「Wi-Fi 6」と「Wi-Fi 7」は何が違う? 自宅にも導入すべきでしょうか?【Wi-Fiの専門家が解説】

Wi-Fi 6とWi-Fi 7の違いや実際の速度、導入すべきか否かについて、LAN/無線LANの専門家で「All About」ガイドの岡田庄司が解説します。

Wi-Fi 6とWi-Fi 7は何が違う? 導入すべきですか?
Wi-Fi 6とWi-Fi 7は何が違う? 導入すべきですか?
「Wi-Fi 6E」に次ぐ、最新のWi-Fi規格である「Wi-Fi 7」。日本でも各社からWi-Fi 7に対応した機器が発売されています。

そんな「Wi-Fi 7」について、LAN/無線LANの専門家で「All About」ガイドの岡田庄司が解説します。

(今回の質問)
Wi-Fi 6とWi-Fi 7は何が違う? 導入すべきですか?

(回答)
Wi-Fi 6より数々の新技術が投入されているWi-Fi 7ですが、速度が速くなっても実際に活用できる場面は限定的です。

どういうことなのか、以下で詳しく解説します。  

Wi-Fi 6とWi-Fi 7は何が違う?

Wi-Fi 6は、2.4GHz帯と5GHz帯を利用しています。その後、Wi-Fi 6Eが登場し、6GHz帯が利用できるようになり、帯域幅も160MHzとなりました。Wi-Fi 7は、この6GHz帯で利用できる帯域が大幅に拡張され320MHz幅での通信が可能となりました。帯域幅が広いほど、たくさんのデータを送受信することができます。

また、Wi-Fi 6/6Eは、2.4GHz/5GHz/6GHzのうち1つの周波数帯しか利用できませんでしたが、Wi-Fi 7は、複数の周波数帯を束ねて同時に利用することが可能に。このため、最高通信速度は、各周波数帯の最高速度を加算した値となり、Wi-Fi 6/6Eの最大通信速度が9.6Gbpsに対し、Wi-Fi 7は46Gbpsもの速度となっています(規格値でおよそ4.8倍)。

実際の速度はどれくらい差がある?

それでは、実際にどのくらい違うものなのかを検証してみましょう。

Wi-Fi 6を利用した場合の速度は、ほぼ775.5Mbps程度で安定しています。
Wi-Fi6を利用した場合の速度
親機:BUFFALO Wi-Fi 7(11be)対応トライバンドルーター WXR18000BE10P
子機:iPhone 12 mini
測定サイト:10Gで契約した加入プロバイダ内の速度測定サイト(高速で安定)
同じ部屋の空間でWi-Fi 7を利用した場合では、7.834Gbpsと非常に高速です。Wi-Fi 6と比べると10倍強の速度となっています。
Wi-Fi7を利用した場合の速度
親機:BUFFALO Wi-Fi 7(11be)対応トライバンドルーター WXR18000BE10P
子機:親機と同じWXR18000BE10PをメッシュWi-Fiで無線接続。子機に有線接続しているのは、AMD Ryzen9 7900X搭載のデスクトップコンピューター(10GのLANボード装着)
測定サイト:10Gで契約した加入プロバイダ内の速度測定サイト(高速で安定) 
Wi-Fi 7に対応するスマホでの測定ではないので、全く同じ環境での測定値ではないのですが、参考にはなると思います。

Wi-Fi 7の速度を実感できる環境はまだ限定的

Wi-Fi 7は、規格上も実測値も非常に高速ですが、実際に筆者がWebページを閲覧したり、YouTubeやAmazonプライム・ビデオの映画を視聴して比較してみました。

まず、Webページですが、ほとんど表示される速度に体感的な差はありませんでした。また、YouTubeや映画でも、ほとんど体感的な差はありません。さらに、4Kや8Kの動画もネット経由で視聴してみましたが、Wi-Fi 6でも問題なく視聴できるので、Wi-Fi 7が必要だとは感じませんでした。

要するに、現在のインターネット環境では、Wi-Fi 6で1G程度の速度が安定的に確保できていれば、Wi-Fi 7にするメリットはほとんどないということです。

また、例えばiPhoneにはWi-Fi 7対応の機種は現在(※2024年5月時点)のところありません。アンドロイドには、一応Wi-Fi 7に対応した機種がありますが、日本ではWi-Fi 7で利用できなかったり、2024年秋以降のファームウェアアップデートで対応予定の機種もあり、まだあまり一般的ではありません。

また、Wi-Fi 7本来の速度を出すには10Gインターネット回線への加入や、機材やケーブルを10Gに対応させる必要があり、そのために相応の追加投資が必要となって来ることも見逃せないです。

Wi-Fi 7を活用できる環境とは?

それでは、Wi-Fi 7を活用できる環境はどのような環境でしょうか。以下にその例を挙げます。

・産業IoTや遠隔医療
※AR(拡張現実)とVR(仮想現実)などの現実の空間と仮想空間を融合させ、実際には認知できない体験を創造する技術であるXRでの利用
・オンラインゲームなどリアルタイム性が求められるシーン
・動画ファイルなど大容量のファイルをコピーする場合


将来的にはWi-Fi 7対応のルータや子機が増えてくることでWi-Fi 7の高速性を生かせる環境になると思いますが、現状では利用できる範囲が限定的となっています。一方、先駆的にWi-Fi 7の無線LANルータを購入しておくという考え方もあるでしょう。
 
この記事の筆者:岡田 庄司
ライター歴は20年以上。パソコン通信時代からネットワークに興味を持ち、LANや無線LANが一般に普及する前からLANの話題を追いかけ続けている。著作はすでに40冊を超え、テクニカルライターとしても活動している。
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