特にフランスは、戦後1945年から1975年までの「栄光の30年」と呼ばれる高度成長期に、労働力を補うために大量の移民を受け入れてきました。それから半世紀以上が経った今では、移民2世、3世の人口も各地で増加しています。
10人に1人が移民のフランス

移民の出身地別で見てみると、移民の48%がアフリカ地域出身、32%がヨーロッパ出身、14%がアジア出身、6%がアメリカ・オセアニア出身となっています。年齢層では25歳から54歳がほとんどで、女性が男性よりもやや多いとのこと。特にアフリカ地域では、かつてフランスの植民地であったアルジェリア、モロッコ、チュニジアの「マグレブ」3国出身者がとても多く、労働力として積極的に受け入れてきた歴史があります。
しかしながら、この統計は外国生まれの移民のみなので、フランスで生まれた移民2世や3世、そして難民の数も含めると、その割合は10人に1人どころではなくなりそうです。移民の教育水準も自国民より格差が顕著になっていて、36%が低学歴、うち27%が高卒者と言われています。
フランスにおける移民問題の深刻さ

例えば、移民に関連する事件で、フランスの社会問題にも発展した大きな出来事が2023年にありました。パリ郊外で、車を運転していた17歳の少年が検問中の警察に射殺されたのです。少年はアルジェリア系移民の2世でした。
パリ郊外は貧困層や移民が多く暮らす地域で、貧富の差がはっきりと現れています。警官も多く配置されていて、昔から衝突の絶えない場所ではありました。
そこで起こっているのは、移民1世である親の世代から受け継がれてきた、さまざまな差別に対する移民2世の「不満と憤り」です。彼らはまた、自身のよりどころがフランスにも祖国にもないという「アイデンティティの欠落」にも悩まされている世代。こうしてフランス生まれの移民子世代の中には、どこにも居場所を感じられずに苦悩を抱え、結果的にフランス社会そのものを憎んでしまうという層が少なからずいるのです。
2023年の少年射殺事件をきっかけに、不満を募らせている人々がフランス中で暴動を起こしました。失業問題や社会的不平等に反発する声を高らかに上げ、移民2世の若者を中心に大きな暴動へと発展したのです。
しかし、こうした放火、破壊、略奪などの暴力行為は初めてではありません。自国フランス人の間でも「いい加減にしてほしい」と批判が強まっています。昨今の右傾化、特にフランスの極右政党が支持を集めている理由には、上記のような事件が長年にわたってフランス社会を脅かしていたためでしょう。フランスの極右政党「国民連合」は、移民に対して厳しい公約を掲げている政党としてよく知られています。