「逃げ場のない」映画館で見るべき理由
結論から申し上げましょう。本作は主演の香川照之が映るだけで、良い意味で「もうダメだ」と思わせてくれる、恐ろしい作品でした。後述する独特の「構成」「間」も相まって、「集中して見る」、いや「逃げ場のない」映画館でこそ、真価を発揮するのは間違いありません。なお、PG12指定の理由は「違法薬物の吸引の描写がみられる」であり、直接的な残酷描写はほぼありません。ただし、「死体」ははっきりと見えるので、ある程度の覚悟はしておいたほうがいいでしょう。
そして、ドラマ版を見た人はもちろん、そちらを見ていない人にこそ、おすすめしたい理由があります。理由は後述しますが、劇場版→ドラマ版という順番で観ることこそが、本作を最大限に楽しむ方法なのかもしれません。 さらには、映画『8番出口』のクリエイターが参加してこその魅力、『鬼滅の刃』との共通項(あるいは相反するセリフ)もあったのです。
「ザッピング」によって恐怖を呼び起こす構成
本作の内容を端的に記すのであれば、「6人の男女の日常に訪れる災いの傍には、謎の男が常にいる」ことを淡々と、時にはショッキングに見せていく、というものです。「被害者」となるのは、家族との関係や進路に悩む女子高生、ある過去を抱えた運送業の男、冴えないショッピングモールの清掃員と理容師、負債を抱えた旅館の支配人、プールでエクササイズをする平凡な主婦……と立場も住む場所もバラバラで、なんの接点もない……はずでした。しかし、女性警官はそれぞれに起こった事件の「共通点」に気づき、捜査を始めるのです。
このザッピングの構成は、ホラー映画の『呪怨』では「出来事の“起点”が不明瞭になる」効果があり、『WEAPONS/ウェポンズ』では「パズルを解くように真実へ近づいていく」といったエンタメ性につながっていましたが、今回の『災 劇場版』でもたらされる恐怖は、それらとも少し異なります。
初めこそ淡々と6つの視点を並行して描いていて、それぞれが「なんの変哲もない日常」だったはずなのに、あるポイントで「香川照之演じる男が急に登場すること」が、とてつもなく異常な事態に思えるからです。
ドラマ版は1話ごとに「災いが突然訪れるまでの普通の日常」を描いているため、香川照之演じる男は「初めて登場した時には特に異常ではない」ように見えます。しかし、劇場版では「並行して描かれるバラバラの物語に、突然同じ男が現れる」ため「初登場時からヤバい」と観客の脳裏に刻み込んでくる感覚があったのです。



