今回は「お茶づけ海苔」に入れるのはお茶かお湯か、京都人の「お茶漬けでも」の真意など、違いの分かる人になれるお茶漬けの豆知識をご紹介します!
煎茶の創始者の子孫が「お茶づけ海苔」を考案した
お茶漬けのルーツは、平安時代の文献にも登場する「水飯」や「湯漬け」など、水やお湯をご飯にかけたもの。室町時代の後期以降、お茶をかける習慣も庶民に広がっていきましたが、当時のお茶は茶葉を湯で煮出す「煎じ茶」で、色が赤黒く味も香りも薄いものでした。
江戸時代中期、製茶業を営んでいた永谷宗七郎(後の永谷宗円)が、15年もの歳月をかけて現在のような緑色で味のよい「青製煎茶製法」を発明して全国に広まりました。
1952年、10代目の子孫である永谷嘉男さんが「小料理屋の〆で食べるお茶づけが家でも簡単に食べられたらいいのに」と考えて開発・販売したのが、永谷園の「お茶づけ海苔」です。
5月17日がお茶漬けの日なのは、永谷宗七郎の命日にちなんで制定されました。
「お茶づけ海苔」に入れるべきはお茶?お湯?
そんな煎茶の創始者の子孫が生み出した永谷園の「お茶づけ海苔」でお茶漬けを作ろうとしたら、当然入れるのはお茶……ではないんです!実は「お茶づけ海苔」には抹茶がそもそも入っているので、さらにお茶を入れると濃くなってしまいます。
もちろん作る人の好みですが、永谷園の公式サイトでは「熱いお湯をお使いいただくと抹茶本来の風味がほどよく引き立ちます。ぜひお湯をかけてご賞味ください」と紹介されています。
京都人の“お茶漬けでも”は「早く帰れ」ではない
平安時代から京都は全国各地の人が集まる大都会で、話し相手の素性や身分が分からない街だったため、京都人は相手に失礼がないように婉曲表現を多用するようになりました。そんな京都人を象徴する話として、来客に言う「お茶漬けでも(どうですか?)」は本当にお茶漬けを勧めているわけではない、というのは有名ですよね。
この話が広まったのは上方落語の『京の茶漬け』がきっかけ。京都人が帰り際に勧めてくる「お茶漬け」を一度食べてみたいと考えた大阪人が四苦八苦する話です。
実はこの「お茶漬けでも」は、長居する相手に対する「早く帰れ」というサインではありません。
これは帰ろうとしている相手に対して言う、名残惜しさを表現した一種の社交辞令。一度引き止めることで相手を気持ちよく送り出すためのもので、迷惑だから帰ってくれという意味ではありません。
とはいえ「本当にお茶漬けを勧めているわけではない」というのはその通りなので、真に受けて居座らないように気をつけましょう。
この記事の筆者:石川 カズキ
1984年沖縄県生まれ。筑波大学人間学類卒業後、会社員を経て芸人・作家・コピーライターに。エレキコミック・ラーメンズを輩出した芸能事務所トゥインクル・コーポレーション所属。第60回宣伝会議賞コピーゴールド受賞、LOFT公式YouTubeチャンネル『コントするイシカワくん』シリーズのコント台本・出演、KNBラジオCMコンテスト2020・2023協賛社賞受賞など。お仕事あればお気軽にご連絡ください。AIから仕事を奪うのが目標です。