所持金10万円で単身渡米、寝床は「段ボール」。高市早苗が20代で挑んだ、あまりに過酷な武者修行

無名だった20代の高市早苗は、返事の保証もない手紙を書き、単身ワシントンへ向かった。後ろ盾もない異国の地で、ベッドもなく段ボールを敷いて寝る極貧生活。そこからいかにして米連邦議会のポストを勝ち取ったのか。(画像出典:首相官邸ホームページ)

「ノー・チャンス」からの逆転。電話番から特別研究員への執念

そんなおり、オフィスで働くコングレッショナル・フェローが辞めることになった。

コングレッショナル・フェローとは、連邦議会の特別研究員で、大学の助教授などが就くことが多い。チャンスだ。

「後任は誰かに決まっているのかしら」

高市は辞める本人に確認した。

「決まってはいないけれど、優秀な大学の助教授やシンクタンクの研究員から履歴書がたくさん届いているから、あなたにはノー・チャンスだと思うわよ」

ストレートに言われた。ごもっともである。しかし、引き下がる気持ちなど毛頭なかった。

辞める彼女に取り入って強い推薦をしてもらうしかない。翌日から毎朝7時に出勤し、夜11時まで残業して、やる気をアピールした。

高市は自分をコングレッショナル・フェローにした場合のメリットとデメリットを整理した。

デメリットはまず言葉の問題。読み書きだ。それでも、英語力は意外に早く身についてきて、日本の英語教育が優れていることを再認識した。

中学や高校の英語の授業では、アメリカ人が理解できない関係代名詞を使った構文を勉強させられる。それが生きた。

難解な文章がさらさら読める。インターンとして手紙を仕分けすると、数名のアメリカ人インターンよりも高市が一番作業が速い。斜め読みでだいたいのポイントは摑むことができる。

政府から情報を取る能力も重要だ。たとえば、住宅金融法案を作りたいとパットが言う。各国の住宅金融法案の資料を集めるためには、政府内の組織を把握している必要がある。自分にその能力があることを他の議会スタッフに認識させたい。

高市はスタッフたちの会話に聞き耳を立てた。オフィスに届く手紙を注意深く読み、どんな立法作業が行われ調査をしているかを探り、その分野を勉強した。その成果をレポートにして全スタッフのボックスに放り込んだ。

「これは私の個人的な興味です。この数字が参考になるようでしたら使ってみてください」

そんなメモを添えた。自分が役に立てる人間であることをアピールしなくてはならない。

アメリカ人を驚かせた圧倒的な情報収集力

昭和63年(1988年)1月8日、パット・シュローダーはバーデン・シェアリング・パネルの会長に就任した。日本とヨーロッパに軍事費負担を強し いる専門部会のトップだ。

日本叩きのネタであった東芝機械ココム違反事件問題が少し下火になってきたため、今度は軍事費問題で叩くのが狙いだった。

「日本人の私にとって、とても興味がある問題なので資料を読ませてほしい」

高市の申し出に、軍事担当の補佐官のトムは顔をしかめながらも見せてくれた。資料に高市は数字の間違いを見つける。

「日本にとっていいことであれ悪いことであれ、不正確な数字はパット・シュローダーの信用に傷がつくでしょ。私に作り直させる気はない?」

高市の申し出にトムは応じた。

「日本大使館に連絡をしても、担当の者がいない、としか言わない」

トムは打ち明けた。日本の官僚組織に蔓延する事なかれ主義がアメリカにもあったのだ。

高市が日本大使館に出かけて最新の経済白書を求めると、昭和56年のデータを渡された。それ以降は保存されていなかった。最新の防衛白書をリクエストすると、英文のものが一冊しかない。「持ち出さないでください」と言われた。

資料を書き直したことが、高市にチャンスをもたらした。ボックスに放り込みつづけていたレポートの実績も評価され、コングレッショナル・フェローとして認められ、専用のデスクとコンピューターを与えられた。

高市は、パット・シュローダー・オフィスのスタッフになり、その後、下院小委員会の事務局でも働いたが、米国連邦議会コングレッショナル・フェローとして主に金融、中小企業政策、貿易問題を担当、平成元年3月に帰国する。
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松下幸之助と交わした最期の会話
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