子どもが自然に学びたくなる家庭環境をつくる「戦略的ほったらかし教育」。この教育法を提唱する家庭教育コンサルタントの岩田かおりさんによると、実践しても9割以上の保護者が「うまくいかない」と悩んでいるそうです。
よい方法を頭ではわかっていても、つい反対のことをしてしまう……それはなぜでしょうか。岩田さんの著書『自分から学べる子になる 戦略的ほったらかし教育』から、その原因や解決策をご紹介します。
親の心が安定すれば、子育ての悩みの9割は解決
戦略的ほったらかし教育で、子どもの学び体質をつくることと同様に大切なことは、「親の幸せ体質づくり」です。そのために、まず自分の「嫌いなこと・苦手なこと」「好きなこと」をしっかりと理解することが、その第一歩になります。子どもの学び体質をつくる環境整備を実践するだけで家庭教育がうまく回り出せばいいのですが、私の講座にお越しいただくお母さんの9割以上が、この方法をお伝えしてもうまくいかないという悩みを抱えます。
「学びの仕掛けをちりばめても、子どもが逃げてしまってうまくいきません」「思い通りにいかないと、子どもを叱ってしまうので自己嫌悪が大きくなります」「大事だとわかっているのですが、やる気が出ません……」といった課題に直面しています。
じつは家庭教育がうまくいかない理由は、子どもではなく親自身にあります。
親が感情のジェットコースターに乗ってしまい、不安やあせりが爆発していることが原因となり、うまく回らなくなるのです。親自身が不安やあせりを手放して幸せ体質にならない限り、せっかくの子どもの学び体質をつくる環境整備が有効に作用することはありません。
不安やあせりを手放すために必要になるのが、親の自分理解。
自分の現状を客観的に把握できれば、自分の考え方の癖や陥りやすい感情の傾向の分析ができるようになります。すると、とっさのときに落ち着いた対応ができるようになるのです。
子育ては「思わぬこと」の連続。想像していなかったことが、たくさん起きます。
自分理解を深めておくと、その際にも慌てずに、感情にのまれずに、適切な対処を考えられるようになります。結果的に子育てに自信を持つことができ、漠然とした不安やあせりが減って幸せ体質になっていきます。
さらに、子どもをある程度ほったらかしにすることは、親がどっしりと安定していないと難しいものです。
なぜなら、ほったらかしておくには、子どもを信頼して待つことが欠かせないからです。子どもを待つことは、思っている以上に大変なこと。親の軸がしっかりして、感情が安定していることが必須条件になります。
親の不安やあせりがなくなるだけで、子育ての9割は解決するといっても過言ではありません。気持ちが安定していれば、さまざまなことがうまく回り始めます。
あせりや不安は、自分がはまっている沼に由来する
では、なぜ親は不安やあせりにのみこまれてしまうのでしょうか。それは、知らぬ間に「沼」にはまっているからです。「この子、電車ばかりで大丈夫?」「言葉が遅くない?」——先生やママ友、ネットの情報に振り回され、「こうせねばならない」という感情が強くなって子どもを管理したくなる。この、知らぬ間に自分がとらわれている恨みや思い込み、混乱といった感情が「沼」です。
沼にはまっていない人は軽やかに生きており、子育てに深く悩むことがほとんどありません。しかし現代のお母さんの多くは沼にはまっています。
私がこれまで7000人以上のお母さんと向き合ってきた経験から、沼には7つのタイプがあることがわかってきました。
おそらく、子育てに悩みを抱えるほとんどの人は、以下の7つの沼のいずれか、あるいは複数にはまり込み、苦しさを抱えているのではないでしょうか。
これらの沼から抜け出すためには、まず自分がどの沼にはまっているのかを自覚することが大切です。次の「沼チェックリスト」で確認してみてください。



