勝ち組を目指すなら、大学よりも中高人脈?
首都圏入試センターによると、2023年の私立・国立中学受験者数は5万2600人で過去最多となった。2024年は微減して5万2400人だが、受験率は18.12%で過去最高。首都圏小学生のおよそ4.7人に1人が中学受験をしていることになるという。
この背景には、「勝ち組になるには大学よりも中高人脈が大事」という考え方が注目を集めていることもある。例えば、日本の政財界の中では今、どこそこの名門大学OBということよりも、開成、灘、筑駒、麻布、武蔵、さらには女子御三家(桜蔭、雙葉、女子学院)を含めた「難関中高人脈」がものを言う、という説がまことしやかにささやかれている。
東大、京大、早大などは、石を投げれば当たるほど毎年無数の卒業生がいるし、学部も違えば全く関係もない。しかし、中高一貫校は人数も限られた小さな世界なので、学年が異なる人々でも話が合うし、比較的すぐに共通の知人が見つかる。そのため、こちらの「難関中高人脈」が日本の政治や経済を動かしている、と分析する専門家もいるほどだ。そういう現実を踏まえれば、勝ち組になるべく御三家を目指すという戦略は「アリ」だろう。
学歴エリートが陥りがちな落とし穴
ただ、物事はなんでもいいところもあれば悪いところもある。中学受験でわが子を難関校に入れたいという親は、「学歴エリート」になることによって陥る「落とし穴」もある、ということをよく理解しておくべきだろう。その1つが、「危機に弱い」ということだ。
筆者は危機管理を仕事にしている関係で、いろいろな組織で「危機対応を失敗するトップ」を目にしてきたが、そういう人たちの中にかなりの高確率で、学歴エリートがいた。
例えば、御三家から東大というエリートコースを歩んできた、ある企業トップは、メディアで会社の不正を告発した元社員を訴えるといって聞かなかった。全く事実無根という内容ではないので、裁判をしても悪目立ちをしてスキャンダル報道が増えるだけだし、告発者を力で握りつぶすようなネガイメージがつくので得策ではないと私も含めて周囲が進言したが、本人は譲らなかった。結果、この対応は批判を呼び、最終的にこの社長は辞任に追い込まれた。
これはマスコミが大きく報じるような企業不祥事でもよくある話だ。大企業にお勤めの人は分かるだろうが、社長や役員などの経営層は、難関中高を経て東大や慶大を出ているようなエリートが多い傾向だ。そのエリートの危機対応は往々にして炎上する。ワイドショーで、「世間をナメてますよね」「反省しているとは思えない」なんて叩かれている不祥事企業の背後には、学歴エリートがいるのだ。