不合格からの一発逆転!「塾に行きたくない」と泣く息子と、母が掴んだ横浜市立南高附属中への合格

仕事と子育てに追われるシングルマザーとして忙しい日々を送る原田さんは、学習意欲に波のある息子に寄り添い続けました。悩みや葛藤を抱えつつも伴走をやめず、諦めない心を育みながら倍率4.17倍の難関校に合格。そんな親子の参考にしたい中学受験記。

本腰が入らない息子と向き合う日々は、試行錯誤の連続

——通塾開始は小3の冬から。家庭学習の習慣化も同時期にできましたか?

通塾を始めるまで、家での勉強は学校の宿題だけでした。通い始めてからは塾でも宿題が出るので、自然と家庭学習も習慣化していきました。

——通塾して学力面ではどのような変化がありましたか?

苦手科目の理科は、力が入らなかったようであまり伸びませんでしたが、算数は伸びて、受験本番の頃には得意科目になっていました。必ず答えが出るところが面白かったようで、積極的に取り組めたのがよかったようです。

国語と社会は平均点ぐらい。社会は歴史が得意で地理が苦手。単元で意欲に差がありました。息子の場合、好き・嫌いが勉強時間に比例するので、成績の伸びも費やした勉強時間に比例していました。

——好きな科目は積極的だけど、苦手な科目は避けがちということですね。

苦手な科目は勉強したフリをしていたり、宿題や自習に取り組むまで時間がかかることが多かったです。理科は特に本腰が入らなくて、「ただテキストを読むだけでもいいからやってみたら」と声をかけたり。目を通すだけでも理解できる単元は増えたので、声がけしてよかったなと思います

——科目や単元によって学習意欲に波がある点が、一番苦労したところだったんですね。

5年生頃まで「言えばやる、言わなきゃやらない」という感じはありました。塾も気が乗らないと「今日は行きたくない」とギリギリまで渋ったり、泣いて車から降りない日もありました。

今思えば、お互いに初めての受験でピリピリしていました。勉強を「やりたくない子ども」と「やってほしい母」。このかみ合わない気持ちをどうしたらいいんだろう?と悩むことは何度もありました。何もかもが試行錯誤の日々だったと思います。

——お子さんが「塾に行きたくない」と言ったときは、どう対処されていましたか?

具合が悪いときは、もちろん休ませていました。でも気持ちの問題だと感じたときは「1日行かなかったことで、わからなくなっちゃうよ」「とりあえず行って、具合悪かったら帰ってきな」と送り出しました。いざ塾に行けば、案外大丈夫だったりするんですよね。

授業内容が濃くなる5~6年生の頃は1日1日が勝負で、進度が遅れるとますます行くのが億劫になります。何より、休むクセがつくのを避けたかったんです。

——スランプというか、やる気が落ちたりする時期は?

塾の授業数が増えて、塾と学校の宿題で多忙を極めた6年生の1学期頃にありました。睡眠不足が続いて、授業中に眠くなり、明らかに勉強に集中できていないようでした。

バイオリズムでいうと、3~4年生の頃は「勉強しなきゃ」という自覚が薄く、5年生ぐらいでやる気が芽生えてきて、6年生の1学期にガクッと落ちた。6年生の夏期講習で持ち直して、そこで本気モードに入った感じでした。

——中学受験は長期戦。モチベーションを維持するのが大変ですよね。

本当にそうです。息子はゲームが好きなんですが、今はオンラインで友だちとゲームができる時代です。「ほかの子たちはゲームして一緒に遊んでいるのに、自分だけできない」とフラストレーションを感じているときもありました。

もともとゲームをしていい時間はあって、「宿題が多いときはゲームの時間を減らす」「課題が終わったらゲームをやっていい」など、ルールを調整しながら対応していました。最後は息子のほうが悟りの境地にたどり着いて、「受験が終わったらゲームをたくさんする」ことを目標に、勉強を頑張っていましたね。

——睡眠時間を削るほど忙しかった時期は、ゲームも含めてどうしていましたか?

