50代で「肩書」を捨てられない人の末路。定年後に一気に老け込む「会社人間」の共通点とは

50代で「肩書」を捨てられない会社員は、定年後に一気に老け込む? 和田秀樹氏の書籍から、退職後も「先生」と呼ばれたがる人々の末路と、無意識の会社依存度を暴く「休暇実験」を紹介。定年前に捨てるべき古い価値観とは?(画像出典:PIXTA)

老後シミュレーションは早いほど価値が高まる

ここまで読んで「私は肩書などにとらわれていないから大丈夫」と思っている人もいるでしょう。いえいえ、日本人の多くは会社や社会的地位に自分が思っている以上にとらわれています。

たとえば、みなさんは仕事と関係ない場で自己紹介をするときにどのように自分を語りますか? 

勤めている会社や役職を話すのではないでしょうか。具体的な社名や役職を出さなくても、業界や会社での職種について触れる人は多いはずです。無意識のうちに会社に依存しているわけです。ここを見誤ると定年後の人生も「こんなはずではなかった」と後悔しかねません。

ということを、みなさんの先輩の一人としてはっきり申し上げておきます。

もし自分が「仕事になんかとらわれていない!」「とらわれているのかどうかよく分からない」というのであれば、試しに今のうちに一度老後を実際にシミュレーションしてみることです。

みなさん、有給休暇は消化していますか? 「あまり消化していないな」という人は、すでに仕事にとらわれている確率がかなり高いです。たとえば有給休暇をまとめて1週間以上、できれば1カ月くらい取ってみましょう。

「暇でつらい」なら危険信号。1週間の休暇で分かる会社依存度

ここで重要なのは、予定をいれないことです。まとまった休みなので温泉に行ったり、海外旅行に行ったり楽しい計画を立てたいところですが、あえて何もしないという状態を作ります。

ただ仕事をしないだけ、という日常に身を置いてみましょう。可能であれば仕事関係の連絡も絶ちます。少なくとも自分から会社の同僚などに連絡するのは止めましょう。仕事以外で自分が誰とつながっているかが明確になるはずです。

3日くらいは仕事がない日常が新鮮でも、1週間、10日もすると暇でどうしようもなくなり、周囲、さらには社会から取り残されたような気持ちになってくる人が多いでしょう。

反対に、趣味に没頭できたり、有り余る時間がまったく苦にならなかったりした人は、すでにライフスタイルは仕事にとらわれていない人と言えるかもしれません。

この老後シミュレーションはいろいろな気づきを与えてくれるはずです。働いているとなかなか向き合えない自分自身を見つめ直すことはこれからの人生の指針になるはずです。

「家にいるよりは働いているほうがいいな」と感じれば、60歳でリタイアするのは賢明ではないかもしれません。どのように働くかについて思いを巡らすきっかけになるはずです。

反対に「会社に行かなくてもまったく暇をしないし、楽しい。思う存分に時間を好きに使って、趣味を究めたい」と考えたらば、ほどほど働いて趣味に没頭する人生を選択するのもありでしょう。

また、「自分は仕事人間ではない。プライベートも充実している」と思っていても、そのプライベートが会社の人間関係に依存している人も少なくないはずです。カラオケや麻雀、ゴルフが趣味でも、メンツはみんな会社の同僚や取引先というのはよくある話です。これを機に、老後を見据えて、新しい交流を始めるのもよい選択です。

先日、ある80代の男性とお話しする機会がありました。その方は定年後、週3日ほどタクシーの運転手として働いているそうです。

「ぼちぼち働くのが性に合っているんだよ」と、とても嬉しそうに話してくれました。「家にいるよりも、外に出て人と接することで、気持ちが若々しくいられる。おカネは二の次さ」と。こんな軽やかな生き方も素敵です。

何歳からでも人生は修正可能です。ただ、早ければ早いほうがいいでしょう。50代になれば社会のしくみも理解していますし、自分の性格や向き不向きも把握しているはずです。体力もまだあります。第二の人生の針路を定めるには最適な年代です。
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この書籍の執筆者:和田秀樹 プロフィール
1960年大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒業。
東京大学医学部付属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修、国立水戸病院神経内科および救命救急センターレジデント、東京大学医学部付属病院精神神経科助手、アメリカ、カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院である浴風会病院の精神科を経て、現在、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長、 立命館大学生命科学部特任教授 。
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