努力型エリートゆえのコンプレックスと、その弊害
では、なぜこうなるのかというと、学歴エリートゆえの強烈なコンプレックスのせいだ。御三家のような難関校には、全国からエリートどころか「天才」が集うので、早い段階に「自分は天才だと思っていたが実は凡人だった」と挫折する「努力型の学歴エリート」が少なくない。謙虚になるのだからいいじゃないかと思うだろうが、中にはそれが心の傷となって、「天才」や「スーパーエリート」に対して強烈なコンプレックスを抱く人もいて、大人になっても彼らに逆らえなくなってしまう。
これは元ヤンキーや暴走族だったおじさんたちが、いい歳をこいてもいまだに昔の人間関係で生きて、恐い先輩に頭が上がらず、パシリのように使われる構図と同じだ。
そんなコンプレックスを抱えた「努力型エリート」がリーダーになると危機管理は失敗する。周囲の天才やスーパーエリートの意見に振り回されて、「船頭多くして船山に上る」状態で組織がめちゃくちゃになってしまうのだ。
麹町中→開成高→早大の岸田首相も……
この分かりやすい例が、岸田文雄首相だ。麹町中から開成高というエリートコースを歩んだ岸田氏だが、東大には入ることができず、2浪して早大法学部。卒業後は日本長期信用銀行だ。われわれのような庶民からすれば十分エリートコースだが、「開成→東大法学部(現役)→財務官僚→ハーバード留学」みたいな天才やスーパーエリートがゴロゴロいる永田町や霞ヶ関ではやはり見劣りしてしまう。だから、岸田首相はエリート集団である霞ヶ関官僚に従順だ。彼らの話に耳を傾けて、彼らが勧める政策を忠実に実行している。安倍元首相や菅元首相のように官僚がリークした政権スキャンダルがほとんどないのがその証だ。
これは裏を返せば、エリートではないわれわれ一般国民からの評価などどうでもいいということでもある。これだけ支持率が下がっても岸田首相がケロっとできるのは、この人が「自分もエリートの一員になる」ということを人生の目標にしてきたからなのだ。
なにがなんでもわが子を難関中に入れさせたい親御さんは、このような大人になってからのリスクも考慮して「お受験」に励んでいただきたい。
この記事の筆者:窪田 順生
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経てノンフィクションライター。また、報道対策アドバイザーとしても、これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行っている。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経てノンフィクションライター。また、報道対策アドバイザーとしても、これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行っている。