基本的には火を通さず、サッとテーブルに並べられるものばかり。しかもジャムやチョコレート・ペーストなど、甘いものを好んで食べる習慣があります。
ジャムやバターを塗ったバゲットを「カフェオレに浸して」食べる
伝統的に多いのは、トーストしたバゲットにジャムやバターを塗る「タルティーヌ」という朝食です。用意するバゲットは、前日の夕食で残ったもの。バゲットの代わりにパン・ド・カンパーニュを使う家庭もありますが、日本のような食パンは朝食ではほとんど見かけません。
さらに、フランス人はジャムやバターを塗ったバゲットを「カフェオレに浸して」食べます。コーヒーが苦手な人は、牛乳にココアパウダーを混ぜたものを。ということで、どの家庭もカフェオレボウルを常備しています。もちろん、カフェオレにパンくずが浮かんでいてもまったく気にしません!
ジャムの消費スピードも、日本よりだいぶ早め。スーパーにおけるラインアップも豊富で、「キウイ」「フランボワーズ」「栗」のジャムなど、日本ではあまり見かけない種類がたくさん置かれています。
卵焼き、ウィンナー、鮭……といった日本ではおなじみのおかず類も、フランスの朝食シーンには皆無。基本的に朝はキッチンに立つ時間を限りなくゼロに近づけるので、料理しなくて済むものを選びます。そのため、朝食のほとんどが1品か2品。2品といってもパンにヨーグルト、とかなり簡単な内容です。
フランス人は、クロワッサンを毎日食べるわけではない
たまにしか食べない理由は、クロワッサンにバターがたっぷりと使われているため。パン・オ・ショコラも同様で、毎日食べるには高価で高カロリーだといわれています。フランスの人々は糖質に寛容でも、脂質には厳しいようですね。
ただ、若い世代は伝統的な「タルティーヌ」から、シリアルやたんぱく質の豊富なヨーグルトなどに朝食を置き換えています。特に首都のパリでは健康志向の人が多いため、オーガニックカフェを中心にヘルシーな朝食メニューが置かれるようになりました。
一方でどの世代でも共通しているのは、「塩気のある朝食を好まない」ことです。オムレツやハムといったおかずを食べるとしたら、それは旅行先でのみ。「仕事のことを気にせず、バカンス中にゆったりとした気持ちで楽しみたい」とのことです。
フランスのお母さんたちは「絶対に無理をしない」
それは、フランスのお母さんが「絶対に無理をしない」こと。フランスでは共働きが主流なので、女性たちも家事に時間を割かないのです。
朝食は、必要なものをテーブルに並べるだけ。子どもたちは各自でパンを焼いたり、牛乳を温めたりしてそれぞれの朝食を済ませます。そして食べ終わった後は、全てを食器洗浄機へ。日本だと手抜き? と思われそうな内容ですが、フランスだとこれが普通であるため、逆に朝から料理しようとすると「何で!?」と驚かれてしまいます。
筆者も初めてフランスに旅行したときは、ホテルにおける朝食の品数の少なさに驚いたものでした。しかし現在では、「これがフランス文化だったんだ」と妙に納得しています。
逆にフランス人が日本に旅行する際は、朝食メニューの多さに驚愕(きょうがく)するそうです。あるフランスの知人は、日本の朝食のあまりの豪華さにお祝いのメニューかと勘違いしたほどでした。
日本ではバランスの取れた朝食をしっかりととる習慣がありますが、フランスでは質素で簡単、甘いものが定番になっています。どちらかというと、朝食にウエートを置かず、浮いた時間を睡眠やシャワーに充てているイメージです。このように美食大国といわれるフランスでも、朝食でほとんど料理をしないことは日本人にとっては衝撃的なことなのかもしれませんね。
この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。