「気が狂いそうになる」。市長を驚かせた、過酷すぎる送迎のリアル
DEWKS層にとって必要不可欠な社会インフラというと、真っ先に挙げられるのが保育所(保育園)です。流山市では、この15年間で、保育園の数を17園から104園へと増やし、保育定員も1789人から8669人まで拡充し、整備してきました。
しかし、ただ保育園を増やすだけでは、実は保護者たちの真のニーズに応えられていなかった。
そのことに気づいたのは、市長になってまもなくの頃のこと。
「朝晩の子どもの送迎が、とても大変なんです」という市民からの声が、私のもとに直接届くようになったのです。
流山市では、全国の自治体と同じように市民が自由に意見や提案を届けられる「市長への手紙」という制度を設けています。
その中に、保育園の送迎に関する切実な訴えがありました。時には、講演会やイベントの場で、直接、私宛の手紙を手渡されることもあったのです。
手紙には、働く保護者たちの深刻な悩みが書かれていました。
自宅の近くや通勤経路の保育園には空きがなく、ようやく見つかっても離れた場所まで送り迎えをしなければならない。途中下車して10分以上歩いて保育園に子どもを預け、再び駅に戻り電車に乗る。出社する頃には、すでに疲れてしまう。
なかには、2人の子どもが別々の違う保育園に通っていて、朝はそれぞれの保育園を回って送り、帰宅時には空腹で泣き出す子どもをなだめながら2人目を迎えにいかなければならず、気が狂いそうになる、というような切なる訴えもありました。
保育園の定員を増やして、待機児童ゼロを達成できたとしても、これらの問題は完全には解決できません。様々な形の悩みがあることを、私は市民の声を通じて初めて知りました。
見えた“真の課題”。「送迎地獄」と「定員偏在」をどう解く?
これは「保育園問題」が社会的に注目されるようになる、10年ほど前のことです。当時は、「保育園までの送り迎えが大変」という問題自体がそこまで可視化されていませんでした。市民から声が届いても、市役所の中では、これを行政が取り組むべき課題と認識していなかったのだと思います。
市民の側も、まだ事例のないことについては具体的に市に何をどう要望すればよいか分からず、変えられない日常に対する悲鳴のような声だけが届いていました。
けれども私は、市民が健康に生活するために行政が応えるべき課題だと受け止めました。
そこで、まず市内の保育園の場所を地図上にプロットして、地理的な要素と保育園の稼働率との関連性を確認してみました。
すると結果は非常にシンプルなものでした。駅に近い保育園に定員オーバーが集中し、逆に空きがある園は駅から遠いなど、立地によって偏りが生じていることが分かりました。
つまり送迎の問題に加えて、保育園稼働率の偏在という問題も抱えていたのです。
どうすればこの2つの問題を同時に解決できるだろうかと、私は考え続けました。
すると、ちょうどその頃、厚生労働省から提案事業として「送迎保育ステーション事業」が紹介されたのです。これこそ2つの問題を同時に解決できる仕組みだと確信し、すぐに取り組むことにしました。



