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倍速視聴、スキップをする理由は?
(Mさん、以下同)私はけっこう倍速視聴をしてしまうタイプです。さらに、おそらく制作者がすごく考えて設計している「間」がある場面も、スキップして見ています。 「ここはセリフなさそうだな」と思ったら「10秒飛ばし」をして、よくないと思いつつ「ストーリー展開が分かればいいかな」と思っています。映画をはじめとした映像作品が好きな人からしたら、もう本当に許せないと思われるのでしょうけど……。
ーー正直、自分も家では映画を1.2倍速くらいで見ることがありますし、偉そうなことは言えません。やはり家で映画を見ると、映画館のように集中して見られないから、少しテンポをよくして集中して見ようという……この考えも矛盾している、間違っているという自覚もあるんです。
漫画や小説であれば自分のペースで読むことを想定した媒体ですが、映像作品はもともと「自分が時間をコントロールできない」媒体なのに、それを操作してしまうことは「なんか違う」と。そんな自分が言うのはおこがましいですが、正直スキップをして「物語が分かればいいや」というのは、「それだけはやめて!」と言いたくもなりますが……。
ごめんなさい。
ーーいえ、こちらこそ、説教みたいなことはしたくないのですが……すみません。それでも、「間」にある心理描写や言葉に頼らない演出などは、スキップしてしまうと伝わらないですし、「2時間という時間をかけて、集中して見てこそ得られる感動」は絶対あると思うので……。それでも倍速視聴やスキップをしたいと思う人には、それができない映画館に来てもらうのが1番かなと。スマホにも触れませんからね。
そうですよね。でも、自分が家で見る分には、倍速視聴やスキップもいいかと思ってしまうんです。
ーー確かに、他の人にとやかく言われるようなことではないですよね。あとは、今はもう映像作品の数がとてつもなく多いことと、サブスクでのアクセスのしやすさも、倍速視聴の大きな理由になっていますよね。
ひと昔では「DVDを買ってきてすみずみまで味わい尽くす」という楽しみ方があっても、今はもうNetflixであれほどの作品数があったりするから、全てを見ることは不可能です。だから、「なんとか数をこなそう」として、倍速視聴してしまうことも、分かるんです。それ以外にも、単純に「かったるい」から倍速視聴やスキップをするという理由もありそうですが……。
そうですね。例えば、泣いているシーンとかを見ても、前後から泣いている理由が分かるので、そこを飛ばしたりとかはやってしまったりしますね。
ーーそう聞くと、やっぱり「スキップはやめて!」とも言いたくなってしまいます(笑)。
本当にごめんなさい!
ただ「消費」してしまうのは、もったいないかも
ーーいや、怒ってはいないですよ! でも、若者たちにとって倍速視聴がもはやマジョリティになりつつあったり、「映画の話題についていく」ために映像作品を「消費」するように見ていたりするのは、やはり上の世代からすれば驚いてしまうんです。それでも、映画オタクである自分としては「自分で作品を選んで、映画館でその映画をじっくり見て、1つ1つをちゃんと味わう」というのも大切にしたいんです。仮につまらない、自分とは合わないと感じたとしても、その理由を分析したりするのも……性格が悪いとは思いつつもけっこう楽しかったりしますし、反対に面白い映画がなぜ面白いかの理由が見つかったりもするんですよ。そんなふうにつまらなく感じた映画の楽しみ方もあると思います。
ただ「消費」するように見てしまうのは、やはりもったいない。まずは映像作品を「楽しむ」ために見てみるのが1番いいんじゃないかなとは思います。その倍速視聴やスキップも、かったるく感じて「耐える」感じになるよりは、テンポよく楽しむ手段として、いたずらに否定するものではないとも思う……一方で「やっぱりやめた方がいいよ!」ともなる感じですね。
そうですよね、せっかく見るのなら「消費」ではなく、じっくり映画を見て「楽しむ」ということも今後意識的にやってみたいと思います。
ーーとはいえ、その楽しみ方を「強制」させてしまうようでは本末転倒な気もしますね……。たまには倍速視聴やスキップをやめて、気軽にゆったりと映画を見てみる、という感じでいいと思いますよ。あと、映画はたった2時間で1人の人間の人生を追ったり、それこそ一生ものの体験もできたりするのですから、むしろ「タイパ」はものすごくいい娯楽だと思います。
「ながら見」をするのはどんな時?
ーー今は映像作品を「ながら見」する人もいますよね。ドラマではあまり集中しなくても見られるような演出をしている場合もありますし、バラエティ番組ではテロップや効果音などを出していますし、TikTokの動画は字幕の他にも短い時間にとにかく情報を詰め込むという作り方をしています。やはり、映画はそういう映像とは違って、ながら見はしにくい媒体で、しつこいようですがやはり映画館で見るのが1番だと思いますね。私はけっこうながら見もするのですが、2023年放送のテレビドラマ『VIVANT』では主演の堺雅人がモンゴル語で話していたので、字幕を見ないと話が追えなくて。なのでその企みができなかったんですよ。そのおかげもあって「集中してちゃんと見ないと話についていけない」と思って、『VIVANT』は私的には久しぶりに「しっかり見た」という感覚がありました。そのことも、あれだけヒットした1つの理由なのかもしれないですよね。
ーーそれは素晴らしいじゃないですか。「字幕を見ないと分からないから集中して見る」感覚も分かるんですよ。自分は海外の映画を「映画館では字幕で、家では吹き替え」を選んで見ることが多くて、吹き替えだったらちょっと画面から目を離してしまっても、耳から聞こえる音声を聞いていれば内容が分かるから、というのが大きいですね。
ドラマ以外でも、映画をながら見する時もあります。そういう時は1回見たことあるものを流すことが多いですね。ストーリー展開が分かっているから、あまり見なくても大丈夫という感覚で。
ーーそんな感じなんですね。個人的には映画とかドラマを流すと、映像の方ばかりを見ちゃったり、作業に集中してまったく映像が頭に入ってこなかったりで、ながら見があまりできないタイプなんですよ。そういうのは本当に人それぞれで、映像作品の人それぞれの楽しみ方を、短絡的に否定するものではないですよね。