「ダメなら押しかける」24歳の高市早苗、コネなしで米大統領候補へ直談判。運命を変えた一通の返事

政治家を志した24歳の高市早苗は、なぜ単身ワシントンへ向かったのか。松下幸之助の予見、ラグビージャージでの選挙手伝い、そして憧れの米女性議員への体当たりの交渉――。熱き修業時代のエピソードを紹介する。(画像出典:首相官邸ホームページ)

米大統領候補・シュローダーの衝撃

昭和62年初夏、アメリカ大統領候補選挙の演説が衛星放送により、日本へ送られてきた。高市はそれを奈良の実家で見ていた。

その画面に1人の女性が大写しになった。美しい。ファッショナブルで、話す姿も堂々としている。

その女性がアメリカ、コロラド州選出の民主党の下院議員であり、史上初の女性大統領候補でもあるパトリシア・シュローダーだった。

女であることを大切にして、女であることに甘えることなく、仕事を進めていく素敵な女性。それが高市の受けた最初の印象だった。

ただし、政策は高市と正反対。軍事委員会の大物で、日本叩きもしていた。

「この人のそばに行きたい」

すぐに高市は辞書を片手に、稚拙(ちせつ)な文章ながら英文で手紙を書いた。

「日本は女性の政界への進出は遅れています。あなたのような人の出現が待たれています。あなたのリーダーシップをそばで学びたい。私は現在、マツシタ・スクール・オブ・ガバメント・アンド・マネジメントの学生です。

日本のポリティカル・エキスパートを育てようとしている初めての試みの学校で、私は政治関係の仕事をしたいと思っています。きっとあなたの助けになるはずです」

本気で書いて、履歴書を同封しポストに投函した。

議員会館を片っ端から訪問。無謀な「直談判」の幕開け

来るか来ないかわからない返事を高市はじっと待っていることなどできない。もうワンプッシュするために奈良から東京へ行き、永田町の議員会館でコネを求めて走り回った。

当時のアメリカ大統領は共和党のロナルド・レーガン。

「どなたかアメリカの民主党に知り合いはいませんか!」

議員会館のドアを片っ端から叩いてまわった。

想像してみてほしい。まだ政治家でもない20代の女性が議員会館を訪れ、自分の個人的な頼みのために一室ずつ訪ねる。めざましい行動力とエネルギーだ。このあたりは松下電機の訪問販売で鍛えられたマインドなのかもしれない。

しかし、成果はない。超国際派と言われている代議士の事務所にも断られた。高市は諦めきれず、国際派のイメージにはほど遠い国粋派の代議士に相談した。

ところが、その議員は驚きながらも自民党国際局に問い合わせてくれた。そして、来日中の民主党顧問弁護士のミスター・ハンターヘイルを訪ねることを勧められる。

さっそく高市はハンターヘイルにアポイントメントをとった。運の良いことに、ハンターヘイルはパット・シュローダーの夫、ジム・シュローダーとハーバード・ロースクールの同級生だった。

ハンターヘイルは高市のたどたどしい英語を辛抱強く聞き、アメリカにテレックスを入れてくれた。こういう時の高市は執拗だ。もう一度自筆の手紙をパット・シュローダーのワシントンと地元コロラドのオフィスにファックスで送信する。

これでだめなら直接アメリカへ押しかけるしかない。さらに考え、アメリカ大使館の知り合いに電話で交渉した。

その電話口で次のように言われた。

「サナエ、CNNを見てごらん。今パット・シュローダーが泣いている。経済的な理由で大統領候補を降りたんだ。4年後の大統領選を戦うと言っている」

あわててテレビのスイッチを入れると、パットが夫にもたれかかって泣きながら大統領選撤退会見をしている。確かに大統領選への出馬は諦めたらしい。しかし、高市は大統領候補のパットにだけ興味があったわけではない。彼女自身に魅かれていた。
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「待っているわ」電報一通で掴んだワシントンへの切符
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