
(今回の質問)
ボーナス制と年俸制、どちらの方が得ですか?
(回答)
生活の安定や税負担の面では「ボーナス制」の方が有利なことが多いですが、自分の努力次第で高収入を得やすい「年俸制」にも魅力があります。それぞれに向き不向きがあるため、自分の働き方やライフスタイルに合った制度を選ぶことが大切です。
どういうことなのか、以下で詳しく解説します。
ボーナス制(月給+賞与)と年俸制の違いとは?
給与の支給方法には、大きく分けて「ボーナス制(月給+賞与)」と「年俸制」の2種類があります。ボーナス制とは、毎月の基本給や諸手当に加えて、年に1〜2回の賞与(ボーナス)が支給される制度です。月給部分は年齢や勤続年数などが加味され、比較的安定していますが、賞与は会社の業績や個人の評価によって変動します。そのため、毎月の生活費は月給で賄い、賞与は貯蓄や特別な支出に充てるという人も多いでしょう。
ボーナス制の場合、賞与がモチベーションの維持につながるメリットがありますが、業績次第では減額や不支給となる可能性もあるため注意が必要です。
一方、年俸制は年間の給与総額が成果や業績に応じてあらかじめ決まっており、それを12カ月(または14、16カ月など)に分けて支払う制度です。賞与は年俸額に含まれる場合と、業績に応じて追加支給される場合があります。
成果主義の企業に多いのが特徴で、若手社員であっても年収アップが見込め、期間中の減給が少ないため資金計画を立てやすいのがメリットです。ただし、業績や成果が給与額に直結するためプレッシャーを感じやすく、成果を出したとしても反映されるのは翌年なので昇給までにタイムラグがある点はデメリットと言えるでしょう。
年俸制を導入する企業が増えている理由とは?
近年、ベンチャー企業や外資系企業などを中心に、年俸制を採用する企業が増えています。主な理由は、成果主義を重視したいという経営方針や、人件費の管理をしやすくしたいという目的です。年俸制では、労働時間よりも成果や業績に応じて報酬を決定するため、実力と才能がある人が高収入を得やすい構造になっています。また、企業にとっては年間の人件費などが事前に把握でき、予算を立てやすいというメリットがあります。
年収が同じなら税金や社会保険は変わらない?
給与体系が違っても、年収が同じなら税金負担額は変わらないのでしょうか?結論から言えば、税金や社会保険料はボーナス制でも年俸制でもほとんど差はありません。ただし同じ年収であっても、「内訳」によっては、社会保険料に差が出ることがあります。 特に、ボーナスの金額がとても大きい場合は、ボーナス制の方が少しだけお得になる可能性もあります。
社会保険料は、「標準報酬月額(毎月の給料)」と「標準賞与額(ボーナス)」という、それぞれの上限額をもとに計算されます。この上限額が、月給とボーナスでは異なるため、ボーナスが一定額を超えると、支払う社会保険料が少なくなることがあるのです。
例えば、東京都在住40代男性・年収600万円(協会けんぽに加入)のケースで比較してみましょう。
※各保険料率は2025年度のものを適用(健康保険料9.91%・介護保険料1.59%・厚生保険料18.3%・雇用保険料5.5%)
※雇用保険料以外は会社と折半となるため、社会保険料率は20.4%で計算
Aさん ボーナス制:月給30万円+賞与240万円(120万円×年2回)
月給30万円×20.4%=6万1200円/月
賞与120万円×20.4%×2回=48万9600円/年
社会保険料合計=122万4000円
Bさん 年俸制:月給50万円(賞与なし)
月給50万円×20.4%=10万2000円/月
社会保険料合計=122万4000円
上記の計算から分かるように、この場合はボーナス制も年俸制も社会保険料に差はありません。
しかし、同じ年収でもボーナス制のAさんの賞与額が標準賞与額の上限(年間573万円、月150万円)を超えている場合はどうでしょう。
Aさん ボーナス制:月給20万円+賞与360万円(180万円×年2回)
月給20万円×20.4%=4万800円/月
賞与150万円(上限額)×20.4%×2回=61万2000円/年
社会保険料合計=110万1600円
年俸制のBさんと比べて社会保険料が12万2400円安くなります。
つまり、同じ年収額でも、ボーナスが非常に多いボーナス制の給与体系だと、社会保険料が少しお得になる可能性があります。これは、社会保険料の計算に使われるボーナスの金額に上限が設けられているためです。
そのため、年収だけでなく、月給とボーナスの内訳にも注目することが、実質的な手取りを把握する上で重要です。
この記事の筆者:高瀬 紗季
「難しい金融の話を、やさしく、わかりやすく。」をモットーに活動するフリーライター。ファイナンシャル・プランナー3級の資格を活かし、保険、家計管理、資産形成、NISA・iDeCoといった暮らしに密着したテーマを得意としています。初心者向けマネーコラムから大手金融系メディアまで、多数の媒体で掲載実績あり。
「難しい金融の話を、やさしく、わかりやすく。」をモットーに活動するフリーライター。ファイナンシャル・プランナー3級の資格を活かし、保険、家計管理、資産形成、NISA・iDeCoといった暮らしに密着したテーマを得意としています。初心者向けマネーコラムから大手金融系メディアまで、多数の媒体で掲載実績あり。