「探究学習」に学校現場は混乱…“問いが立てられない”子どもたちに欠けている学びの土台

小中高校で重視されている探究学習だが、新たな取り組みに対して混乱している先生も少なくないという。SELを軸にさまざまな学校を支援するrokuyou代表の下向依梨さんに、探究学習を支える学びの土台について聞いた。

学びの土台づくりによる変化 

また、探究学習ではクラスメイトとうまく関係性を構築できず協同的に進められなかったり、ヒアリングに行った先で聴く姿勢をとがめられたりすることがあるという。こうした課題の対策にはSELの中でも社会スキルを身につけていくことが求められます。

SELを学校で導入していくと、先生と子ども、先生同士、子ども同士というように多様な関係性で変化が起きていくと下向さんは言う。

「先生と子どもたち両方でSELを体感していくと、関係性が変化します。先生方が生徒の声をノンジャッジメンタルで聞くことができるようになるので、信頼関係が生まれます。生徒の心理的安全性を土台にして、思いを口にすることができるようになるのです」

先生と子ども双方でSELを実践していく意義はここにありそうだ。では、心理的安全性をベースにすると生徒はどう変化していくのだろう。

「例えば、挑戦が苦手な生徒が新たな環境へ飛び込む力を持てるようになります。そもそも人には『挑戦したいこと』と『挑戦したくないこと』がありますよね。自分の心に敏感にならなければ、それを見極めることができません。『挑戦したいこと』であれば、楽しく頑張り続けられる可能性が高くなります。また、先生が受け止めてくれるという信頼から、これまでにないチャレンジができるようになっていくのです」

また、自分の感情や気持ちに目を向けられれば、自己決定にも向かえるようになる。小さな自己決定を積み重ねることで、進路などの大きな自己決定ができる。つまり、SELは探究学習の土台となるだけでなく、キャリア教育にもつながっていく。

「何をウェルビーイングだと感じるかは人それぞれ異なります。しかし、1ついえることは、『自分はこんな今日に幸福を感じる』『これが好き』といった自己認知がなければ、ウェルビーイングな状態を実現していくことは難しい。さまざまな個性を持った人が、“自分ならではの幸せ”を追求するためのベースをSELで培うのです」

SELを通じたウェルビーイングな社会の実現に向け、下向さんはこれからも学校との協働を続けていく。
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『世界標準のSEL教育のすすめ 「切りひらく力」を育む親子習慣: 学力だけで幸せになれるのか?』(著:下向依梨より)
『世界標準のSEL教育のすすめ 「切りひらく力」を育む親子習慣: 学力だけで幸せになれるのか?』(著:下向依梨より)
世界標準のSEL教育のすすめ 「切りひらく力」を育む親子習慣: 学力だけで幸せになれるのか?
世界標準のSEL教育のすすめ 「切りひらく力」を育む親子習慣: 学力だけで幸せになれるのか?
 
取材協力:「株式会社roku you 」代表取締役 下向 依梨
慶應義塾大学卒業後、2014年にペンシルベニア大学教育大学院へ。SEL(Social Emotional Learning)と出会い、学習科学・発達心理学の修士号を取得する。大学院卒業後は帰国し、東京のオルタナティブスクール(小学校)で算数・英語を中心とする教科を教えながら、探究学習のカリキュラムづくりと、SELベースのプログラムの開発に従事。2018年、教育企画・コンサルティング会社roku youを立ち上げ、現在は代表取締役を務める。
https://www.roku-you.co/
この記事の執筆者:佐藤 智
教育ライター。株式会社レゾンクリエイト執行役員。出版社勤務を経て、ベネッセコーポレーションにて、学校情報を収集しながら教育情報誌の制作を行う。その後、独立。全国約1000人の教師に話を聞いた経験をもとに、現在、学校や教育現場の事情を分かりやすく伝える教育ライターとして活躍中。著書『SAPIXだから知っている頭のいい子が家でやっていること』など。
https://raisoncreate.co.jp/
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