戦前のアメリカブーム→日米戦争が開戦すると……
実は戦前の日本はアメリカ文化が大ブームだった。多くの日本人がハリウッド映画やジャズ、ファッションのとりこになり、アメリカの豊かな暮らしや文化に憧れたのである。それが1940年、日本の大陸侵攻をやめさせようとアメリカが経済的圧力をかけていくと、“手の平返し”で反米ムード一色となる。日米戦争が開戦すると、あれほど憧れたアメリカの映画や音楽、そして言語まで全て「敵」とみなして禁止。「鬼畜米英」として憎悪の対象となった。しかし、この世論もわずか5年ほどであっさり“手の平返し”される。
1945年8月に敗戦した日本で、アメリカは軍国主義から解放してくれた恩人と称賛され、あっという間に戦前のようなアメリカブームが起きる。その象徴が、360万部という信じられない勢いで売れ、戦後最初のベストセラーとなった『日米会話手帳』(科学教材社)である。
「天皇陛下バンザイ」と叫んで命を投げ出して戦っていた憎い“敵”なのに、わずか数カ月で“手の平返し”し、「民主主義バンザイ」と叫んで、彼らの文化・言語を必死に取り込もうとする。これは世界的にみてもかなり珍しい現象だ。筆者も若い時、反米ゲリラや反米運動が盛り上がっている中東や南米の人々と話をすると、「なんで日本人は何百万人も殺したアメリカと仲良くできるの?」とよく質問された。
日本人の「無常観」を生み出したのは自然災害?
この“謎過ぎる日本人”を説明するため、よく引き合いに出されるのが「自然災害が多いゆえの無常感」だ。ご存じのように、この国は地震、台風、水害などの自然災害が多い。つまり、せっかく田畑を耕してコミュニティーを拡大しても定期的に「リセット」されてしまうということだ。これが戦争や侵略ならばそれをもたらした者を呪えばいいが、自然災害の場合は誰にも怒りをぶつけることができない。
そこで生まれたのが、日本人の「過去は過去として忘れて、とにかく今を受け入れて前に進んでいくしかない」という無常観だ。そして、「生きるためには忘れていくしかない」という生き方を何代も繰り返しているうちに、「熱しやすく冷めやすい国民性」が出来上がったのではないかというのだ。
個人的には賛同できる。それが伺えるデータがあるからだ。



