BtoBとBtoCの違いは? マーケティングに重要なビジネスモデルの種類

近年よく耳にするBtoBやBtoCといったマーケティング手法。しかし、その違いがよく分からないという人も多いようです。本記事では、現役フリーアナウンサーの新保友映がBtoBとBtoCの違いや、それ以外のビジネスモデルの種類について解説します。

BtoBとBtoCの違いは? マーケティングに重要なビジネスモデルの種類
BtoBとBtoCの違いは? マーケティングに重要なビジネスモデルの種類

ここ数年、「BtoB企業」「BtoC企業」といったことばをよく耳にするようになりました。これらは、企業がマーケティング施策を考える際に欠かせないビジネスモデルですが、「実は違いがよく分からない」と感じている人も多いようです。そこで本記事では、現役フリーアナウンサーの新保友映が、BtoBとBtoCそれぞれの意味や違い、それら以外のビジネスモデルについて分かりやすく解説します。

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<目次>
BtoB(Business to Business)の意味
BtoC(Business to Consumer)の意味
BtoBとBtoCの違い
BtoBとBtoCの仕事事例
BtoBとBtoC以外のビジネスモデル
まとめ

BtoB(Business to Business)の意味

「BtoB」とは、Business to Businessの略語で、日本語では「企業間取引」と言われています。ここで言う「Business」は企業のことを指し、「BtoB」は企業が他の企業に対して商品やサービスを提供することを意味しています。つまり、この場合の企業の顧客は企業であり、マーケティングにおいても、主に企業に向けた営業が行われるということになります。IT企業が開発したシステムを他社に提供したり、電機メーカーが製造企業に部品を販売したりする取引と考えるとイメージしやすいでしょう。特に製造業の場合、自社で作った製品を一般消費者に直接販売することは少なく、ほとんどがBtoBに該当します。

BtoC(Business to Consumer)の意味

BtoCは「Business to Consumer」の略語で、企業が一般消費者に直接商品やサービスを提供することを指しています。流れはBtoBよりも簡単で、例えば私たちが普段スーパーやコンビニ、書店などで商品を購入するスタイルがBtoCに該当します。また、旅行や電話契約など、個人として利用するサービスもBtoCに含まれます。私たちが直接購入・契約することができるあらゆる商品やサービスがBtoCだと覚えておくといいでしょう。

BtoBとBtoCの違い

BtoBとBtoCの意味について、ご理解いただけたと思います。こちらでは、以下の3つのポイントについて、BtoBとBtoCの違いについて解説します。

マーケティングの手法

前提として、BtoBとBtoCではビジネスの対象が異なります。企業が相手となるBtoBでは、一般的なマーケティングのように広告や営業活動で、直接商品やサービスを売り込むということはほとんどないのが特徴です。例えば、A社が問題や課題を抱えているとしましょう。自社のマーケティングとしては、A社が解決方法を模索する中で自社の商品やサービスを認知し、A社からコンタクトを取ってきてはじめて社内で案件化・商談化できるという流れとなるため、購入までに2〜3年かかるというケースも珍しくありません。受注後も定期的にコミュニケーションを図り、いかに信頼関係を築くかということが顧客維持につながります。

一方、BtoCがターゲットとするのは不特定多数の人であり、購入や契約に至るプロセスもBtoBに比べるとシンプルです。消費者が欲しいと感じる商品やサービスを認知した際、実際に購入に至るまでの期間は即時〜数日と短期間で、企業が時間をかけて信頼関係を築く必要もありません。そのため、BtoCにおけるマーケティングでは、いかに多くの一般消費者に自社の商品やサービスを認知してもらうかが最も重要となります。具体的な方法としては、Web広告やSNSを駆使して店舗やサイトに集客を行う「マスマーケティング」や、オフラインでのプロモーション活動などが有効です。

購入の判断基準

BtoBとBtoCでは、買い手が商品やサービスを選ぶ判断基準も異なります。企業同士のやりとりとなるBtoBでは、その商品やサービスが「業績や利益にどれくらい貢献するか」「長期にわたり自社にいい影響を及ぼすものであるか」といった点が重要とされます。購入あるいは契約した商品・サービスが自社の売上に直結されるのが理想であるため、購入側は自社にとって最適な商品や購入時期を時間をかけて見極め、合理的に判断するのが特徴です。

