なぜ「自由すぎる校風」の渋幕が東大合格トップ校に?生徒が“勝手に伸びる”秘密を教育ライターが解明

東大合格者数14年連続トップ10入りという成果を挙げている渋谷教育学園幕張中学校・高等学校(渋幕)。チャイムが鳴らず、校則もほとんどない自由な環境で、子どもたちが自ら学ぶ理由とは?(画像出典:MARODG / PIXTA)

「挑戦しなさい」「勉強しなさい」といっても効果がない理由

渋幕の校舎の1階。生徒が行き交うスポットに、「挑戦は自己認知の具現(ぐげん)」と鋭くつきさす文字が掲げられていました。

「挑戦は自己認知の具現」

時間をかけて、この言葉をゆっくりと咀嚼(そしゃく)してみてください。

私たちは「挑戦が大事だ」と思っているし、「挑戦しろ」と安易にいってしまいがちです。

しかし、挑戦が何から生まれるのかといえば、主体性からです。自分が乗り気ではないのに、親や先生に「挑戦しろ」といわれたからという理由でやったことは、挑戦ではありません。その場合、試みが失敗に終わると、「◯◯にいわれたからやったのに」と誰かのせいにしようとします。

「勉強しなさい」というのも同じことです。大人は、子どもの将来を案ずるあまり、つい「勉強しなさい」といってしまいがちです。それは私たちがそういわれ続ける環境で育ったことにも由来します。

「勉強しなさい」という言葉には、「勉強=せねばならないもの」というニュアンスが含まれています。しかし、果たして、勉強とは誰かにいわれて渋々行うようなものなのでしょうか……?

探究学習で「問い」を立てられない子どもたち

渋幕の廊下に掲げられた「挑戦は自己認知の具現」という言葉には、まず自分を理解した先に、挑戦があることを啓示しています。

私が、さまざまな学校現場を訪れる中で頻繁に耳にするのが、「探究学習において子どもが『問い』を立てられない」という先生方のお悩みです。

現在、小学校から高校まで探究的な学びが重視されています。しかし、その学習のスタートラインである「問い」が生まれてこないというのです。

「問い」が立てられないことは、社会や地域に対する課題(問い)を自分ごととして見つめることができない、ということを意味します。これはそのまま、イノベーションが生まれづらい、現在の日本社会の問題に直結するのです。

「問いが立てられない」ことと「挑戦ができない」ことには同じ背景があります。

子どもたちが自分の心の動きや興味関心に蓋をしてしまっている、あるいは「こんな興味(好き)を学校で出してはいけない」と思っている。こうして、自分の思いを見ないようにし続けた結果、本当に自分の心にあるものがわからなくなってしまうのです。
渋幕だけが知っている「勉強しなさい!」と言わなくても自分から学ぶ子どもになる3つの秘密
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佐藤 智 プロフィール
横浜国立大学大学院教育学研究科修了。出版社勤務を経て、ベネッセコーポレーション教育研究開発センターにて、学校情報を収集しながら教育情報誌の制作を行う。その後、独立。全国約1000人の教師に話を聞いた経験をもとに、現在、学校現場の事情をわかりやすく伝える教育ライターとして活動中。最新刊は『渋幕だけが知っている「勉強しなさい!」と言わなくても自分から学ぶ子どもになる3つの秘密』(飛鳥新社)。
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