古川雄大、京本大我が壮絶に演じ切る、ミュージカル『モーツァルト!』リポート【画像18枚】
天才作曲家の壮絶な生涯を描き、世界各地で愛され続けるミュージカル『モーツァルト!』。古川雄大さんと京本大我さんがダブルキャストで挑む2024年公演の模様を、ふんだんな舞台写真とともにリポートします!
ミュージカル界をけん引する古川雄大さんと、舞台俳優としてのキャリアも着実に築きつつある京本大我さんが、ダブルキャストで主演する『モーツァルト!』が開幕。ウィーン・ミュージカルならではの、華麗さと「コク」が魅力の舞台をリポートします!
世界各地で愛され続ける『モーツァルト!』
暗い墓地でのプロローグを経て、幕が上がるとそこは華やかなサロン。貴族たちの視線が集まるなか、少年ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは見事にピアノを弾きこなし、父レオポルトは誇らしげに「3歳でピアノを弾き始め、5歳で作曲を始めた」と語ります。
歳月が流れ、ヴォルフガングは青年に成長。傍らには常に才能の化身アマデ(幼年時代のヴォルフガングを演じた子役がそのまま演じる)が寄り添い、黙々と作曲に没頭しています。
支配的なコロレド大司教のもとでの活動に嫌気がさしたヴォルフガングは、父の忠告にも耳を貸さず、故郷を後に。
しかしかつての名声は色あせ、ヴォルフガングの演奏会は不入りに終わります。失意の中で帰郷した彼に、以前から見守ってきたヴァルトシュテッテン男爵夫人は、大都会ウィーンでの再起を提案。
反対するレオポルトにおとぎ話を聞かせ、子供の自立を認めるべきと説く男爵夫人。ヴォルフガングはウィーンで自由を謳歌し、あるがままの彼を愛するコンスタンツェと結婚します。
音楽家としての頂点を極める一方で、父と疎遠になり、コンスタンツェとも心がすれ違って行くヴォルフガング。そんな中で父が亡くなり、悲しみに打ちひしがれる彼のもとに、謎の人物からの作曲依頼が舞い込みます。
リクエストはレクイエム。ヴォルフガングは渾身の力を振り絞り、作曲に取り組みますが……。
作品のテーマは「才能が宿るのは肉体なのか、魂なのか」
“才能が宿るのは肉体なのか、魂なのか”というテーマをベースに、ザルツブルクが生んだ不世出の作曲家の生涯を、ミヒャエル・クンツェ(脚本・歌詞)とシルヴェスター・リーヴァイ(音楽・編曲)が描くミュージカル。
ロック・テイストを取り入れ、若者の苦悩をエネルギッシュに描いた舞台は、1999年にウィーンで誕生以来、中欧や韓国など各地で上演されてきました。
日本でも2002年に当時の新進スター、井上芳雄さんと中川晃教さん(ダブルキャスト)の主演で初演。小池修一郎さん(演出・訳詞)によるきめ細やかな演出と、松井るみさんによる、鍵盤楽器をかたどったスケール感豊かな舞台美術も功を奏して大評判となり、数年ごとに再演が重ねられています。
古川雄大&京本大我のWキャストで3年ぶりの上演
3年ぶりの上演となる今年は、衣裳や鬘(かつら)が一部リニューアル。ヴォルフガング役は今回が3回目となる古川雄大さんと、『エリザベート』『NEWSIES』などで着実に舞台でのキャリアも積んできた京本大我さんが、ダブルキャストでつとめています。
開幕を前に、「3回目にして理解できた部分や、新しい発見があります。(稽古では)いろいろなことに挑戦し、曲に対するアプローチも結構変わってきています」とコメントした古川雄大さんは、長身と身体能力を活かしながら、ヴォルフガングの苦悩と自由への憧れを時にダイナミックに、またある時は繊細に表現。
特に「影を逃れて」など、逡巡するナンバーの歌唱にドラマティックな奥行きがあり、衝撃的なラストも、ある種の必然として映ります。
いっぽう初挑戦の京本大我さんは、「舞台に挑む上での“尖り”が、ヴォルフガングの役柄にも良い影響を与えられたら」とコメント。ナイーブな芝居もさることながら、抑圧に抵抗するくだりでの、力強い表現が出色です。
特にコロレド大司教と衝突する終盤のナンバー「破滅への道」での、絶対的権力者を前に一歩も退かない姿が鮮烈。中音域のビブラートにも独自の魅力があり、彼がこれからどのようにこの役を深めてゆくか、大いに注目されるところです。
若手実力派からベテランまで層の厚い共演陣も魅力
若手実力派からベテランまで、層の厚い共演陣も本作の魅力。コンスタンツェ役の真彩希帆さんは赤裸々な告白ナンバー「ダンスはやめられない」で、芸術家の妻の理想と現実を激情ほとばしるように歌い、ヴォルフガングの姉ナンネール役の大塚千弘さんは、レオポルトとのナンバー「プリンスは出て行った」で、弟のために犠牲となった姉の傷心を、しみじみと吐露します。
ヴァルトシュテッテン男爵夫人をダブルキャストで演じるのは、涼風真世さん、香寿たつきさん。モーツァルト家の人々に語り掛けるナンバー「星から降る金」を、涼風さんは凜とした、香寿さんは柔らかなオーラを纏いながら説得力豊かに歌い上げます。
またコロレド大司教役の山口祐一郎さんは、ロック調のナンバー「何処だ、モーツァルト!」で颯爽と登場する序盤から、終始大きな存在感を示し続けます。ヴォルフガングを金づるとして利用するセシリア(コンスタンツェの母)役の未来優希さん、調子のいい劇場支配人、シカネーダー役の遠山裕介さんも好演。
そしてヴォルフガングの父レオポルトを演じるのは、これまで『ミス・サイゴン』はじめ、多数のミュージカルで主演をつとめてきた市村正親さん。
息子への“親心”溢れるナンバー「心を鉄に閉じ込めて」での、切々たる歌唱が胸を打ちます。とかく“特別な人”の“特別な物語”に見えがちな本作ですが、レオポルトが登場する度、本作の“家族の物語としての普遍性”に気づかされる方は少なくないかもしれません。
重すぎる愛と期待に押しつぶされそうになり、束縛と闘い、時にはそのナイーブさゆえに欲深い人々に搾取されながらも、あふれ出るアイディアを無心に書き留め、音楽と共に生き切ったヴォルフガング。
古川雄大さん、京本大我さんが壮絶に演じるその生きざまは連日、観る者に衝撃を与え、3都市を熱く駆け抜けていくことでしょう。
<公演情報>
ミュージカル『
モーツァルト!』8月19日~9月29日=帝国劇場、10月8~27日=梅田芸術劇場メインホール、11月4~30日=博多座