アニメ映画『ALL YOU NEED IS KILL』のキャラデザはなぜこうなった? 敬遠するのはあまりにもったいない理由

公開前にキャラクターデザインへネガティブな声があったアニメ映画『ALL YOU NEED IS KILL』。本編を見れば「納得できる」どころか、「これが良いんだ」と思える理由があったのです。(画像は筆者撮影)

大胆なアレンジにも確かな意義がある

そのようにキャラクターデザインも本編を見れば納得できることを前提にして、今回の『ALL YOU NEED IS KILL』は劇場で見てこその没入感、迫力の音響、アニメの躍動感を味わい尽くせる上に、明日への希望を持つことができる物語にも大きな感動がある、素晴らしい作品だったと思います。

何より、原作やハリウッド実写映画版と同じく、「殺されると時間が戻る」という設定から、まるでテレビゲームのように「前に起こったことから学び、工夫していく」という「(タイム)ループもの」の面白さをしっかりと押さえています。そして、同じ時間を繰り返すからこそ、逆説的に「何かが前に進むこと」の尊さが浮かび上がってくるのです。

さらに、物語の大胆なアレンジも効果的です。重要なのは、「原作ではヒロインだったリタを主人公にして、その孤独と成長を描いている」点でしょう。

原作のリタは、「戦場の牝犬(ビッチ)」と呼ばれるほどの「すでに強さを持っていた」女性でした。しかし本作では、異性生物がまだ調査段階にある状況も相まって、「自分の殻に閉じこもっている未熟な少女」へと変わっています。

彼女がどのように成長していくのかはここでは伏せておきますが、やがて出会うケイジの「ヘラヘラとした笑顔」への嫌悪が、結果的に2人の関係性に大きな影響を与えていくことだけはお伝えしておきましょう。ケイジもまた、原作からさらに「情けなさ」を感じさせるキャラに変更されていますが、それにも大きな意味があったのです。

それ以前の「無限のように続くループの地獄」の描写もあって、リタがある場面で涙を流す様は、『千と千尋の神隠し』で千尋がおにぎりを食べて泣き出すシーンも思い出して、見ているこちらも目頭が熱くなってしまいました。

さらに、豪華なボイスキャストも文句なしにハマっています。三上愛は声優初挑戦とは思えないほどリタの孤独や複雑な心理を繊細に表現しており、頼りない印象のあるケイジ役の花江夏樹との掛け合いも違和感がないどころか「お似合い」にすら感じられます。

もう中学生ヒコロヒーも出番は多くないながら、やはり個性的なキャラクターにマッチした好演でした。花澤香菜が演じる天才大学院生の「くだけた」雰囲気と愛らしさも見逃せません。

「本編を見ないと分からない」魅力がある

「本編を見ないとキャラクターデザインの意図や、作品や物語の真の魅力に気付けない」というのは、最近では『トリツカレ男』にも感じていたもどかしさでした。

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しかも、今回の『ALL YOU NEED IS KILL』は前述したように原作から設定の大胆なアレンジがあり、リタとケイジは原作からだいぶ印象の異なるキャラクターになり、それがデザインにも反映されていることは事実です。それが結果的に、予告編の印象だけで「見ない」選択をさせてしまうばかりか、「嘲笑の対象」になってしまったのは、とても残念です。

筆者としては、ただ一言、「本編を見てほしい」とお願いするしかありません。「原作そのままが正解」が求められることが多い昨今で、これほど個性的かつ、明確な意図をもって再構築されたアニメ映画は、今後ますます少なくなっていくかもしれません。

何より『ALL YOU NEED IS KILL』は、同じ時間の繰り返しを描くループものの作品でありながら、本編は「アニメだからこそできる表現」も多数あり、しかも「原作の芯を外さずに新たな魅力を付け加えた」ことで、「同じことの繰り返しにはしない」作品に仕上がっているのです。原作やコミカライズ版はもちろん、ハリウッド実写映画を見ていた人にとっても、新鮮な驚きと感動があることでしょう。

また、流血や殺傷など残酷な描写もあるものの、それらはG(全年齢)指定に収まる範囲です。上映時間は85分とタイトかつ見せ場の連続ですし、物語の筋もシンプルであるので、間口もとても広いと言えるでしょう。

難点としては、終盤で告げられるメッセージがやや直球すぎる点や、シンガーソングライターのAKASAKIによる主題歌の曲調の明るさが、本編のハードな印象とは(青春物語としての側面はあるにせよ)ややミスマッチに思えることが挙げられます。

それでも、本作が持つ価値と感動は、それらの難点を補って余りあるものですし、事前のキャラクターデザインへの批判を覆すほどのものだと思います。上映館は少ないですが、できる限り劇場で見届けてほしいです。
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