【縮む高校スポーツ】「花園予選なし」の衝撃。改革か、衰退か…日本のスポーツ界に残された道は?

全国高校ラグビー大会の島根県予選で異例の出来事がありました。参加校が石見智翠館のみの1校となり、予選なしで「花園出場」が決まったのです。少子化や競技人口の減少が進む中、チームスポーツは今後成り立っていくのでしょうか。(画像出典:PIXTA)

急速に進む少子化にどう対応していくべきか

現在、少子化の傾向はとどまることを知らない状況です。2024年に国内で生まれた日本人の子どもは68万6061人で、統計開始以来(1899年)初めて70万人を下回り過去最少となりました。2022年に80万人を切ったばかりで、急速に減少が進行しています。
 
スポーツ庁は「人口推計結果から部活動人口を推計すると、ピーク時の2009年から2048年には約30%が減少。チームスポーツでは半減以上となる競技も存在する」と予測しています。野球やサッカー、バレーボールなどの団体球技ではチームの存続が難しくなり、大会の参加校も減っていくことが確実な情勢です。今回の高校ラグビーの例は氷山の一角に過ぎません。

外国のような「マルチスポーツ」を模索

画像出典:筑波大による「地域における子供たちの多様なスポーツ機会創出支援事業」の報告書
画像出典:筑波大学による「地域における子供たちの多様なスポーツ機会創出支援事業」の報告書
このような危機感を反映して、スポーツ庁では「マルチスポーツ」という新たなスタイルを模索しています。小学校のジュニア年代から複数の競技に親しめるような環境を整備しようという提案です。
 
スポーツ庁から事業を委託された筑波大学では、諸外国の調査を進めています。報告書によると、アメリカやニュージーランドでは、季節によって活動する競技を変える「シーズン制」が浸透しています。一方、スペインやドイツでは1競技当たりの活動日が少なく、同時期に複数のスポーツを楽しめる環境があるといいます。

そうすることで、選手のバーンアウト(燃え尽き症候群)や、オーバーユース(使い過ぎ)による故障も予防できます。夏は水泳、冬はラグビーというように、1人の選手がさまざまな大会に出れば、競技人口の減少にも少しは歯止めがかかるでしょう。多様なスポーツに関心が広がり、活動を通じて交流の機会が増えることも期待されます。
 
日本では子どもの頃から1つのスポーツに取り組む「単一競技の専門化」が一般的です。しかし、日本的な環境は限界に来ているのかもしれません。スポーツ界全体が衰退しないよう、旧来の伝統や常識にとらわれない改革が求められています。 
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この記事の執筆者:滝口隆司
社会的、文化的視点からスポーツを捉えるスポーツジャーナリスト。毎日新聞では運動部の記者として4度の五輪取材を経験。論説委員としてスポーツ関連の社説執筆を担当し、2025年に独立。著書に『情報爆発時代のスポーツメディア―報道の歴史から解く未来像』『スポーツ報道論 新聞記者が問うメディアの視点』(ともに創文企画)。立教大学では兼任講師として「スポーツとメディア」の講義を担当している。
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