者のところまで及ぶはずもなく、実際のところ厳しい状況でも会社は普段どおり営業を続けていることが多いと思います(場合によりますが、従業員さえ会社が危ないことを知らされずに働いていることもあります)。
しかし、まず気をつけないといけないのは、今回のように、消費者側が多額の金銭をあらかじめ会社に支払って後からサービスを受けるような場合です。支払って同時にサービスを受ける(又は、物を買う)とか、サービスを受けて(又は、物をもらって)から代金を後払いする場合は、あまり気をつける必要はありません。同時にもらうことができたり、後から払う以上、払い損はないからです。
先に支払って後からサービスを受けるというと、今回のような旅行会社、結婚式場、語学教室・趣味教室といったサービスが思い浮かびます。
破綻するかどうかの見分けはほとんど不可能なのですが、例えば、連絡が取りづらい、予約に手違いがあった、管理が行き届いていない、といったことが垣間見られる場合、その原因が会社内部の混乱に由来していることがありえ、要するに、破綻が近づいて会社の業務がうまく回っていない可能性があります。このような会社とはできる限り取引しないのが無難だと思います。
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