学校教員による性犯罪も…。3歳から始められる「シャボン玉メソッド」で性被害の予防を

学校教員による性犯罪が多発する中、子どもをどう守ろうかと不安に思う保護者もいるでしょう。専門家は「性的同意」の理解が予防につながると指摘。その第一歩として、シャボン玉の比喩で「同意」を子どもに伝える方法をご紹介します。(画像出典:PIXTA)

プライベートパーツと「同意」

子どものプライベートパーツにかかわることについては、それが何であれ、子どもだけで同意することはできません。本人の同意に加え、保護者の同意が必要です。子どもの病院受診は、それを示す重要な例の1つです。

お子さんを医者に診せるとき、思い出してほしいことがあります。

「二人きりの状況をつくる」ことも、グルーミング(※性的な接触を図る目的で大人が子どもを手なずけること)の手口の1つであるということです。多くの親は、医師という権威ある立場にある相手を、盲目的に信じてしまいがちです。

しかし、親からの信頼のもと、子どもと二人きりの状態で子どもに接触できる機会を持つこともできるこの立場は、加害者が職業として選ぶにも魅力的なものなのです。子どもの年齢を問わず、保護者は、診察室に同席するようにしましょう。

医師は症状を確認するためにプライベートパーツを診察することもあること、しかし、それは保護者が同じ部屋にいてその診察に同意し、その子自身も了承したときに限られるということを、子どもたちに説明することができます。

たとえ医師でも、プライベートパーツにかかわることは親の同意を得なければならないと、お子さんに示すチャンスです。

「いやだ」を言える・受けとめる

「同意」について理解を深めていくには、子どもたちが自分の感情を認識できるようにし、嫌なときにはきっぱり「いやだ」と言えるよう教えておくことが不可欠になります。

わたしが好きなのは、子どもが「いやだ」と伝えるときに使えるさまざまな言い方を、本人たちと一緒に考えてみることです。あわせて「いいよ」のさまざまな言い方を考えてみるのもいいですね。

このとき、「いやだ」を伝えられたらどう受けとめるべきかも教えましょう。「そうかな」は「いいよ」の意味にはならないこと、「いやだ」が示されたらそこで頼むのは終わりにする(「だめ」と言われたらすんなり受け入れる)ことは、話しておきたい点です。

からだとその働きについて学ぶことが、子どもにとってとても魅力的であることは確かです。子どもたちが自分のからだ、相手のからだに好奇心を持つのは一般的なことで、プライベートパーツを観察することや、さまざまな疑問を持つことも、発達上適切なことです。

しかし、そうであっても他人の「からだを包むシャボン玉」は尊重しなければなりません。相手に「いやだ」と言われたときは、それを受け入れなければならないのです。

幼いうちから「いやだ」と「いいよ」の表明と受けとめ――「同意」の実践――を意識させていくと、それはその子のアイデンティティの一部となります。自分の思いをしっかりと伝えられる人間になるのを助けてくれるのです。

「同意」の実践が身についているかは、ほかの子と遊んでいる姿を見ればすぐにわかるものです。追いかけっこをしたり、ブランコを押したり、砂場で一緒に遊んだりする前に、きちんと相手の子に許可を求めているでしょうか? 「いやだ」と言われたときには、それをすんなりと受け入れていますか?
 
お子さんが「同意」を実践する姿を目にしたら、そのたびにしっかりと褒めてあげてください。

※包括的性教育とは、従来の「生理や妊娠の仕組みを教える」だけの性教育とは異なり、子どもの発達段階に応じて幅広い内容を体系的に学ぶ教育アプローチのこと

※性的同意とは、性的な行為において、関わる全ての人が「この行為を本当にしたい」という気持ちを持っているかを、お互いに確かめ合うこと
子どもを守る新常識 性被害 セーフティガイド
子どもを守る新常識 性被害 セーフティガイド
キンバリー・キング(Kimberly King) プロフィール
ウィーロック大学(現ボストン大学ウィーロックカレッジ)大学院教育学修士(M.S.Ed.)。自身が性被害にあったことをきっかけに、メイン大学在学中から、サンドラ・キャロン博士のアシスタントとして性被害防止活動にかかわる。幼稚園教諭として働きつつ、非営利組織「ダークネス・トゥ・ライト(Darkness to Light)」の認定ファシリテーターを務め、児童性被害予防教育の専門家として活動している。近著に『子どもを守る新常識 性被害 セーフティガイド』(東洋館出版社)がある。
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