なぜ、一流のスパイは「上司の悪口」を言うのか? 口が堅い相手を「丸裸」にする会話術

弱みや愚痴は見せるべきではないというのがビジネスシーンでの常識。でも、もしそれが相手の信頼を得るためのツールになるとしたら? 本記事ではスパイに学ぶ、逆転のコミュニケーション心理術を紹介します。(サムネイル画像出典:PIXTA)

スパイは褒め言葉を具体的に使う

褒められて嫌な思いをする人はいない。褒め言葉は信頼関係の構築の第一歩であり、心理的な鍵穴に差し込むピンのようなものである。相手の言葉や態度から価値観を読み取り、褒め言葉を「戦略的に、でも誠実に」使うことで、非常に強力な対話ツールになる。

ただし、上から目線になると逆効果になるので注意しよう。

スパイでも褒め言葉の手法は、心理的な信頼関係を構築し相手の警戒心をやわらげるための有効なテクニックといわれている。次のような効果があるからだ。

褒め言葉の効用

1. 相手の自己肯定感を高める・承認欲求を満たす

人は自分が重要視している能力や特徴を認められると自己肯定感が高まる。その人が誇りに思っている部分をピンポイントで称賛すると、相手の自己肯定感を強化し、こちらへの好意的な感情を引き出す。

「その資料、すごく整理されていて、わかりやすいですね」→仕事の丁寧さを認める。

「話し方が落ち着いていて安心します」→人柄や態度への敬意になる。

2. 心理的な距離を縮める

スパイの交渉では、協力者との心理的距離を縮めることが重要だ。具体的な褒め言葉で相手に「自分の価値を理解してくれている」と感じさせ、心理的な壁を取り除く。

褒め言葉は、相手に対する好意のサインでもある。人は、自分に好意を持つ相手に自然と心を開きやすくなる(返報性の原理)。特に「努力」「知性」「人柄」など、内面的な要素を褒められると、相手は「自分を理解してくれた」と感じやすくなり、相手の警戒心を緩めることができる。

特に初対面では、「あなたに興味があります」というメッセージになるので、褒めるポイントを見つける。まずは、服装や持ち物、小物など、目につくところからでもよいだろう。

3. 相手の動機づけにつながる

具体的に褒められると、相手はその特徴や能力をさらに発揮しようと努力する。相手の協力を引き出しやすくなり、会話や情報収集の成果が向上する。

褒め言葉を受けると、脳内でドーパミンが分泌され、快感や安心感が生まれるそうである。つまり、「脳が心を開く準備をする」きっかけになるのである。

◆会話のポイント

・ 褒め言葉で相手の承認欲求を満たすと親近感を持たれる。
・ 褒め言葉は、具体的に使うとよい。

スパイに学ぶ「あざとい」会話術 ビジネスに役立つ諜報員の言葉の魔法
スパイに学ぶ「あざとい」会話術 ビジネスに役立つ諜報員の言葉の魔法

この書籍の執筆者:勝丸円覚 プロフィール
1990 年代半ばに警視庁に入庁し、2000 年代はじめから公安・外事分野で経験を積む。某国大使館への出向などを経て数年前に退職し、現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活動を行う。TBS 系ドラマ『VIVANT』では公安監修を担当。著書に『スパイに学ぶ「あざとい」会話術』(講談社)、『スパイは日本の「何を」狙っているのか』(青春出版社)、『中国人スパイ「秘密工作」最前線』(ビジネス社)他多数。

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