一方、BtoCで扱われる商品やサービスはBtoBに比べると単価が低い傾向にあり、一般消費者が「欲しい」「いいな」と感じてそのまま購入するという流れが一般的です。長期的な効果よりも、その時の感情や感覚などが優先される傾向にあるため、街頭でのキャンペーンや店頭でのサンプル配布が購買意欲に直結することも多いという特徴があります。

扱う商材と単価

ビジネスの対象が異なるBtoBとBtoCでは、取り扱う商材にも違いが出ます。BtoBで扱う商材は、大きく分けて「有形商材」と「無形商材」2つのタイプがあります。前者が自動車用部品やIT業務機器といった商材で、後者が企業の事業戦略サポートやIT支援といったコンサルティングサービスなどです。製品に加工される前の資源や原料が、そのまま商材として取引されるケースも多くあり、全体的に単価は高くなります。販売側としては、いったん交渉が成立すれば長期的に受注が得られることになるため、時間をかけて何度も商材の魅力を伝え、信頼関係を築くことが大切です。

BtoCで扱う商材は、一般消費者が購入後すぐに活用できる完成された製品やサービスです。お菓子や衣類、化粧品から保険まで商材のジャンルは幅広いですが、いずれも単価が低いのが特徴です。中には自動車や住宅といった高額な商材も存在しますが、それでもBtoB商材に比べると単価は低く、継続的に発注するということはまずありません。そのため、BtoCではいかに消費者の認知度を高め、多くの商材を販売するかということが重要となります。

BtoBとBtoCの仕事事例

BtoBとBtoCそれぞれの違いについて解説しました。次に、実際にBtoB・BtoCとして成功している企業の例についてご紹介します。

BtoB

BtoBの代表的な企業といえば、制御機器やFAシステム事業、健康医療機器を提供する「オムロン」や国内電子部品業界におけるリーディングカンパニーである「キーエンス」などが有名ですが、中でも広く知られているのが「Intel」です。アメリカの大手半導体メーカーで、パソコンの頭脳ともいえる部品「CPU」を長年にわたり提供しています。当然のことながら、CPUがなければパソコンが作動しないため、多くのパソコンメーカーがIntelに頼っている状況となり、業界内では1人勝ちと言っても過言ではありません。

BtoC

従来、BtoCといえば国内におけるファストファッションの先駆者である「ユニクロ」や、日本最大手の自動車メーカー「トヨタ自動車」が知られていました。しかし、近年インターネットが普及したことで「Amazon」や「楽天市場」といったEC事業がBtoCを代表する存在となっています。中でもAmazonは、商品の販売だけでなくサブスクリプションサービス「Amazonプライム」を提供しており、契約者はネット販売の「お急ぎ便」や、映画や音楽といったエンターテインメントを追加料金なしで利用することが可能です。他にも顧客満足度の向上につながる工夫が凝らされており、数多くのECサイトや動画配信サービスがある中、常にトップをキープしているのにも納得です。

BtoBとBtoC以外のビジネスモデル

今回ご紹介したBtoBとBtoCのほかにも、複数のビジネスモデルがあります。ビジネスシーンで用いられることも多いため、それぞれの違いをよく理解しておくことが大切です。

BtoE(Business to Employee)

Business to Employeeの頭文字を取った「BtoE」は、企業が「Employee」つまり「従業員」に対して商品やサービスを提供するビジネスモデルを指します。従業員は企業に雇われている立場ではありますが、仕事場から出てしまえば一般消費者です。この「従業員でありながら1人の消費者」という点に着目し、その人たちの生活の支えとなる商品やサービスを提供しようという思いから生まれたのがBtoEの考え方です。具体的には、社員食堂の設置やランチ宅配サービスなどがそれに該当しており、ビジネスというよりは福利厚生の1つと捉えられているケースが多いでしょう。また、社員割引で商品を一般よりも安く購入できるといったサービスもBtoEの1つです。

BtoG(Business to Government)

