毒親がなぜ企業リスクになるのか
そんな「毒親」がなぜ「企業リスク」になるのかというと、オヤカクやオヤオリの普及によって「毒親」が企業とつながりを持ってしまうからだ。これまでわが子に放ってきた「毒」を、直属の上司や会社の人事担当者へまき散らすことが予想される。「毒親」は愛するわが子を自分の思うようにコントロールしないと気がすまない。それが会社に入った途端、急に上司の厳しい指導や人間関係で悩み始めて元気がなくなったり体調も悪くなったりしたらどうか。自分の支配が及ばないところで、愛するわが子が第三者によって自分が全く望まないような姿へと変えられることに強い怒りと憤りを覚えるはずだ。
企業のモンスターペアレント対応が始まる
これまでの毒親の場合、そのフラストレーションをわが子にぶつけていた。「パワハラだと人事部などに訴えなさい」「そんな会社は早く辞めなさい」などと、あれやこれやと命令するのだ。会社では仕事や人間関係で疲弊して、家に帰れば毒親からあれやこれと口を出されるということで、精神的に追い詰められてしまう若者も少なくない。しかし、オヤカク、オヤオリによって、このフラストレーションの向かう先がダイレクトに上司や会社へ向かってしまうようになる。突然、電話をかけてきて「うちの子が最近元気がなくて」と相談をしてきたり、会社に乗り込んできて、上司に「どういう指導をしているんですか?」などと詰め寄ったりするのだ。
そんなバカなことをする親などいないだろうと思うかもしれないが、会社から内定の承諾を求められたり、会社説明会などで「お父さん、お母さんも何か心配があったら遠慮なくおっしゃってください」なんて言われたりすれば、「この会社は親がわが子の問題に口を出す権利をオフィシャルに認めた」と勘違いをする親がいてもおかしくもない。
しかも、世の中には「親」という立場を振りかざせば、「わが子を預かる側」へどんな自分勝手で理不尽な要求ものませることができると勘違いしている親が一定数いる。
例えば2024年4月、奈良県天理市では、小学校や中学校の保護者の窓口を開設した。学校に乗り込んできて担任に理不尽な要求をする「モンスターペアレント」が深刻化しているからだ。
同市が教職員にアンケートを取ったところ、過去に保護者からの理不尽なクレームの心労により1日以上休んだことがあるか、または同等以上に業務に支障が出たことはあるか」という質問に対し、74.2%が「ある」と回答。具体的にどんな理不尽さかというと、自宅の壁を蹴って穴をあけた子どもの保護者から「学校によるストレスがあるからだ」と呼び出されて言いがかりをつけられたという。
このようなモンスターペアレントの問題は企業でも増えていくはずだ。