牛乳パックの作りが変化。子どもでも“開けやすく、飲みやすい”工夫が
プラスチックごみ削減のため、全国の自治体では、学校給食で提供している「牛乳のストロー廃止」の取り組みが広がっている。大阪府の小中学校でも、2024年度よりほぼ全域でストローの使用が廃止された。ストロー廃止に伴って変化したのは、牛乳パックの作りだ。関西の小中学校を中心に牛乳を提供する日本酪農協同株式会社では、日本製紙株式会社が開発した開けやすさや飲みやすさを重視したストローレスパック「School POP(スクール ポップ)」を採用した。
これまではストローをさして飲むことが一般的であったため、導入前の学校現場や保護者のSNSなどからは、「開けにくそう」「行儀が悪い」「こぼしそう」など抵抗感を示す声も聞こえた。
令和6年度からストローレスパックに変更になった学校の先生は、どのように感じているのだろうか。大阪府の公立小学校で1年生の担任を務める白石先生(仮名)に、子どもたちの様子を聞いた。
実際に使ってみてどう? 小1担任から見た子どもたちの様子
「正直、無理だろうと思っていました」牛乳のストローが廃止されることを知ったとき、白石先生は肯定的に受け止めることができなかった。牛乳パックを開けることも、ストローなしで注ぎ口から飲むことも、1年生にとってはきっと難しいだろう――。そんな懸念があったのだ。
しかし、実際に給食の時間が始まると、最初に抱いていたイメージは大きく変化したという。
「飲むときにこぼす子がいるんじゃないかと思いましたが、意外とそういうことはあまりなく、多くの子どもが上手に飲んでいます。牛乳パックの作り自体がしっかり考えられていて、小学校1年生でもほとんどの子は自分で開けられるようになっています。開けるのを失敗した子が、『先生、開けて』とたまに言いにくるくらいです」
白石先生のクラスでは、今はほぼ全員がストローなしでも問題なく牛乳を飲んでいるそうだ。保護者や児童からも、ストローがなくなったことに対して「困っている」という声は届いていない。このようなスムーズな移行ができた背景には、牛乳パックの作りが影響しているのではないかと白石先生は言う。
「ただし他の自治体の先生から、『牛乳パックが開けづらい』という声を聞いたことがあります。うちの学校ではそのような声は聞かないので、パックの作りによっては、ストロー廃止に抵抗感のある児童もいるのではないかなと思います」
プラごみ削減以外の思わぬメリットや注意点。ストローは教室に常備
ストローを使わずに牛乳を飲むようになったことにより、意外なメリットもあったという。「以前は給食の後に、ストローの袋が床に落ちていることがよくありました。それがなくなって、教室がきれいに保てるようになりました。飲み終えた牛乳パックは、子どもたちが自分で潰して給食時に出た他の燃えるゴミとまとめて捨てています。プラスチックごみがなくなったので、片づけも楽になりました」
環境に配慮した取り組みとして始まったことではあるが、ごみが減ることによって、教員や児童の負担が減ることにもつながった。
一方で気をつけるべき点についてはこう指摘する。
「児童のなかには、牛乳パックを開けることや注ぎ口から飲むことが難しい子もいます。そういう子たちのために、ストローは常に教室に用意しておく必要があります。また、注ぎ口が開いている状態でパックが倒れてしまった場合、一気に牛乳がこぼれてしまいます。そのときに牛乳アレルギーの子にかかってしまう可能性があることに注意する必要があります」
ストローなしでも問題ない現状でありつつも、学級内にはさまざまな児童が在籍していることを、教員は常に意識していることがうかがえる。現在は、ストローの使用を希望する児童はいないものの、希望すればストローを使うこともできるそうだ。
全国の自治体で広がりつつある、牛乳パックストロー廃止の取り組み。当初懸念が大きかった白石先生の学級では、スムーズに移行が進んだようだ。
プラスチックごみ削減のために始まったストローの廃止によって、児童の環境意識の向上につながることも期待できるのではないだろうか。
この記事の執筆者:建石 尚子
大学卒業後、5年間中高一貫校の教員を務める。フィンランドにて3カ月間のインターンを経験したのち、株式会社LITALICOに入社。発達に遅れや偏りのある子どもやご家族の支援に携わる。2021年1月に独立。インタビューライターとして、教育や福祉業界を中心にWEBメディアや雑誌の記事作成を担当。
大学卒業後、5年間中高一貫校の教員を務める。フィンランドにて3カ月間のインターンを経験したのち、株式会社LITALICOに入社。発達に遅れや偏りのある子どもやご家族の支援に携わる。2021年1月に独立。インタビューライターとして、教育や福祉業界を中心にWEBメディアや雑誌の記事作成を担当。