映画という趣味の利点は「1人でも楽しめる」こと
ーー最初に掲げた通り、やはり映画とドラマの垣根は小さくなっている気はします。その上で、映画館で映画を見るハードルはまだ高くて、「つまらない映画に2時間も使いたくない」という心理的が働いて、本当に大ヒットする映画と、そうではない映画という、二極化が進んでいるところもあるかもしれませんね。私も「ヒットしているから見に行ってみようかな」な感じで作品を選ぶことが多いですね。
あと、映画は趣味の中でも最も気軽なものだと思いますよ。その理由の1つが「1人でも楽しめる」ことです。映画館で映画を1人で見るのが嫌だという人もいるかもしれないですけど、映画館に行けばその孤独も受け入れてくれるというか、同じ作品を見ている不特定多数の人と一体感的なものが得られるんですよ。個人的には、誰かと予定や機会を合わせたりする趣味の方が、むしろハードルが高く感じてしまうんですね。そういう点でも、エンターテインメントとしてもっと親しみやすく感じてくれればいいのですけどね。
私の友人に映画が好きな人がいるのですけど、Instagramを見るとTOHOシネマズみたいな大きい映画館じゃなくて、ミニシアターでしかやっていない映画を見に行っている人がいて、「私とは違うなあ」と思うことはありますね。
ーーその人は、それでいいですよね。今はミニシアターの多くが苦境に立たされていることもあるので、それも「自分とは違う」だけではなく、「自分も行ってみようかな」と、ミニシアターももっと気軽に来てくれるとうれしいです。Mさんは「乃木坂46が好き」だとおっしゃっていましたけど、アイドルファンにとっても、「アイドルがちょっと好き」という人がいてくれればうれしく思う、「ニワカこっちくんな」みたいなこと言わないですよね。
『ハイキュー!!』で全ての座席チケットを買う人も
そういえば、SNSで『ハイキュー!!』をすごく好きな人が「映画を見ながら声を出してしまって、迷惑をかけるのが嫌なので、1人で何も気にせず好き勝手に見たいから、公開からしばらくたってから劇場に許可を取って、1つのスクリーンの全員分の100枚ほどの席を買って、1人で見ます」と投稿している人がいたんですよね。ーーそんな人がいるんですか! すごいですね。
その人は、1人で何も気にせずに映画館で見ることを重視して、周りの人に迷惑をかけていないのであれば、それでいいと思う派ではあるんですけど。ヒナタカさんの言う、不特定多数のみんなと座って一緒に見るっていう感覚は私はあまり感じたことがなくて、意外でした。
ーー本当にそれが楽しいんですよ。映画を見終わった後に、言葉にせずとも「いいものを見たなあ」という感覚が、劇場全体から得られたりして。それは1人で家で映画を見る時には得難いことですね。
ヒナタカさんのそうしたお話を聞くだけでなく、書かれている記事を読むと、やはり「すごく“喋れるオタク”だなあ」と思いますね。
ーー文章からですか(笑)。いや、まあ、我ながら好きなことになると、早口になるオタクだとは自覚していますが。
私は、この作品のことを、こういうふうに好きだと、上手に表現することができないので。それがいつも、本当にうらやましくて。
ーーそうなんですか。でも、自分は言葉にするのが好きなタイプのオタクで、それを曲がりなりにも仕事にもしているというだけのことなんですよ。でも、言語化をしなくても、ご自身の中で好きだと思っていれば、それはそれで幸せなこと、それだけでいいと思います。
まとめ:やはり趣味への付き合い方は人それぞれ
いかがだったでしょうか? 筆者個人は「倍速視聴やスキップ」「ながら見」について過度に罪悪感や嫌悪感を感じてしまわなくてもいい、人それぞれの楽しみ方で良いのだと改めて思うことができました。その一方で、映画ファンとしては倍速視聴やスキップやながら見ができない、映画本来の魅力を味わい尽くせる、集中して見られる映画館にもっと来てほしいと、改めて願うこともできました。
その上で、「ドラマ好き」より「映画好き」の方が偉いだとか高尚だとかいうことは、まったくないとも断言します。こちらの記事で語ったように、予算や制作規模以外でも両者の垣根はほとんどなくなっていますし、やはりそもそも趣味は人それぞれで楽しめばいい、比べるものではないという気持ちも新たにできました。そして、映画ファンの1人として、趣味について「マウント」を取らないようにと、改めて気をつけたいと思います。
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この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。