睡眠と食事は、特に気を配りました。塾がある日は夕飯にお弁当を持たせて、「塾でご飯→帰宅→お風呂→勉強→ゲーム→寝る」というのが基本サイクル。

ゲームは、勉強が終わってから決められた就寝時間までならしていいとルールを決めて、睡眠時間を確保していました。食事については、栄養面はもちろん、息子が好きな献立を入れることを意識していました。

「特別なことを」というよりは、「基本の生活スタイルを崩さない」ことを心がけていましたね。

資料読解に作文演習。公立中高一貫校ならではの受験準備

——息子さんは「塾=新しいコミュニティ」にはすんなり溶け込めましたか?

最初のうちは「友だちはできないけど、勉強のために行っているから別にいい」みたいなことを言っていました。打ち解けるのに時間がかかる子なので、遊びではなく、勉強をしに行くという目的がはっきりしていて、気が楽だったのかもしれません。

塾の先生も息子の性格を「自分から質問はしづらいだろうな」と見越して、積極的に声をかけてくれたのがありがたかったです。先生は科目ごとに分かれますが、それとは別にケアしてくれる先生もいて、受験が終わるまでお世話になりました。

息子のやる気が落ちたとき、自信をなくしかけていたときにも、先生がキャッチアップして寄り添ってくれました。息子への対応について、私の相談に乗っていただいたこともあって、手厚いサポートには本当に感謝しています。

——塾について、学習面で効果的だった取り組みは何かありましたか?

生徒一人ひとりに目を配り、それぞれに合った勉強法を実践してくれる塾だったので、学習面は安心してお任せしていました。「とにかく問題を解く」「わからないことはそのままにしない」というわかりやすいアドバイスが、学力アップにつながったと思います。

わからない問題があれば、授業の前後に理解するまで教えてくれて、覚えやすい暗記方法なども教えてもらっていました。

——公立受験ならではの対策の難しさもありますよね。

公立受験は、普通の国算理社の科目テストではなく、「適性検査」という名のもと資料を読み取りながら要約・作文、回答する点が独特です。

知識の暗記だけで答えられる問題ではなく、与えられた資料を読み解く読解力と、論理的に考える考察力、そして文章で表現する力が問われる点が難しいと感じました。

塾ではひたすら資料を読み取り、作文演習に取り組む「公立中高一貫コース」があって、そこで対策していました。

——学校の成績表も評価対象でしたか?

学校の成績表も、調査書として評価対象になります。息子の場合、学校の成績で心配な点はありませんでした。運動会の応援団長などもしていたので、そういうところも評価になったかもしれません。

——公立受験に取り組むうえで「やっておけば良かった」と思うことはありますか?

「小さい頃からもっと本を読む習慣をつけておけば良かった」とは思いましたね。

適性検査に限らず、「いかに早く、正しく問題の文章を早く読み取るか」が大事ということに、あとから気がつきました。読書の習慣があれば、読解力や語彙力がどんどん養われます。

中学受験を考えている保護者には、早い時期から本を読ませることはぜひおすすめしたいです

——小さい頃から本を読んでこなかったことへのリカバリーのために、工夫したことはありますか?

「今からでも本を読みなよ」と、軽く読めて面白そうな本を渡したりはしたんですけど、本人が興味を示さなくて、うまくいきませんでした。その代わり、塾のテストや過去問をたくさん受けることでリカバリーした感じです。

——夏期講習の後に本気モードになったと聞いています。参加することでいい作用はありましたか?

いい効果があったと思います。夏期講習の前などの節目には「みんなで頑張ろう!」という決起集会のような集まりがあるんです。そこで気持ちが鼓舞されたり、受験対策用の赤本を見ながら「志望校の判定がどれくらいか」を生徒同士で話したり。仲間の盛り上がりに触発されて「自分も頑張らなきゃ!」と思うことが多かったようでした。

学校の同じクラスで、通っている塾は違いますが、同じ横浜市立南高等学校附属中学校を目指している子がいて、「お互いに頑張ろう」と声をかけ合えたのも励みになっていましたね。

子ども同士で情報を交換したり、切磋琢磨できる環境が、本気になるきっかけになるんだなと思います。
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4.17倍の壁を越えた、あまりにもドラマチックな逆転劇の結末
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