
筆者が暮らすフランスでも、名前は文化の「写し鏡」のようなもの。有名ブランドで耳にする「ピエール」や「セリーヌ」といった名前に、フランスらしさを感じる人も多いのではないでしょうか。
実際に筆者もこちらで暮らしていて、「これはフランスっぽい名前だな」と思うことがよくあります。さらにフランス人にその由来や意味を尋ねてみると、日本の名前文化とはやや異なる特徴があることが分かってきました。
人と被る率が高いフランス人のファーストネーム
日本でも、漢字は違えど、同じ名前の人に出会うことが珍しくありません。これはフランスでも同様で、その頻度は日本よりも高い印象があります。理由としては、まず名前のバリエーションが日本に比べて少ないこと。さらにアルファベット表記のため、個々の違いが生まれにくいことが挙げられます。そのためか、ほかの人と名前が完全に被るケースがとても多いフランス。例えば、二コラ(Nicolas)君という男の子が学校のクラスにいたとしましょう。この名前は1980年代生まれによく見られ、フランス人に話を聞くと「同じクラスに何人もいた」という声をよく耳にします。
「二コラ!」と呼べば、何人ものニコラが振り向く……。フランスではそんな状況も多いので、名前の重複を避けるために「ニコ」や「ニッキー」といったニックネームで呼び合う文化が根付いているのです。
フランス人に最も多い名前とは

女性名では、1位がマリー、2位ナタリー、3位イザベル、4位シルヴィー、5位カトリーヌ、6位フランソワーズ、7位マルティーヌ、8位モニク、9位クリスティーヌ、10位ヴァレリーです。
クラシックで古風なイメージがありますが、これは人口の多い現在の50~60代に多いファーストネームであるためです。特に女性名の「マリー」は、聖母マリアに由来するもので、キリスト教圏ではとてもポピュラーな名前。かつては「マリー=クレール」や「ジャン=ピエール」など、2つのファーストネームが使われることも一般的でした。
キラキラネームは存在しないが、「人気の名前」は時代とともに変わる
フランスのファーストネームは聖書や聖人に由来するものが非常に多く、親たちもそんな伝統と呼びやすさ、そして名字との総合的なバランスを見て決めているそうです。ただ、宗教色が薄れつつある現代では、聖書にまったく関係のない名前も増えています。例えば、1990年代生まれはハリウッド映画の影響で「ケヴィン」や「マックス」といったアメリカ風の名前が流行。一方、2010年代以降は「エマ」や「ルイ」「レオ」など、短くて世界中のどこでも通じる名前が人気です。漢字を使わないフランスでは日本のようなキラキラネームは存在しませんが、こうして名前からも時代の変化を感じ取ることができます。