謙虚さを失う学歴エリートたち
では、なぜ学歴エリートはいざという時に判断を誤ってしまうのか。実際に危機管理の現場にいる者からすれば、これはよく言われる「挫折を知らないので逆境に弱い」という話ではなく、むしろその逆だ。学歴エリートの多くは、自分の力でさまざまな困難や挫折を乗り越えて人生を切り拓いてきた、という揺るがない自負がある。それは平時のビジネスシーンでは大きな武器になるが、危機発生時は逆に弱点となってしまう。
「危機管理」という言葉のイメージが先行して、多くの人が勘違いをしているが、実は「危機」というのはコントロールできない。組織外に被害者がいたり、メディアが好き勝手に報道をしたり、警察や監督官庁が介入してきたり、政治家が首を突っ込んできたりする。
そういう自然災害にも似た制御不能なものに人間が立ち向かっていくには「謙虚さ」が絶対に必要だ。しかし、多くの学歴エリートはそれを大人になっていく過程で失っていることが多い。だから、危機管理に失敗するというワケだ。
話を聞くエリートが世間からズレていくわけ
もちろん、学歴エリートにもいろんな人がいるので全てがそうだなどと言うつもりはない。周囲の話に耳を傾けるリーダーもいるだろう。ただ、そういう謙虚な人も「危機」に弱くなりがち、というのも学歴エリートの落とし穴なのだ。なぜかというと、この手の「人の話をよく聞く学歴エリート」は社会、一般消費者、顧客からの苦言に耳を傾けるわけではない。自分の周囲にいる「自分より頭のいいエリート」の言うことしか聞かない。だから「世間ズレ」した危機管理になって炎上するのだ。