2:『トップガン』に当初は乗り気ではなかったけど……
『ヴァル・キルマー/映画に人生を捧げた男』は『トップガン マーヴェリック』の公開よりも前の作品であることもあって、同作への言及はほとんどありません。しかし、1986年の前作『トップガン』についてはその思い入れがしっかり語られていました。実は、ヴァル・キルマーは『トップガン』への出演について「当初は乗り気じゃなかった」「脚本も、好戦的な内容も好きじゃなかった」「でも雇用契約上、出演は絶対だった」と、当時の正直な心境を吐露をしています。それでも「トニー・スコット監督の構想と熱意のおかげで、楽しい撮影となった」と好意的になっていったこと、「アイスマンの出番は少ないので、リアルを追求した」などと、役者としての誠実な姿勢も語っています。
ちなみに、ヴァル・キルマーは自身が演じたアイスマン役について「父に阻害されていたという裏設定を作った。その生い立ちから完璧主義者となり、クールでイヤミな面が表れる」と説明。このことを知ってから『トップガン』での彼の態度を見ると、より「なるほど」と納得できるかもしれません。
3:クールで正直だけど、姿勢そのものはやはり誠実
ヴァル・キルマーの「クールかつ正直、それでも役に真剣に向き合う」姿勢は、1993年に出演した『トゥーム・ストーン』に対する「脚本が悪いと演じるのも大変だが、ドク(悪党)はよく練られた役だ」といった発言にも通じます。さらには1996年に出演した『D.N.A./ドクター・モローの島』で、監督のジョン・フランケンハイマーとの折り合いがよくなかったことにも重なるかもしれません。脚本や作品のクオリティーについて、自分の意見をはっきりと口にするからこそ、ひょっとしたら現場ではよく思われなかったこともあるのではないか……とも思える一方、俳優の立場から作品をよりよいものにしたいと願うという姿勢は、やはり誠実だと思えました。 さらに、1995年に出演した『バットマン フォーエヴァー』『ヒート』などでも、やはり正直なもの言いをしている様が、ユーモラスかつ辛辣(しんらつ)なため笑ってしまうのですが、後には「(演じてきた役に)不満なんてないですし、運よくここまで来れました」「特に評価の高い役に不満を言えば、何様だと怒られるでしょう」と謙虚な発言をしていたりもします。
現実のヴァル・キルマーが「言葉が強く、聞いていてハラハラするけど、実はちゃんとしたことを言っている誠実な人」であることも、どこか『トップガン』『トップガン マーヴェリック』のアイスマンと重なるのです。