BtoGはBusiness to Governmentの略で、「Government」は日本語で「行政」と訳されます。企業の取引相手が「国(行政)」となるビジネスモデルで、官公庁や地方自治体が求める商品やサービスを提供します。事業としては、道路や鉄道の整備、庁舎の建設といったいわゆる公共工事を行ったり、五輪や万国博覧会といった公的プロジェクトについて提案を行ったりするのが一般的です。国の募集に対して企業が入札する流れとなることから「GtoB」と言われることもありますが、いずれにしても選ばれれば企業のブランディングに大きく貢献することから、時間と手間をかけてでもBtoGビジネスを狙う企業は多くあります。

CtoC(Consumer to Consumer)

「Consumer」つまり消費者同士がやりとりをするビジネスモデルをCtoCと呼びます。従来は「企業が売り手、消費者が買い手」というスタイルが一般的でしたが、近年はインターネットを利用して消費者同士が商品やサービスを売買するケースが飛躍的に増えています。最も分かりやすいのが、フリマアプリ「メルカリ」やYahoo!が提供する「Yahoo!オークション」などです。これらを利用することで、これまでは買い手という立場だった消費者が、仲介業者を通さず直接商品やサービスを販売できるようになりました。CtoCのプラットフォームを提供する企業側は、利用者から手数料を得ることで利益を出す仕組みです。

GtoC(Government to Citizen/Consumer)

Government to Citizen(Consumer)の頭文字からなるGtoCは、国(行政)が一般市民(一般消費者)を相手に商品やサービスを提供するビジネスモデルです。行政と国民が直接やりとりをするわけではなく、国が国民に向けたサービスやシステムを提供する形を指してGtoCと呼びます。例えば、住民票やマイナンバーカードなどの電子申請、あるいはe-Taxによる確定申告、公的機関の電子予約といったものが該当します。

DtoC(Direct to Consumer)

DtoCはDirect to Consumerの略で、消費者に「Direct」つまり直接商品やサービスを販売するビジネスモデルです。通常、メーカーが製品やサービスを生み出し、それを仕入れた商社や販売店が一般消費者に提供する流れが一般的です。しかし、近年はインターネットやSNSの普及により、それぞれのメーカーが直接消費者に宣伝し、購入を促すことが可能となりました。この方法であれば、従来必要経費とされていた仲介手数料やテナント料などが不要となり、企業としては大幅にコストカットが実現できます。その分、販売価格を下げれば集客効果や販売促進効果なども期待できることから、今後も自社のECサイトやSNSを展開する企業が増えてくるでしょう。

まとめ

今回は「BtoB」「BtoC」それぞれの意味や違い、それ以外のビジネスモデルについて解説しました。BtoBは日本語で「企業間取引」と呼ばれ、その名前のとおり企業同士が取引することを指します。製造業の場合、自社で製造した製品を一般消費者に直接販売するというケースは少なく、ほとんどがBtoBに該当します。一方、BtoCは企業と一般消費者のやりとりのことです。私たちが日常的に買い物をしたり、旅行や携帯電話といったサービスを契約したりする行動がBtoCにあたると考えておくと分かりやすいでしょう。

BtoBとBtoCの大きな違いは、マーケティング手法、購入する際の判断基準、取り扱う商材と単価にあります。対象が企業であるBtoBは単価が高くなるため、購入者側は自社の利益や費用対効果などを合理的に判断するのに時間を要します。しかしBtoCは単価が低く、消費者が欲しいと感じれば購買行動につながるケースが多いため、とにかく商品やサービスを認知してもらうことが重要です。こうした特徴を加味した上で、適切なマーケティング手法を採用することが、事業を成功させるコツといえるでしょう。ほかにも、BtoEやCtoCといったさまざまなビジネスモデルがあります。ビジネスシーンで困らないよう、それぞれの違いを理解しておくと安心です。

■執筆者プロフィール
新保友映
新保 友映(しんぼ ともえ)
山口県岩国市出身。青山学院大学卒業後、2003年にアナウンサーとしてニッポン放送に入社。『オールナイトニッポンGOLD』のパーソナリティをはじめ、『ニッポン放送ショウアップナイター』やニュース情報番組、音楽番組など担当。2018年ニッポン放送退社後はフリーアナウンサーとして、ラジオにとどまらず、各種司会、トークショーMC、YouTube、Podcast、話し方講師など幅広く活動。科学でいじめのない世界をつくる「BE A HEROプロジェクト」特任研究員として、子どもたちの授業や大人向け講座の講師も担当している。
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