特に3歳から10歳頃の子どもは、自分の体への好奇心からさまざまな行動を見せるため、それが「一般的な発達」なのか「何らかの異変のサイン」なのか、判断に迷うことも少なくありません。
「子どもが性的に思える動きをしている」「自慰行為のようなことをしているのを見てしまった」「どこで覚えたのかわからない言葉を口にする」といった相談は、幼稚園や保育園でもよく寄せられます。
こうしたとき、保護者はどのように対応すればよいのでしょうか。
この記事では、『子どもを守る新常識 性被害 セーフティガイド』(キンバリー・キング 著)を一部抜粋・編集し、幼稚園教諭として数多くの事例を見てきた執筆者の視点から、子どもの性的発達において「一般的」とされる行動と「要注意」な行動の見分け方、そして適切な対応方法をご紹介します。
幼い子どもの行動を理解するための大前提
子どものからだの安全を守ることには、さまざまな要素がかかわっています。子どもの発達、性、性的発達、セクシュアリティについて、何が「一般的」なのかを知っておくことも、大切な要素の一つです。
ここでは、3歳〜小学校低学年の幼い子どもを念頭に、幼稚園教諭としてよく見聞きする事例をベースに解説していきます。
個々の事例の検討に入る前に、わたしの中での大前提をお伝えしておきたいと思います。わたしは、幼い子どもが「性的な意図」で行動することはなく、その動機はすべて「好奇心」にあると考えています。
幼い子たちによく見られる、自分のからだを触るという行動も「からだのいろいろな部分について知りたい」「触ったときの感覚を探求したい」といった、自然な好奇心によるものだということです。
それでは、保護者からの「よくある相談事例」にお答えしていきましょう。「好奇心は、自然なものです。幼い子どもは、自分と他者との違いに気づくと、ごく自然な反応として好奇心を発揮し、探索行動に出ます。性や性差に対する自然な好奇心を、正常で健全なものとして親が受け入れることで、子どもの中に性をポジティブなものとして捉えるための土台を築いてあげることができます」
― サンドラ・キャロン(メイン大学・家族社会学教授)
相談1. どこで覚えてくるのか、性的に思える動きをしたり、性的な言葉を口にしたりすることがあります。
回答:要注意!性的なしぐさや性的な言葉を伴う行動の変化は、幼い子にはあまり見られるものではありません。
YouTubeを楽しんでいて、たまたま性的なシーンのある動画を見てしまったり、何かの拍子にポップアップ広告をクリックして性的なコンテンツのあるサイトに誘導されてしまったりしたのかもしれません。その変化が起きた原因を知るために、お子さんに話を聞く必要があります。
本人に質問するときは、落ち着いて、優しい態度で臨みましょう。質問の内容としては、「そのお歌(その言葉)はどこで習ったの?」「その動きは何の動き?」「その動きはどこで習ってきたの? 映画で見たのかな?」などが考えられます。本人を落ちこませてしまうことのないようにしてください。
「(その言葉や動きについて)お話ししたいことはある? それとも、何か聞きたいことがあるかな?」。そんな言い方もできます。自分が見聞きしたことを、意味もわからず真似するのは、子どもにはよくあることです。
お子さんからの聞き取りの結果、学校や幼稚園・保育園でそうした言動を見聞きしたとわかった場合は、そのことを先生にも共有しましょう。学校や園が対策を検討してくれれば、お子さんはもちろん、ほかの子どもたちにも、それ以上の悪影響を防げるはずです。