日本でも特異な設定が話題となりヒットした『関心領域』。そちらと好対照で、併せて見てほしい理由のある映画『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』を解説します。(※サムネイル画像出典:(C)WILLOW ROAD FILMS LIMITED, BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2023)
『ONE LIFE』は実話を元にした映画で、主人公のニコラス・ウィントンも実在の人物。第2次世界大戦直前の1938年からの出来事を、その50年後の1988年から「回想形式」で語ることが大きな特徴です。
(C)WILLOW ROAD FILMS LIMITED, BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2023
その回想において、主人公は株の仲買人として働いていたごく普通の若者でした。しかし、ナチスから逃れてきた大勢のユダヤ人難民が、住まいも食料もない過酷な生活を送っていたことを目の当たりにして、「子どもたちだけでもイギリスに避難させられないか」と考え、チームを組んだ上で里親探しと資金集めに奔走するのです。
史実として彼は669人もの子どもたちを救出しますが、最大規模となる250人の救出が予定されていた第9便の到着2日前に第2次世界大戦が勃発し、その列車が到着することはありませんでした。その「救えなかった命がある」という「自責の念」こそが本作では重要なのです。
(C)WILLOW ROAD FILMS LIMITED, BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2023
劇中で描かれる時間の流れは、何しろ50年。もちろんこの映画を見ている我々は、目の前の苦しむ人々のために行動をし続けたニコラスが素晴らしい人物だと思えるでしょうし、彼自身もそれを誇りだと思っているのですが、一方で「助けられなかった子どももいたのだと50年も後悔をし続けていた」重みもまた伝わるでしょう。