ここがヘンだよ、ニッポン企業 第33回

のび太のように「運動神経のない子」を徹底的に見えない化! 運動会の「教育的配慮」はアリかナシか?

昨今の運動会で、足の速さ遅さが「見えない化」されていることが一部で議論になっている。しかし、どちらのシステムを採用したところで、日本の子どもたちの競争心や「やればできる」という気持ちが育まれることはないだろう。その理由を解説する。

本当に議論すべきは日本の学校のシステム

道徳の時間には『世界に一つだけの花』を読み聞かせ、「個性を伸ばす」と学習指導要綱にも入っている日本で、なぜこんなに没個性の子どもが「量産」されるのかというと、運動会に象徴される「全員強制参加」が多いからだ。個人の意志を殺して、全体秩序を守らせることを叩き込んでおきながら、「人に誇れる個性」もへったくれもないではないか。
 
「やればできる」という気持ちにもつながる「自分の行動で、国や社会を変えられると思う」と答えた若者の比率も中国83.7%、アメリカ65.6%、韓国60.8%というなかで、日本は45.8%とビリである。
 
これも当たり前だ。自分がやりたいことではなく、学校や教師、親という「みんな」がやらせたいことを、ひたすら強制される小・中・高12年間で、「やればできる」という自己肯定感を身に付けられる若者の方が少ない。
 
このような日本の子どもの没個性・無気力はずっと続いている。つまり、われわれが議論しなくてはいけないのは、「競争して足の遅さ速さの優劣をつけるべきだ!」「いや、運動神経のない子どもにも“やればできる”を経験させよう」という枝葉の話ではなく、「そもそも運動会に象徴される日本の学校のシステムが問題じゃないか?」ということなのだ。
 
……と言ったところで、「昔から続いている」というだけでシステムを変えられないのが日本人だ。なんやかんやとそれらしい理屈をつけて続けていくしかない。
 
足の速さ遅さの「見えない化」も、そんな苦肉の策の1つなのではないか。
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この記事の筆者:窪田 順生
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経てノンフィクションライター。また、報道対策アドバイザーとしても、これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行っている。
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