『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』に見るK-POPカルチャーの拡大
ゆりこ:K-POPがすでに“韓国だけのもの”ではなくなっていることを示す作品ですよね。実際にそう論じる韓国の記事も読みました。キャラクターと設定自体はかなりファンタジー色が強いのですが、細かい部分がリアルです。それに架空のグループである「HUNTR/X(ハントリックス)」と「サジャボーイズ」の曲が現実世界の米ビルボードチャート上位に入るという現象も興味深いです。近年バーチャルアイドル「PLAVE」がブレークしたこともあり、K-POPアイドルグループの範囲が拡大しているように感じます。矢野:PLAVEはバーチャルアイドルながら、芸能事務所に所属し、作詞・作曲、振り付けの制作、音楽番組への出演など、実在するK-POPアイドルと同じように活動しているのが特徴的ですよね。「HUNTR/X(ハントリックス)」と同じように楽曲が音楽チャートの上位にランクインしていますし、リアルとバーチャルの境界線を飛び越えて、新しいシナジーがどんどん生まれているのを感じます。『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』で描かれる自分とは違う立場の存在との争い、そして反発しながらも理解し、共栄を図るといったテーマは、アーティストとファン、ライバルアーティスト同士の関係性、さらには今の社会情勢をも反映しているのかな? と思ったりもしました。
ゆりこ:そう見るとなかなか深い。1時間半でサクッと楽しめるところもいいですよね。夏休みに見るにもぴったりです。他にも矢野さんがこの半年でハマった韓国作品、ありましたか? 矢野:ドラマ『いつかは賢いレジデント生活』が面白かったです。メインキャラクターの1人が「元アイドル」という設定で「HI-BOYZ(ハイボーイズ)」という架空のグループが出てくるのですが……本当に音楽番組に出演しちゃったんですよ! しかも僕の好きなTOMORROW X TOGETHERのスビンさんとヨンジュンさんがメンバーとして出演していたんです。架空のアイドルでありながら活動は本格的、というのは先ほどお話しした 『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』との共通点ですね。そして日本のドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』のエンディングテーマも思い出しました。キャストがカッコよく歌う、あの感じ。 ゆりこ:ドラマと音楽がうまく融合できている作品は名作多し! 私も『M COUNTDOWN』でのHI-BOYZのステージを見ました! 俳優のカン・ユソクさん、頑張っていましたよね。役柄もとてもよかった。これから注目されていくように思います。矢野さんは『いつかは賢いレジデント生活』のどんなところが刺さりましたか?
矢野:前作の『賢い医師生活』も楽しかったのですが、今回の主役はレジデント。僕と同じ年代の若手の話だったので、職業は違えども共感できる部分が多かったです。そして主人公たちのことを周りの大人がしっかり叱るじゃないですか。普段は優しい先輩のク・ドウォンも、いざとなると厳しい言葉をかける。今の日本だったら言いづらいことだなと思い、それが新鮮でした。
大人世代がハマった『賢い医師生活』、若手世代の心をつかむ『いつかは賢いレジデント生活』
ゆりこ:なるほど。前回の『賢い医師生活』は大人世代の抱えるモヤモヤや人生の転換期を描いて支持されたのに対し、今回の『いつかは賢いレジデント生活』は若年層の心をつかんだのかもしれません。私は世代的に『賢い医師生活』のほうが共感できましたが、『いつかは賢いレジデント生活』を見ながら「最近の20代はそうなのかあ」と気付きがあったり、激務で常に寝不足だった新人編集者時代を思い出したりしました。矢野:どの世代も違った楽しみ方ができる作品なのだと思います。あとドラマの中で「初任給で親にインナーを買う」とか「誕生日にワカメスープを飲む」とか韓国ならではの文化も出てきて興味深かったです。
ゆりこ:そうそう、日本にはない文化ですよね。初めてお給料をもらったら両親に「赤い肌着」をプレゼントするという慣習は、1950年代に韓国で(西洋風の)肌着が売られ出したころに始まったものだと聞きました。
当時の肌着はすごく高価なもので、親の健康を願う意味も込められていたそうです。ちなみに、なぜ赤色なのかというと、当時はまだ染色の技術が発達しておらず、赤が一番染めやすかったからという一説も。誕生日のワカメスープも独特ですよね。逆に、韓国で「絶対ワカメスープを飲んではいけない日」があるってご存じですか?
矢野:えっ……。想像がつかないです。縁起が悪いケースもあるってことですか?
ゆりこ:正解は「試験の日」です。ワカメってツルッとしていますよね。“ツルッと滑る”、つまり試験に落ちるということでタブーなのです。韓国ドラマや映画を見ていると、自然と韓国文化に触れて学べますよね。
矢野:きっと韓国の方が日本の映画やドラマを見て「どういう意味?」と不思議に思うシーンもあるでしょう。話は変わりますが『賢い医師生活』の先生たちが特別出演で『いつかは賢いレジデント生活』に時々出てくるのもうれしかったです。きちんと世界がつながっているんだなって。
ゆりこ:そうそう、大人たちも少しずつ成長していて、自分たちの人生を進めている様子がよかったです。もし次のシーズンがあるなら、医師生活の先輩医師メンバーもレジテントメンバーも出てくるといいなあ。マーベル映画の世界みたいに。
矢野:手術シーンや医療現場のシーンは少なめですが、人間模様を丁寧に描くことでとてもドラマチックになる、まれなメディカルドラマだと思います。
ゆりこ:実は私、メディカルドラマの手術シーンや血が苦手なのですが『賢い医師生活』シリーズだけはしっかり見られる。
矢野:僕は手術シーン見ながらご飯を食べられるタイプなのでメディカルドラマは得意ですが(笑)。中でも『いつかは賢いレジデント生活』は2025年上半期のイチオシの作品だと思います。
ゆりこ:同意です! そして2025年の下半期も気になる作品がたくさん公開される予定です。8月公開の映画『大統領暗殺裁判 16日間の真実』(8月22日公開)が気になっています。
矢野:僕は9月12日にNetflixで独占配信がスタートする韓国ドラマ『ウンジュンとサンヨン』が気になっています。今回詳しくご紹介できませんでしたが、僕がこの上半期に見てとても感動した映画『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』でク・ジェヒ役を演じたキム・ゴウンさんが出演するとあって、配信開始を心待ちにしています。2025年下半期も引き続きどんな作品に出会えるのか楽しみです!
【ゆるっとトークをお届けしたのは……】
K-POPゆりこ:韓国芸能&カルチャーについて書いたり喋ったりする「韓国エンタメウオッチャー」。2000年代からK-POPを愛聴するM世代。編集者として働いた後、ソウル生活を経験。
編集担当・矢野:All Aboutでエンタメやメンズファッション記事を担当するZ世代の若手編集者。物心ついた頃からK-POPリスナーなONCE(TWICEファン)&MOA(TOMORROW X TOGETHERファン)。



