ヒナタカの雑食系映画論 第107回

映画『キングダム 大将軍の帰還』は大沢たかおがMVP。それでも、さすがに気になる“テンポの鈍重さ”

公開中の映画『キングダム 大将軍の帰還』は絶賛で迎えられ、大ヒットもしています。ここでは今回の実質上主役と言っていい大沢たかおを褒め称えると共に、さすがに「テンポが鈍重すぎる」問題についても記しましょう。

キングダム
写真は筆者撮影
『キングダム 大将軍の帰還』が7月12日より劇場公開中です。2019年から続く実写映画『キングダム』シリーズの4作目であり、最終章と銘打たれている本作は、公開からわずか4日間で興行収入22億円を突破し、なんと邦画実写歴代No.1のオープニング記録(※金土日3日間興収・興行通信社調べ)を達成。前3作に引き続き興行収入50億円超え、いや100億円超えの成績も期待されています。
 
キングダム
キングダム
キングダム2 遥かなる大地へ
キングダム2 遥かなる大地へ
キングダム 運命の炎
キングダム 運命の炎

アクションの迫力やスケールの大きさも含め、現代の日本映画および漫画の実写映画化作品の代表的な存在であり、興行的にも批評的にも成功作であることに異論はありません。今回は特に絶賛の声が多く、記事執筆時点で映画.comおよびFilmarksでは4.3点と、シリーズ最高のスコアを記録しています。

全体的に「テンポが鈍重」で、間延び感がある?

しかし、筆者個人としては不満も大きい4作目でした。端的にいえば「さすがにテンポが鈍重すぎる」という問題があり、単純に間延びしているというだけでなく、物語上にもよくない影響を与えていて、シリーズ最後の作品としてもかなり歪(いびつ)なバランスになってしまったと思うのです。

とはいえ、スタッフとキャストが一丸となり、最上級のエンターテインメントを届けようとしたことも間違いありません。ここでは、まずネタバレなしで称賛ポイントをあげ、2ページからは不満に感じたポイントを記していきます。

大沢たかおの説得力と、吉川晃司との圧巻の一騎打ち

実写映画『キングダム』シリーズで特に称賛されているのはキャスティングと俳優陣の演技力、特に4作全てに登場している大沢たかおの力が大きかったと思います。
 

王騎(おうき)は原作からして巨大な体躯(たいく)と冷静沈着な性格を併せ持ち、「ンフ」という独特の笑い方もする、まさに“漫画的”とさえいえる特異なキャラクターです。下手に演じてしまうと悪い意味でギャグにもなってしまいそうなところを、大沢たかおその人らしさも生かした穏やかだけど威圧感もある話し方、3作目『キングダム 運命の炎』からは90キロ超にまでパンプアップした体で説得力を持たせた、俳優としての挑戦と努力は、どれだけ称賛しても褒めたりません。

しかも、今回は因縁の相手である、吉川晃司演じるほう煖(ほうけん)との文字通りの「一騎打ち」が描かれます。劇場パンフレットでは、大沢たかおは「ぶつかり合って、体がボロボロになって、最終的に歩けなくなるほど」と撮影の壮絶さを語っているほか、吉川晃司も(大沢たかおに負けないよう)体重を増やして「山にこもって大きな武器を自由自在に操れるようにずっと練習した」ことも語られており、この2人の最大限の努力があってこそ、圧巻のアクションが撮られたことがうかがえます。
 

これまでの『キングダム』シリーズでは、戦争における軍と軍、つまりは集団同士の戦いが描かれることも多かったのですが、今回ではタイトルさながらの「大将軍」による「個」の戦いに重点が置かれています。これまでとの差別化が図られているだけでなく、リアルタイムで5年間も追い続けていた(大沢たかお自身は8年間も向かい続けた)印象深いキャラクターの「背負っているもの」が極に達するため、なるほど今回で「最終章」と銘打ってクライマックスを迎えることも納得できたのです。

そんなふうに「『キングダム』シリーズのMVPは間違いなく大沢たかお」「吉川晃司との大迫力の一騎打ちにも感動した」ことを前提として……ここからはネガティブ寄りの批評となることをご容赦ください。また、映画本編のネタバレにも大いに触れるため、鑑賞後にお読みください。

※以下からは『キングダム 大将軍の帰還』の結末も含むネタバレに触れています。鑑賞後にお読みください。
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【ネタバレあり】序盤から感じてしまった冗長さ
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